東方日常日記   作:sameragi

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やったぜ、過去最長!
楽しんでいただければ、幸いです。


アイテムゲット!君の心もゲットだぜ!

「香霖堂……?」

 

それは、森の入口に、ひっそりと建っていた――

こんな所に、態々来る物好きはいるのだろうか?いや、幻想郷の住人の価値観は俺が思う一般的価値観ではないかもしれないので、一概にどうだ、とは言えないが。

俺がここに来た理由は一つ。寝床を調達する為だ。

野宿するのは最終手段。紫が来るのを信じて、人がいそうな場所で泊めてもらおうって魂胆だ。

 

「それはいいが、本当に中に人がいるのか?」

 

外から見える明かりは、点いているのか、いないのか。それすらも微妙なくらいしか漏れておらず、辺りの静けさが、何故か店を不気味に見せる。

中にいるのが、人ならざるもの……なんてオチは、求めてないぞ?

 

「と、とりあえず……」

 

俺は古風な扉に手を掛ける。

店だよね?勝手に入っても大丈夫だよね?

 

「すみませーん」

 

返事がない。ただの留守中のようだ。

 

「って、凄い散らかりようだな……」

 

本やら家具やら、なんでも揃っている。これ全て売り物だろうか?

用途の分からない奇妙な道具をぐるっと見回す。

 

「ん、これは……?」

 

俺は一つのものに目を止める。

 

「パソコン!?」

 

なんでそんなもんが幻想郷(ここ)に!?

 

「あれ?これは……同人誌にブルマ!?……ってこれは、せが○いじり!?」

 

同人誌とブルマも気になるが、何故せがれい○りが……プレ○テは!!……ないじゃないか!!どういうことだよ!

 

「まぁ有っても出来ないしな……それより、何故こんなものが有るんだ?」

 

呟いた瞬間、不意に背後から気配を感じた。

 

「――誰だ!」

 

「誰って……香霖堂の、店主だけど?」

 

「へ?」

 

変な声が出てしまった。

というか、店主?人の気配は感じなかったけど……

 

「ん?……アッー!!!」

 

俺の目の前にいたのは、眼鏡を掛けた銀か白のような髪色の若い男性――

 

「か、数少ない男性キャラ!」

 

「……?」

 

変なものを見る目で見られた。酷い。

だが、俺はそんなことは気にしなかった。何故ならそのキャラ、今俺の目の前にいるこの男性の名前を思い出すことに必死だったからだ。

 

「えっと、確か、こ、こーりん!……さん?」

 

「僕は森近霖之助だけど?」

 

「にょろ?」

 

また変な声が……っておい待てちょっと待て。今のは変な声ってレベルじゃなかったぞ。

 

「あ、あぁ……森近、さんでしたか。すいません知り合いと似ていたもので……」

 

嘘じゃない、嘘じゃないぞ。

画面の中で知り合ったんだよ。その時とちょっと雰囲気が違うけど。

 

「いや、別に構わないけど……お客さんかな?」

 

「あ、まぁ……客です」

 

「そうか。出てくるのが遅くてすまなかったね」

 

「い、いえいえ!」

 

ヤバイ、この人礼儀正しい!いや、店でお客とタメ口って時点で、外、いや元の世界では駄目だけど。

だが!こっちの人でこんなに礼儀正しい人に逢ったの初めてじゃないか?男性に逢ったのも。

 

「そ、それで……ちょっと聞きたいことがありまして……」

 

忘れていた。俺の目的はなんだ?答えは簡単、寝床の調達だ。

その為には……

 

「すみませんが、道に迷ってしまいまして……泊めてもらえませんかね?」

 

直球に相手に言う。これ大事。これ真理。

 

「あぁ、ごめん。そういうことは……」

 

おやなにかが建築されようとしているぞ?なんだろう、これは……

 

 

断られるフ・ラ・グ!

 

 

「くっ、ハァッ、ハッ……」

 

「ど、どうしたんだい?」

 

「す、すみません……さっき森で吸った瘴気が体に侵蝕し始めた、ようです……」

 

いきなり過ぎる展開だ。せめて伏線くらい用意しておけよ。

 

「え……本当かい?」

 

ヤバイ、信じていない!

クッ、このままではいかん。使いたくはなかったが、最終手段だ!

 

「『普通』一瞬で疲れが取れるなんて有り得ない」

 

「え?今なんて」

 

森近さんの言葉を聞き終えぬまま、俺はゆっくりと曲線を描くように倒れていく。

 

「え、だ、大丈夫――」

 

フッ、と。蝋燭の火が消えるように、簡単に――

 

俺の意識が途絶えた。

 

 

 

 *

 

 

 

「――ん、んぅん」

 

目を開ける。体がだるい。

そこは見慣れない場所だった。

 

「ハッ」

 

そ、そうだ。こんな時は。

 

「知らない天「目が覚めた?」なんで皆、妨害するのっ!?」

 

ランジェは非情である。どうしても俺にこの台詞を言わせない気だな。

どこからか、「私のせいじゃありません!」なんて怪電波を受信した気がしたが――無視した。

 

「いきなり、倒れたから驚いたよ」

 

安堵したような表情でそこにいたのは、香霖堂店主、森近霖之助さんである。

どうも、さっきぶりです。

 

「いえ、申し訳ありません。疲れが溜まっていたようです……」

 

先程のことの解説をしよう。

俺は今まで能力で疲れを失くして来た。

だが、さっきの台詞により、能力で能力の否定――つまり、上書き保存をしたのだ。

その結果、今まで排除してきた疲れが、一気に体に襲ってきて――ショックで倒れた、というわけだ。

 

だが、これはマジで最終手段だった。

下手すると、そのショックで死、なんてことも有り得るからな。

さすが俺!皆にできない事を平然とやってのけるッ!

そこにシビれる!あこがれるゥ!

 

 

なんか、虚しくなってきたな……

 

 

「あ、直ぐに……クッ」

 

本当はもう、動けるくらいには回復しているが、わざとらしく体調が悪いという様子を見せ付ける。

 

俺のそんな様子を見て森近さんは諦めたように溜息をした。幸せが逃げていきますよ?

 

「一日だけなら、ここにいてもいいよ」

 

「え?それは願ってもないことですが……いいんですか?」

 

「僕にも人並の罪悪感が有るしね……動けない君を、無理矢理追い出す、なんてことは出来ない」

 

「そ、それはそれは。有難うございます!」

 

俺は心からお礼を言う。

いやぁ、常識的な対応してくれる人で良かった。

まぁ、いきなり行って、「泊めてください!」なんて言うのがまず、常識的ではないから、その返答に常識もなにも有ったもんじゃないけども。

 

「いやいや、別に」

 

森近さんが言い終わる前に、俺は「どっこいしょういち」と、おっさん臭く声を漏らして立ち上がる。

 

「え?」

 

「いやぁ、疲れた疲れたー」

 

そう呟きながら、手をぶんぶん、と振り回す。肩が痛い。

 

「き、君、動けるじゃないか!」

 

ん?何を言ってるんだ、この人。

 

「俺、一言でも『動けない』とか『元気がない』とか言いました?」

 

疲れが溜まっていたとかは言ったが、そんな直接的表現を使った覚えはない。

 

「だ、だが僕は……動けないんだろうと思って、許可したんだ!君だって、動けないと――」

 

「だから言ってませんって。俺は自分から『動けない』なんて言ってませんし、貴方の動けないという発言への肯定もしていません。貴方が勝手に思い込んだ、だけでしょう?」

 

「う、動けるならもう」

 

「出て行きませんよ。貴方が勘違いしていたとか、そんなものはどうでもいいんです。大事なのは、貴方が泊めると、許可した事実だけ」

 

だって、そうだろう?普段から、人と人っていうのは、何を考えているか分からずに話すものなんだ。

結果話が成立している――ように、見えるだけ。実際は、全く噛み合ってないのかもしれない。

だが心のうちが見えずとも、人は人と共存する――それが、普通だ。

 

「俺は嘘は言っていません。疲れたのも本当ですし、道に迷ったのも本当ですし、森を来たから、瘴気が体に侵蝕していたのも本当です」

 

まぁ、実際はそこまで侵蝕しなかったわけだけども。

 

「貴方がそれだけの言葉から、勝手に推測し、勝手に許可を出したんです。なら俺は、勝手に貴方からの許可を有難く頂戴します」

 

「……ハァッ」

 

嘆息。森近さんの幸せがどんどん逃げていく。

 

「君、変わってるね」

 

「俺は一般人ですよ」

 

変わってなんかないし、変わろうともしていない。

 

「俺は普通に平凡に常識的に一般的に平和的な日常を送ることを信条としてるんですよ」

 

久しぶりに言ったな、この台詞。

 

「そうか……いや、言いたいことはまだ有るが、いいよ。泊まって。許可、したんだからね」

 

森近さんの表情は、諦め、悲しみ、疑念が入り混じってはいるが、吹っ切れたような……満足気な表情だった。

 

 

 

 *

 

 

 

「――何ですか?これ」

 

「あぁ。そのお札?それには霊力が篭っていてね、力同士を反発させることで……まぁ、簡単に言うと、相手の攻撃を相殺出来る優れものだよ」

 

まるで、出来のいい子供を自慢する父親のようである。

それで?相手の攻撃を相殺、だっけ?

 

「これって、誰でも使用できるんですか?」

 

「あぁ、誰でも使用可能だよ。人間でも、妖怪でも、使おうと思えば、零歳でも、百歳でもね」

 

流石に零歳には無理だと思う。

だが随分と便利な品物だということには違いない。大量に余ってはいるが。

 

「これ売れないんですか?」

 

「そうだね、売れることはないかな……まぁ、売れたら売れたで寂しいんだけどさ」

 

商売人らしからぬ発言を聞いた気がする。

 

「言っておくけど、商品までただで渡すことは出来ないからね?」

 

「それは流石に……気が引けますし」

 

逆に遠慮してしまって受け取れなさそうだ。

それにしても便利だよなぁ、欲しいなぁ……ハッ、衝動買いする人って、こんな気持ちなのだろうか?

 

欲しい、が。金がない。

 

俺の今の持ち物は『きのこ』、『写真付き きのこ大百科』――

 

「後は、このケータイだけか……」

 

電子マネーでも使えればいいが……流石に無理だろう。

 

「ん?な、なぁ君。ちょっとそれを見せてくれないか?」

 

森近さんが指差したのは、俺のケータイだった。

今からルーミアの「そーなのかー」ボイスをリピートして楽しもうと思っていたんだが……ま、いっか。

 

「はい、どうぞ」

 

俺は特になにも考えず、森近さんに手渡す。

 

「……電話、か」

 

分かるんだろうか?幻想郷にもケータイとか有るのかな?

 

森近さんがケータイを凝視している様を横目で見ながら、俺は大きな欠伸をした。

 

「今、何時だ?」

 

辺りを見回すと、時計があった。それが指す時刻は、十二時。

もうこんな時間だったのか。えっと、昼飯を食べてから暫くしてきのこ狩りへ行って……で、迷って……ルーミアと遭遇……なんとかやり過ごし……香霖堂に来て……泊めてもらえることになって……描写はないけど飯を食べて……それから暫く、ってあぁ、今日は色々なことが有ったんだな。そりゃあ時間も遅いわ。

 

「――ねぇ」

 

不意に森近さんが話しかけてきた。

 

「はい?」

 

「お願いが有るんだ。この、携帯電話を、僕に譲ってくれないか?」

 

「しょにょ?」

 

変な声が……絶対おかしい。今のは誰がなんと言おうとおかしい。

 

「ですが、それは大事なもので……」

 

「お願いだ、僕に出来ることならするから!」

 

近づいてこないでください、顔が近い。男とのこんなイベントいらない。

 

「そんなに欲しいんですか?」

 

「あぁ」

 

直球。幻想郷の生物は、直球発言が大好きなようで。

 

「仕方がありませんね……」

 

「譲ってくれるのかい?」

 

「えぇ。そんなに欲しいんでしたら」

 

「あぁ、ありがと「ただし!」……?」

 

「条件が有ります。それを呑んでくれたら……ですけどねぇ」

 

「それは、なんだい?」

 

「はい。ここに有るものの中から、三品!俺に譲ってくれないでしょうか?」

 

俺は手を広げ、店の商品たちを指差しながら言う。

 

「こっちがこれ一つなのにそれに対して、三つもかい?」

 

「えぇ。先程も言いましたが……それはとても大事なものなんです。とても、ね」

 

特にルーミアの「そーなのかー」ボイスとか。

 

「ですから、これでも妥協に妥協を重ねたのですよ?僕のとても大切なものを渡すというのですから、三品くらいいいではないですか」

 

「いやしかし……うぅむ……」

 

森近さんは顎に手を置き、考え始める。

 

「――三つ、だね?」

 

「えぇ。三品。それ以上は要求しません」

 

「……分かった。好きなものを言ってくれ」

 

「――有難うございます」

 

優しい人である。

 

「ではまず……このパソコンを」

 

俺は店に有った中から、なるべく最新の方のものを指差して言う。

 

森近さんは少し複雑そうな表情をした後――

 

「分かった。一つ目はそれね」

 

承諾した。

 

「では、二品目はこのお札を――」

 

「あぁ、やはり来たか」

 

来るだろうと思っていたのだろう。先程まで俺は、この札を凝視していたからな。

 

「この札を――これだけ」

 

そう言って俺は、札を一気に掴む。

 

「えぇ!?ちょ、ちょっと。明らかにオーバーしてるって!」

 

森近さんは慌てて言う、が。しかし。

 

「森近さん。この札、数えてください――」

 

俺は徐に自分が取った札を森近さんに渡し、数えさせる。

 

「……十枚、十一枚、……全部で十二枚、だね」

 

完全にオーバーしているじゃないかというように森近さんは告げる。

 

「はい、一品でしょう?」

 

「え?」

 

「十二枚で一ダース。一品です」

 

俺はバッ、と森近さんの手から札を取って言う。

 

「な!?」

 

「俺は、一品と言ったんですよ?一枚で、とか言ったわけじゃない。一ダースだって『一品』ですよね?」

 

「そんなのは屁理屈だろう!」

 

「屁理屈が、理屈じゃないとでも?」

 

森近さんはそれ以上言ってこなかった。何を言っても、屁理屈で返されると分かったのだろう。

それでも、断固反対すれば、なんとかなったかもしれないが……面倒になったのかもしれない。

 

「三品目、選んでくれ」

 

「はい、どうも」

 

俺はお辞儀をして、既に決めていた三品目を指差す。

 

「最後は――それで」

 

俺が指差した先に有った物は。

 

「な、携帯電話!?」

 

俺が森近さんに譲った、ケータイだった。

 

「はい、最後はそれで」

 

「いやいや、渡せるわけないだろう」

 

「何故ですか?」

 

「これはさっき君に貰ったもので……」

 

「ハァッ……森近さん。話聞いてました?」

 

「な、何をだい?」

 

 

「俺は別に『商品の中から三品』なんて言ってません。『ここに有るものの中から三品』と言ったんです。俺があげたとか、非売品とか、関係ない。それはここに有るものですから、俺には貰う権利が有る。違いますか?」

 

 

「な、な……」

 

驚愕。呆れからくる驚愕の表情をしていた。

 

「屁理屈だね……」

 

「それは俺もよく分かってますよ」

 

森近さんは、やられたという表情で、俺にケータイを渡す。

 

「どうも」

 

軽くお辞儀をして受け取り、中からメモリーを取り出す。

 

「それではどうぞ」

 

「え?」

 

俺はメモリーカードを抜いたケータイを森近さんに渡した。

 

「え、え?」

 

「森近さん……俺、ケータイを貰います。なんて言いましたか?」

 

森近さんは記憶を辿るように頭を抑える。暫くして。

 

「言ってないね……」

 

「でしょう?」

 

「でも、それだけで、どうするつもりだい?」

 

そんなの決まっている。

俺は最初に貰ったパソコンを持つ。

 

「『普通』電源が点かなければパソコンなんて意味がないでしょう」

 

そう言うと、パソコンの電源がピッ、という効果音と共に入った。

俺はパソコンの横の挿入口にメモリーを差し込む。

 

「はい、これでOKです」

 

平然とそう告げる。森近さんは口を開けて呆然としていた。クールな感じの人が呆然としている様は中々に面白い。

 

「君は変わって……いいや、君はなんなんだい?」

 

呆れた様な苦笑を浮べながら聞いてくる。

 

「俺は――普通の人間ですよ」

 

そう呟いて、笑みを零した。

 

 

 

次回!一体どうなる!……大丈夫どこいった。




屁理屈は、用法・用量を守って正しくお使いください。
パソコンをあんな方法で点けれるなら、前に出したゲームもそうすればよかったと思うんだよね。
そんなことより、祝十話!だからといって、記念に何かしたりとかはしませんけどね!
このペースを守っていけたらいいなぁ、と思います。ネタ出すの大変だけど、書き始めたんだからね!
それでは、感想ご指摘!どんどん年中募集中です!また次回!
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