東方日常日記   作:sameragi

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少し遅れたお詫び……と言ってはなんですが、もう一話書きました!
楽しんでいただければ幸いです!


『妖怪の山』ってネーミングだけで近づきたくないよね
お値段異常な河童物語。


「―――――問答無用!」

 

「話聞いてくださいよ河童さぁん!!!」

 

いきなり戦意を出してきた河童から逃げるため、俺は山の木々の中を走って潜り抜けていく。

 

「な、何故突然……」

 

俺を喰う為に、か?

いや違う。にとりは俺を帰そうとしていた。俺が目的ではなく、俺が山に入ろうとする――その行為の妨害が目的。

何の為に?その目的を彼女が達成するメリットはなんだ?……駄目だ。分からん。情報が少な過ぎる。

 

木々の中を暫く走ってから、俺は巨大な樹木の裏に腰掛け、情報の整理を始めることにする。

にとりが俺を発見するのも、時間の問題。

彼女は妖怪だ。攻撃を受ければ――少なくとも、大怪我は免れないと推測される。

それは……当然だが、困る。

 

「そ、そうだ」

 

俺は霖之助さんに貰った鞄の中から、携帯と取引で貰った『アレ』を取り出す。

 

「御札。一ダース……」

 

素手だろうが、能力を使ったものだろうが、ロボットのビームだろうが――

『力』というものには、絶対的反発をする。それがこの、札の効果である。

 

「いざという時はこれを……」

 

使うしか、無いだろう。

だが出来ることなら、それは避けたい。

完全な安全を確保するまでに、どれだけの時間が掛かるか分からない。

それまでに、妖怪に襲われることも少なくないだろう。

だが、御札は無限ではない。十二枚しか無いのだ。

そう、安易に使えるものか。まぁ、死んだら本末転倒なので、本当に使わなくてはいけない、という時までだ。

 

「近づいて来てるか……?」

 

先程、間近で目撃してしまった。

彼女――にとりは、どんな手段を使っているのかは知らないが、姿を消すことが出来るのだ。

先程は気配や音は有ったが――それだって、消せる可能性が有る。

周囲に強い注意をしながら、俺は鞄から、もう一つのアイテムを取り出した。

 

「OK。頼むぜ、パーソナルコンピューター……!」

 

パソコン。

俺の能力に依って、立ち上げる事は出来る。

無駄に強力なこの能力のお蔭で、充電しなくても、年中起動出来るというおまけ付きだ。

 

後は――

 

「『普通』パソコンなんだからネットに繋げるもんだろ?」

 

そう呟いて、インターネットというカーソルをクリックする。

すると、パソコンは大型検索サイトg○○gleに繋がる。

俺はどちらかと言うなら、yah○○派なのだが……まぁ、繋がったんだから良しとしよう。

 

慣れた手付きで『東方 にとり』と検索する。

 

「出てきた!」

 

フルネームは『河城にとり』というらしい。苗字有ったんだな。

 

「えっと何々……?きゅうりを渡して開放された例が有る?きゅうりなんか持ってないから!」

 

もっと、有益な情報は無いのか……?

なんか、どうでもいいことしか出てこないんだが。

 

「『水を操る程度の能力』?」

 

どこが『程度』だ、どこが。という突っ込みは今更か。

待て。水を操るって、最強じゃないか?どこまで操れるんだ?

血液だって操れるし、空気だって操れるじゃないか。制限が有るなら良いが……

 

「一体どういう……」

 

呟いた瞬間。俺の腰掛けていた樹木の直ぐ隣の木に、弾丸が撃ち込まれた。

 

「は……?」

 

穴の開いた木を触ってみる。

 

「濡れてる……」

 

「見つけた!」

 

水弾丸が発砲された方を見ると、そこには仁王立ちをするにとりの姿が有った。

 

「やばっ!」

 

俺は鞄を持ち、パソコンを抱えながらさらに逃げていった。

 

「あ、待て!」

 

「誰が待つんですか!」

 

俺が見ていたパソコンのページには『実際にどこまで出来るかは不明』と、能力の詳細が書いてあった。

 

「今分かったよ。少なくとも弱くないってことがな!」

 

誰に言う訳ではないが。鬱憤を晴らすように叫ぶ。

 

「もっと、もっと情報は!」

 

走りながらパソコンを使うのがこんなに大変だったとは。普段こんなことしないから知らなかった。

いやまぁ、しないのが普通なんだが……

 

「下にスク水を着てる説が有る?え、マジで―――――って、とことんどうでもいいわ!!!」

 

一瞬興味を引かれかけたが、直ぐに吹っ飛ぶ。詳しい情報は後でゆっくり出来る時に調べるから、今は、現在。必要な情報が出てくればいいんだ!

 

 

――だが。ネットというのは、どうでもいい情報の宝庫である。

旨く行かないものだ。

 

「検索、検索、検索、検索!!!」

 

有益な情報、有益な情報。

やはり、きゅうりを渡すしかないのか……?

 

「だから待ってぇ!」

 

「だから待ちません!」

 

流し読みしていた河城にとりの情報の中から、俺は一つの情報に目を止める。

 

「人間の盟友?」

 

どこがだ。なんで盟友を攻撃してるんだよ。

 

――いや、実際どうなんだ?

 

俺、攻撃されてるのか?

実際、彼女が本気を出せば、俺なんか取るに足らない存在なのだろう。

だが――俺は無事だ。

更に彼女は、透明になれる技術を持ちながら、それをしようとしない。

本当に彼女は、俺を狙っているのか?

いや違うだろう。俺を狙っていないことは、最初から分かっていた筈だ。

彼女が潰したいのは俺じゃなく、俺を森に入れさせること。

それをする、メリットが不明だったが――人間のことを、盟友と思っているなら――

 

それなら、説明をすれば大丈夫、か?

 

「ま、待てー!!!」

 

駄目だ。彼女はもう完全に躍起になって動いている。

彼女の気を完全に引くことが出来れば――

 

「よし!」

 

目的変更。

逃げるでもなく、攻撃されるでもなく――

話をするだけでいい。

 

「……説得、か」

 

俺はデスクトップに表示された彼女の情報の一部を見て――

 

 

――ニヤリと笑った。

 

 

 

 *

 

 

 

「――待てって!」

 

疲れたような声が聞こえた。彼女が近づいてきている。

まず、説得というのは『入り』が大事なのだ。

その入りの状況を作る為のチャンスは、一瞬。

 

「はっ、はぁっ……くっ!」

 

彼女が俺に先程の水弾丸を放つ。

俺は眼前にそれが来るまで、ジッと体を止め、直撃の直前。

一瞬。

 

御札を一枚。弾丸へ放った。

 

力と力がぶつかり合い――激しい音と、煙が辺りに広がった。

 

「――え?あ、当たった!?」

 

攻撃したのは自分だというのに、驚き過ぎである。

 

「……って、いない?」

 

煙が晴れたそこには――何も、なかった。

 

「ま、まさか全部吹っ飛んで……いや、そこまで強い攻撃じゃなかった」

 

意外と、冷静に分析出来る人、いや河童のようだ。

 

「じゃ、じゃあ――」

 

「お見事です」

 

「ひゅい!?」

 

これまた、みょんな奇声を上げるな。

 

「おや。驚かせてしまいましたか。申し訳ありません」

 

「あ、貴方……!」

 

驚いたように目を見開くにとり。

今だ。話す隙は与えない。

 

「このパソコン」

 

「え?」

 

「俺のパソコンは少々特殊でして……幻想郷の『外』の情報を得ることが出来るのです」

 

「外の情報!?」

 

あぁ、にとりの情報もね。

神様製能力の賜物だ。

 

「どうですか、にとりさん?パソコンを、とは言えませんが……これを使って情報を得る、なんてことは、許可しても良いですよ?」

 

「ほ、本当!?」

 

先程から、よく驚くなぁ。

 

「本当です。ですが、勿論条件は有りますがね」

 

「な、なに?」

 

目がキラキラしてやがる。

 

「俺を、見逃して貰えませんかねぇ?」

 

「!そ、それは……」

 

「出来ません、か。仕方が無いですね。この件は無しで」

 

「え!えっと……」

 

「では追いかけっこの続きと行きましょうか。俺、逃げますんで」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

「じゃあ、よーい、ドン!!!」

 

「ま、待ったぁー!!!」

 

「……どうしました?」

 

「その条件、呑もうじゃないか」

 

OK。落ちた。いや寧ろ堕ちた、と言った方が正しいな、これは。

だが――

 

「いえ。いいです。無理させるつもりはないので」

 

「え!?」

 

「それじゃ」

 

「待って待って待ちんしゃい!無理してないから!」

 

「嫌です」

 

「何故!?」

 

「気分が変わりました」

 

「えぇ!?」

 

俺はつい、少し噴出してしまう。

運よくばれなかった様だ。危ない危ない。

手に入りそうなのに、後少しで手に入るのに――

どうしても、手に入らない。

そんな限定感のようなもの……感情や意思有るものは、それに弱い。

押しても引いても駄目なら――

 

 

押しと引きを同時に。

 

 

要するに――相手を掌中で弄べ。

それにはまってしまった者は――玩具となんら変わりない。同じ感覚に支配される。

先程、河城にとりの情報に書かれていたのはこうだ。

 

 

『技術者として、好奇心や探究心が強い』

 

 

好奇心と探究心というのは、抑えるのが途轍もなく困難だ。

 

皮肉なことに、彼女は溺れた。

水を操れる能力を持ち、河童という存在で有る彼女は――

 

俺の掌中の中で、『自分』という底無し沼に――

 

 

溺れていった。

 

 

 

 *

 

 

 

「俺を、助けようとしていたんでしょう?」

 

「え?」

 

無邪気にパソコンを触る彼女に、俺は既に解決済みの疑問を問う。

 

「河童は人間の盟友だから――危険な山の中に、俺を入れることを止めようとした」

 

なんと不器用なことだろう。

攻撃で止めてくるとは。もっと方法が有っただろう。

 

「それが――好奇心に負ける程の心配ですか」

 

「うっ」

 

にとりは胸を押さえた。俺の言葉が突き刺さったようだ。

 

「ま、いいですけどね……」

 

申し訳無さそうなにとりに、俺は何でもないように笑う。

 

「この程度、気にしてたら普通に生きるなんて出来ませんよ」

 

「……普通?」

 

「俺は普通に平凡に常識的に一般的に平和な日常を送ることを信条としてるんです」

 

これでも、割と寛容な心を持ってるんだ、俺は。

 

「そ、そういえば!」

 

「はい?」

 

「妖怪の山に用が有る、って言ってたけど……何なの?」

 

「あぁ、それですか……」

 

そういえばそうだった。

さっきからドタバタしていて、忘れてしまっていた。

 

「いえ、ね……とある方に、用がありまして……」

 

「へぇー」

 

「興味なさそう!」

 

もう彼女は完全なるパソコンの虜だ。

 

「ハァッ……」

 

ゆっくりと溜息を吐くと、体がとても疲れていることに気付いた。

途轍もなく、長い時間走った気がする。

 

「ハァッ……」

 

あぁ、幸福が逃げる……

 

 

 

この疲労で、『これから』大丈夫だろうか……?




最近、ネタが出ません……(切実)
大体、いつも即興で書くんですがね、伏線も何も有ったもんじゃない。
感想、ご指摘など、どんどん年中募集中です!
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