(習作)終末の痕跡   作:雑兵(仮)

6 / 7
三か月も音沙汰なかったですがすいません。
もう待ってる人がいるのかすらわからないですが、お久しぶりです。


6話 その名を知らぬ

見渡す限り広がる青い空が広がっている。

快晴ではないが、雲が太陽光を邪魔するほど広がっているわけではない。

こういう空を飛んだら気持ちいいんだろうな、と思ってしまったのはそろそろこいつに乗るのにも慣れてきたということなのだろうか。

 

地球と同じような空。

似ているが違う空。

当然だろう、ここは地球ではないのだから。

色はそれほど変わらないだろう、だが違う。

俺はどうすればいいのだろうか。

 

そんなことを考えながら、モニター越しに見る景色を変えた。

地球で見たことのある落葉樹とよく似た木々ばかりが目に映る。

今、俺達はガーゴを取り囲む城壁から少し離れ、林の中でストームソーダーとともに待機している。

コトナさんからの連絡を待っているのだ。

 

「暇だ」

 

暇を潰せそうな雑誌は粗方読んでいまい、鞄の中身は当然ながら教科書とノートばかりで暇つぶしに使えそうな物はない。

研究所から持ち出した持ち物はガーゴに置いたままなうえに、シャマーラの持ち物なので当然使えない。

やることがないが外にいるよりも落ち着くのでストームソーダーのコクピットに引き籠っているが、暇であることには変わらない。

 

ストームソーダーの口を開けて外を窺う。

真横に並んだもう一機のストームソーダーが行儀よく主人の搭乗を待っている。

シャマーラは見えるところにはいないが、持ち出した物品の修理でもしているのだろう。

さっきまで見ていてわかったが、彼女はそれなりに機械に強い人間の様である。

後で俺のケイタイも直せるかどうか聞いてみるか。それにストームソーダーの武装の整備とかを考えると俺も多少師事しといたほうがいいのかもしれない。

まあ、今は没頭しているようなので声をかけるのもあれだろう。

 

もう一度相方のストームソーダーを見て思う。

 

「なあ、なんで俺を選んだんだ?」

 

何となく口に出していた。

シャマーラはストームソーダーが俺を選んだと言った。

二機を自分のだと主張して退かない彼女がそんなことを言うのだからそうなのだろう。

それが偶然コクピットに居たからなのか、それとも違う理由なのかは今の俺にはわからない。

唯、何故かストームソーダーのモニター越しに空を見ると随分前からこの空を飛んでいたようなそんな錯覚に陥ることがたまにある。

 

ストームソーダーは何も語らない。

実際、どこまでこちらへの理解があるのかわからないし、別に返答を求めた訳じゃないが、ストームソーダーは聞いてくれているような気がするから訊いた。

おそらく、聞いているのだろうと思う。

 

シャマーラは何となくわかるって言っていた。

俺にはわかるような、わからんような。

正直、経験的なものだとするとゾイドに触れて二週間ほどの俺ではまだ彼女には敵わないな。

 

「タカナリ、クルックーが来たからそろそろ出ましょう」

 

そうやって、一方的な雑談という独り言で時間を潰そうとしているところに段々と近づいてくる足音と聞き覚えのある声が聞こえた。

 

さすがに盗賊退治なんて慣れたもので、落ち着かなかったわりに緊張しているように見えない。

寧ろ、俺より余裕があるかもしれない。

 

そんなシャマーラが羨ましい。

そう思った俺も、ストームソーダーのエンジン音が大きくなったときには何の不安も抱いてはいなかった。

 

 

 

 

今回の仕事はガーゴから隣町にかけての交易路に出没する盗賊の討伐だ。

といっても数日前に賊を潰しにまわっていた……ことになっている俺達がガーゴにいた為、動きを控えていたようなのだ。

それだけなら、賊退治なんてすることなど俺達が態々やることではないのだが、それでは困る者達がいた。

ガーゴの領主とそのガーゴの自警団だ。

 

どうやら本来の予定では囮の商団を使って盗賊を誘き寄せ叩く算段だったらしいのだが、俺達がやってきた所為でうまくいかなくなってしまったらしい。

そこで、いっそのこと本当にその“噂のゾイド乗り”を雇って、交易路を巡回させようということになった。

 

コトナさんが俺達に話しかけてきたのも元々はそっちの要件だったらしい。

そんなこんなでコトナさんに仕事の承諾をした後すぐに俺達は領主の館に案内されて領主から直接依頼を受けることになったのだ。

 

結局、俺達が巡回していた間に賊が現れることはなかったが、その間にガーゴの自警団と本来の予定のために雇われていた“凄腕のゾイド乗り”で捜査が行われ、尚更行動が狭められていったのだろう。

彼らに狩りをしている余裕はない。

だが、彼らも稼ぎがなければ食うものに困ってしまう。

無頼の徒である彼らは居づらい場所に態々居座る必要もない。

 

その結果が視界に映る荒野を行く数体のゾイドの群れだ。

 

「ガイスティング四体、ギラフソーダが四体、コマンドウルフとステルスバイパーが一体ずつ」

「今日出ていくことにしたのか。いっそ足を洗えばよかっただろうに」

「一度甘い蜜を吸っちゃうと元には戻れないってやつなんでしょう。さて……コトナはまだのようだけどあれで間違いないみたいだから私達からやらせてもらいましょうか。タカナリ、援護は任せた!」

「はいはい、了解」

 

さて、給料分の仕事はしようか。

 

賊がこちらを迎え撃とうと動き出したときには、シャマーラのストームソーダーは羽を折り畳んで急降下し敵の懐に入り込んでいた。

そして群れの間を一直線に突っ切る。

忽ち、ストームソーダーが巻き起こした爆風に呑まれて数体のゾイドが吹き飛ぶ。

これで行動不能になったゾイドもいるだろう。

そもそもゾイドが無事でも乗っている人が無事かどうかわからない。

経験上、この爆風で重い怪我を負った人を見たことがないのでこの惑星の人間に限って言えば、死んではいないと思うが……。

 

シャマーラ曰く、これがストームソーダーらしい対地攻撃だ、そうだ。

態々、降りてやる必要もないだろうに、と思う。

彼女の言うことも分からなくもないが、相手より高いところに陣取るのが戦いの基本なんじゃないだろうか。

それにこんなに広い空なのだ。

どう考えても空の方が動きやすい。

 

「――そこっ!」

 

相手はかく乱している方のストームソーダーに文字どうり足を取られている。

 

そして俺は横転しないように地面に踏ん張りを利かせている奴らに長距離キャノンとビームキャノンを撃ちこんでいく。

 

全弾命中、なんてことはまずないが動き回っているよりは当てやすい。

 

着々と数を減らしていく。

シャマーラが引っ掻き回して、俺が混乱している相手に上空から砲撃を降らせる。

俺の技量不足から自然とこの戦法に落ち着いた。

 

風の刃が吹き荒れ、地表に降り注ぐ砲弾とビームの雨。

さながら唐突に現れた嵐。

これはこれで“らしい”戦い方なのではないか。

 

「ちょっと、もう始めちゃったの?」

 

遅れてレインボージャークがやってきた。

……と言っても俺達がこの空域に来て数分も経ってないので遅いわけではない。

 

「ああ“凄腕のゾイド乗り”さん、先に始めちゃったけど拙かったかな」

「まあ、それはそれで構わないけど……」

 

そう答えたコトナさんはどこか釈然としていないようである。

地上にいたゾイドの殆どがすでに戦闘不能状態なのだから、彼女からすれば無駄足に違いない。

 

ストームソーダーが鳴く。

ん?

 

「うおっ!」

 

地上から何か光ったものが見えた。

とっさにウェポンバインダーに搭載されたEシールドを展開して防ぐ。

 

主戦場から少し外れた砂地からコブラに似たゾイドが顔を覗かせている。

見た目からするとステルスバイパーというやつだろうか。

 

なんとも不甲斐無い。

ストームソーダーが気付かなければ危なかった。

だが、ビームの連続的な攻撃によってEシールドを展開し続けないといけないのでこのままだと非常に動きづらい。

 

ストームソーダーの火器の殆どはウェポンバインダーに固定されているものなのでEシールド展開中は殆どの火器が使い難くづらくなってしまう。

とっさにEシールドを展開した所為でビームをシールド真正面から受け止める形になってしまっているのも痛い。

 

「まだ、終わってないみたいね」

 

俺が油断していたことを気にしているからだろうか。

その口調はどこかうれしそうに聞こえる。

締めは貰うわ、そう言ってコトナさんは今俺に攻撃を仕掛けている、おそらく最後であろう盗賊のゾイドにレインボージャークは急降下する。

 

こちらの降下はストームソーダーのものと違ってより猛禽類のそれに近い機動だ。

降下すると同時にレインボージャークはそのままステルスバイパーの首あたりをその白い羽で切り裂いた。

ストームソーダーと戦闘スタイルが同じようだ。

違うのはストームソーダーが一応ビーム粒子を刀身に纏わせて斬っているのに対して、レインボージャークの羽は直に斬っている。

 

よくもまあ、あの羽で綺麗に斬る。

マグネッサーシステムによって空力が重視されづらいゾイドにおいて羽の形状を兎角言ってもしょうがないのかもしれないが、見た目斬ることには向いて無さそうな羽だと思っていた。

それがどうだ。

ステルスバイパーの首を刎ねたときのそれは、鳥肌がたつ程に鮮やかだった。

急降下もそうだが、今回の賊退治をコトナさんだけで片づける予定だったというのも納得できる。

 

「あぁ、やっぱりメタルZiはいいわ。惚れ惚れする」

 

シャマーラが空に上がってきた。

 

「お疲れさん、それでメタルZiって?」

「メタルZiっていうのはね。惑星Ziで見つかっている物質でもっとも硬いリーオ鉱石で作った物質のことよ」

 

今はどうかわからないけど、と付け加えた。

 

シャマーラの言う“硬い”がどういう意味なのかは知らないが、確かにいい切れ味だ。

簡単に金属の首を刎ねることもできるようなシロモノだと考えると寧ろおっかない気がしてくる。

 

「でもそういう素材ってかなり希少なものなんだろ、よくそんな……あれ?」

 

話ながらも先の失敗から、賊がいないか辺りを見回していたからだろうか。

数キロ先の森に何か蠢くものを見たような気がした。

 

「どうしたの?」

「向こうの森に何か見えたような気がする」

「そう?私にはよくわからないけど……」

 

下に目を向ける。

地面に転がっているゾイドの数は十体、聞いていた数と同じだ。

そうするとやはり気の所為なのだろうか。

今は何も見えないがさっきの失敗を考えるとちゃんと確認しておいた方がいいだろう。

 

「確認してくる。そっちは先にコトナさんと周囲の警戒しながら賊でも縛っていてくれ。必要によっては連絡する」

 

一機だけで向かうのはさすがに不用心かもしれないが、まだ賊が潜んでいる可能性が絶対にないと言い切れない以上、賊への対応は彼女らに任せた方がいいんだろう。

二人ともこういう事に慣れている様ではあるし、そろそろガーゴの自警団が来てもおかしくない。

危険よ、と言うシャマーラを適当に言い含め、不審な影を確認しに大きく旋回した。

 

 

 

 

そこにいたのはなんとも奇怪な姿をしたゾイドだった。

形状は博物館で観た肉食恐竜の骨格化石に近いが、その骨格を模したメタリックなそれの不気味さは先程まで見ていた賊のゾイド達とは似ても似つかない。

いや、本当にゾイドなのだろうか。

ゾイドという存在をつい先日知ったような俺が疑問に思うことではないのかもしれないが、ゾイドの様で何か違うモノであるように感じる。

 

そのよく分からない何かが此方に顔を向ける。

赤い眼球と目が合う。

 

“お前は何者だ”

 

その目が問う。

だが、それはこちらも同じ。

タービン音だけが聞こえる空間で睨み合う。

そうだ、これは睨み合いだ。

動物が自分の縄張りに入ってきたモノに対してやるそれだ。

お互いが自分達の存在を脅かすモノではないかと危惧している。

 

「何も――っ」

 

何者か問おうとする前に、奴の口から火の玉のようなものを飛ばしてきた。

さすがに絶対に攻撃してこないだろうなんて思っていたわけじゃない。

羽を折り旋回して回避。

回避しながらも相手を視線から外さない。足止め程度のつもりで機銃をばら撒く。

当たったかどうかはわからない。銀色のゾイドは機銃の雨を無視しながら火の玉をばら撒いた後、森の中に飛び込んで身を隠した。

シャマーラとかコトナさんなら回避した直後に仕留めに行くことも出来たかもしれないが、さすがに今の俺では回避しながら敵を仕留めるなんて芸当できるとは思ってない。

 

次の攻撃を警戒して一旦離れる。

木々に覆われて中がどうなっているのか見えにくい森の近くを滞空しているのは怖い。

上昇した後、森を見回す。

銀色のゾイドより樹高がある所為か、火の玉が当たった数か所で火災が発生している以外、攻撃どころか不審な動きは何処にも見当たらない。

 

「見失ったか……」

 

再上昇して今度は森全体を見回す。

見つけた。

数キロ先に銀色が見えた。

 

追いかけるか。

いや、追いかけることは簡単だが、その間にシャマーラ達の方で何かあっても拙い。

そもそも盗賊ではないのだろう思う。

なんだか盗賊のゾイドだとするには違和感を憶える。

とりあえず、一度戻るべきだろう。

 

だが、その前に――

そしてさっきより勢いを増した火災現場を見た。

 

「火も消さないといけないだろうしな」

 

一先ず、樹木を帯状に伐採して防火帯を造っといたほうが良いだろう。バイトのおっさんも一応顔見知りなわけで、放置して文句言われたくはない。

きっとまた、色々と拘りのあるシャマーラは怒るかもしれないが、今回は俺の所為ではないから俺が悪いわけではないのだ。

 

正直、周りを警戒しながら防火帯を造るのだと思うと、やる前から酷く疲れる気がした。

 

 

 

 

危なかった部分もあったが、どうにか賊退治は終わった。

森に消えた銀色のゾイドは結局姿を現さなかった。

現在、俺達は盗賊を護送中の自警団の護衛を兼ねながらガーゴに帰る途中である。

 

「銀色の骨格みたいなゾイドねえ」

「やっぱりディガルドのゾイドじゃないかしら」

 

コトナさんが言うには俺が目撃したゾイドはディガルド武国のもので、なんでも、メタルZi――彼女はリーオと呼んでいた――で出来た武器でないと傷つけられないらしい。成程、機銃掃射くらいじゃびくともしないわけか。

 

ディガルド、少し前に噂で聞いた名前だ。

近頃、近隣諸国を侵略し領土拡大が著しい国家。

噂で聞いた程度だと、つい数週間前に占領された街は山二つ向こうだった筈だが、ガーゴから遠いというほどではない。

こんなところで出くわすということは、やはり――

 

「……ガーゴ攻略に向けた偵察ってことか」

「恐らくそうでしょうね。一応目撃したことはガーゴ領主にも伝えておきましょ」

 

此処で戦争が始まる。

いまいち実感が湧かない。

別に戦争の可能性なんぞ何処にでもあるものだが、理解しているだけだ。

実感なんてあるはずもない。

 

「どうする?出ていくなら早くした方がいいと思うけど……」

 

シャマーラが訊いてきた。言っていることは正しい。

やって来るのは軍隊だ。そこいらにいるならずものじゃない。絶対に死人が出る。

 

――今までだって死人が出る可能性は盗賊相手でもあった筈だ。

 

出るなら早い方がいいだろう。直前になってからではゴタゴタして身動きが取れなくなってしまうかもしれない。

 

だが――

 

「やっぱり、軍隊を相手にするのは拙いかな」

「拙いなんてものじゃないわ。……まさかタカナリ、ガーゴに残る気なの?」

「えっ、いや……そんなつもりはないよ。領主から報酬を受け取ったら出ていこう」

「何だか怪しいけど……」

「そうね、でも今回に限って言えばタカナリに決定権はないし」

 

二人して俺が今回のことを楽観視しているんじゃないかと疑っている様な気がするが……って、決定権ないのか、俺。

 

溜め息つきながら、女子二人が愚痴をこぼし合うのを聞いていた。

本当に仲がよろしいことで。

 

確かに楽観的になっているかもしれない。

本当は負ける気がしないなど言えるわけがなかった。

 

 

 

 

それは太陽に身を隠すように木々の間を駆けていた。

名をバイオラプターと言い、その中には出来の悪い人型が収まっている。

彼、いや彼らがこの地にいる理由は敵地の偵察ではない。

本来の目的は先程、接触した飛行ゾイドのデータ収集であり、今はそのゾイドの戦闘データをデータ収集のために分散していたほかのバイオラプターと合流後、ディガルド本国に持ち帰ることである。

 

帰還途中だったからだろうか。

作戦行動中の彼らに意思などないが、気でも緩んでいたとでもいうのか。

 

元々、生い茂る木々の所為で太陽もよく見えない。

上空に現れた影に気付いたときは遅い。

ラプターが上を向いたときにはすでに間に合わなかった。

 

機銃を物ともしなかった銀色の鎧はこの惑星でもっとも硬い弾丸によっていとも簡単に貫かれた。




時間開けすぎた所為で何だか色々忘れている様な……。

誤字とか感想とかは常時募集中です。

次回は二週間以内には出そう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。