東方日常日記   作:sameragi

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寝ぼけながら書いてました。八雲家も有ります。全四話構成。
楽しんでいただければ幸いです。


普通っぽい番外編

【八雲紫と日常編】

 

 

 

 

 

空は青い。

雲は白い。

水は冷たくて、お湯は熱い。

これは、俺でなくとも、小学生でも基本的に誰でも知っている様な、自然の常識である。

それこそ、こんな事は動物だって知っている。

 

人を殺したら捕まる。

小、中学校は義務教育。

だからと言って、高校や大学も出ていて損は無い。

これは、人間――もう少し詳しく言うなら、日本人の作られた固定の常識である。

気儘に生きる野生動物には関係無いし、このくらいの事は、学ぶ気が無くても日本人なら基本知ってる。

 

 

 

それが――常識。

 

 

 

「まだ有るわよ?常識」

 

「……心を読むのは、世界的常識に反していると思うが」

 

「口に出してたけど」

 

え、本当かよ。考える事に没頭し過ぎていた気は無かったんだが……気を付けるようにしよう。

 

「まぁ、嘘だけど」

 

こいつの言葉を鵜呑みにするのは金輪際止める事にしよう。

先ず、疑って入るのが、こいつに対しては良さそうだ。

 

「あぁ……で?他の常識とは?」

 

外国人の常識や動物の常識。妖怪の常識も有るなんて言わないよな。そんなことは当然の様に知っているぞ。

 

「個人の常識よ」

 

「例えば?」

 

「そうねぇ例えば……『目玉焼きには何をかけるか』とかね」

 

随分とショボイ例だ。だが、確かに解りやすい。

醤油にソース。マヨネーズにケチャップ、塩。人夫々、皆違う答えや同じ答えが返ってくるだろう。

その答えの中にも「基本は醤油だけど他でも良い」とか「ケチャップ以外は考えられない」とか、様々だろう。

 

「だが、それを常識というには無理が無いか?」

 

そんなの、感性や感覚の違いだろう。出るのは当たり前だ。

 

「どうして?人間のルールだって何処かの個人のモノで、それが広まっただけでしょう?」

 

「それとは訳が違うぞ。例えば、俺がお前に命令してもお前は俺の言うことを聞かないだろうが、お前より強いものが命令したら聞く、少なくとも考えるだろう?そういう事だ」

 

「私は生の命令聞くわよ?」

 

「ほう?なら俺に個人の常識とやらを納得させてみろ!」

 

「いいわよ?それじゃ」

 

紫は呟くと、いきなり俺の肩を掴んで座っている自分の膝に乗せた。

 

「……何のマネだ?」

 

「意外と冷静ね?ドキドキしたりしないの?」

 

「物凄くドキドキしてるが、表面上に出していないだけだ」

 

「器用ね……まぁそれより、こういう事よ」

 

何が?

 

「膝枕に貴方はドキドキしてるみたいだけど、膝枕にドキドキしない男性だっているでしょう?これが個人の常識――というか世界かしら?そういうモノよ」

 

「―――――否」

 

断じて否。

 

「膝枕に興奮しない男はいない」

 

「流石にそれはないでしょう」

 

「有る」

 

俺は膝枕をして貰っている体制の儘、キメ顔で話し続ける。傍から見るとシュールかも知れない。

 

「膝枕とは母性の象徴なのだ」

 

「母性の象徴?」

 

「そう、膝枕に詰っているのは『温かさ』そして『優しさ』」

 

小さい時、泣いた子供を慰めてくれたお母さんの、あの時の抱擁。

 

「それに通ずる、温もり」

 

少しバランスが悪くて、寝辛いけど、でも温かさを感じれる。

 

「愛」

 

そう――真心。

 

「柔らかな掌で、頭を撫でてくれたりなんかしちゃった日には、俺の鼓動が決壊するね」

 

「結局何が言いたいの?」

 

 

 

「膝枕は素晴らしい―――――」

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

【八雲藍と日常編】

 

 

 

 

 

楽しい時間とは、過ぎ去るのが早く感じるものだ。

逆に、苦しい時間や辛い時間程、過ぎ去るのが遅く感じる。

 

たった、一分。平等な一分という時間でも考え方に依っては、一秒にも一時間にもなりえる。

 

「ふと思ったんだが」

 

「思わなくていいよ。面倒だから」

 

人をそんな口を開けばよく分からないことを言う脇役みたいに。

 

「その表現、微妙に分かり辛いな」

 

「例えば――人は生きていると同時に死んでいるのです。そう、それは感覚や感情等が齎す、錯覚かも知れません。ですが、死んでいる事が錯覚なのではなく……生きている事、我々が、今現在、歩んでいるこの人生こそが錯覚だったら、と考えると――中々興味深いですねぇ。こんな感じ」

 

「あー……なんとなく分かった」

 

矛盾ばかり表現として出していれば中二病っぽくて格好良いなんて思ったら大間違いだ。実際それはかなり寒い。暇潰しに読んでいたライトノベルや、なんとなく見たアニメなんかで『生きている意味は何か?』なんて意味不明な哲学やられても、面倒なだけだ。

 

まぁ、この小説はやるけどな。意味不明な哲学。

 

昨今の小説なんて――それも、駄作者が書く駄文的二次創作なんてそんなもん。

 

「生。それ以上は流石に」

 

「あぁ御免。予想以上にキーボードを打つ手が張り切った」

 

「それで、さっきの話は?」

 

「さっきの……あぁ。いやふと思ったんだがな『時は金なり』という言葉が有るだろ?」

 

「TIME.is.Moneyか」

 

「何故英語表記にしようと思ったのかは分からんが、それで合ってる」

 

「有名な諺だな。それがどうした?」

 

「あぁ。この諺を考えた奴って幸せだったんじゃないかな、と思ってさ」

 

「何で?」

 

「だって辛かったら、時間早く過ぎろよ、時間なんていらないよとか思うもんじゃん?だから結構幸せな人生で、時間が過ぎるのを早く感じてたから大事だ。とか言ったんじゃないかなって」

 

「中々、面白いけど……実際どうでもいいな。いい言葉だから現代まで残ってる訳だし。それに、お前風の言葉を使うなら『普通、幸福と不幸は平等』だろ?それを時間の中で如何に有効活用出来るかが問題なんだ」

 

「今、俺風と言ったがそれは違うな。俺的に言うなら『幸福よりも不幸が人生』だ」

 

「何故そう思うんだ?」

 

「間違えない生物なんて存在しないからだよ。百の人生の間、五十の幸福と五十の不幸が与えられるのかも知れないが、幸福というのは少しの間違えで充分不幸に成り得るし、逆に不幸を幸福へ変換するのはとても難しい。だから元の平等が有れど、不幸の方が誰も絶対的に多くなると、俺は思う」

 

俺の言葉に藍は少し考える素振りを見せる。

 

「うーん……思ったことを其の儘言うならそうかも、いやそうだな」

 

他にも何か言いたそうだな?

 

「あぁ。別にそれで良いんじゃないか?」

 

「何故だ?」

 

「そう言われると難しいけど――そういうモノだと私も思うし」

 

何が、言いたいのか自分でも分からないというように、藍は頭を抱える。

 

「……でも」

 

そんな藍を見て、俺は微笑を浮べながら語り出す。

 

「小さな幸福で大きな幸福の様に喜べたり、不幸から幸福を見出せたりしたら、良いかもな」

 

「……それもそうだな。ところで私達、何の話してたんだっけ?」

 

「時間の話だけど……もういいや。それより、晩飯作ろうぜ」

 

「おっ。今日は何だ?」

 

「うぅん……何にするか?」

 

「私から一つ要望が有るんだけど、いいか?」

 

「何だ?」

 

藍はにっこりと、笑い、俺の顔を覗き込んで。

 

 

 

「ゆっくりと時間を掛けて沢山の美味しい料理作って……紫様を驚かせよう!!!―――――」

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

【香霖堂の平凡な日々】

 

 

 

 

 

「そんな、生さんの中で『No.1』だなんて……ポッ」

 

「誤解を招く部分だけ切り取るな」

 

頬を赤らめるな。自分で擬音を口にするな。気色悪い。

 

今俺は、香霖堂で射命丸文という鴉天狗の妖怪と対峙している。

ボケて突っ込んで――という日常生活での漫才は突っ込み側からすると疲れるだけで何ら楽しくない。

 

「で、新聞いかがです?」

 

「だから要らないって」

 

「ペットボトルも差し上げますから!」

 

「飲み物か……それなら考えても」

 

「空ですけど!!!」

 

「そんなオチだと思ったよ!」

 

いらないよ!誰が好き好んでリサイクルに出すもの貰うんだよ。自分で買ってにリサイクルしてろよ。

 

「そんな!?いろ○すですよ!」

 

「だから何!?」

 

いや確かに、ボコボコ、って潰すの物凄く楽しいけどさ。

俺も初めてあの空きボトル潰した時「何だこれ!新時代の幕開け!?」とか思ったけどさ。

というか、幻想郷にいろ○す有るのかよ。

 

「じゃあじゃあ特別に―――――」

 

「いやいい。もうその手には乗らん」

 

「そうですか?幻想郷の事が載った本を差し上げようと思ったんですが……」

 

「――!」

 

幻想郷の情報。

それは、ここに来たばかりでこれからの当ても無い俺には喉から手が出る程のモノだった。

パソコンで有る程度調べる事は出来るが、ガセかどうかも判別できないし、そもそも幻想郷の外。というかゲーム世界の外である現実の情報よりも、現地の情報の方が当てになるのは当たり前だ。

 

「うぅん……」

 

「いえ?無理しなくても良いんですよ?えぇ、良いんです。一冊しか有りませんからねぇ……他の人にあげちゃいますか」

 

一冊しか無い。

この言葉が真実かどうかは解らないが、確実に射命丸は俺に揺さぶりを掛けている。

これに乗ったら、相手の思う壺――それは解っているのだが。

 

「先ず、金も無いしなぁ……」

 

「そこはご安心を!今払って頂かなくても後払い受け付けますから!」

 

以外にも良心的だ。いや違う。俺を安心させて緊張感を解した後。

 

「でも要らないんじゃ仕方が有りませんね!」

 

一気に揺さぶりを掛ける――

駄目だ。

俺はこんな作戦には屈しない。決して屈しないぞ―――――

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「まいどありー!」

 

あれから二分。あっさり屈した。

自分の精神力の弱さには、困ったものだ。

因みに面倒なので、金は今一括一年分払った。

え?どこから?そんなの―――――

 

「君って、鬼だよね……」

 

抜け殻の様になっている霖之助さんが呟く。

前の商品の時の件で脅した。この店に有るものだから、この店ごとでも良かったんですがねぇ?とか言って。

反論すれば充分論破出来るのに、払ってくれる当たり、結構良い人だよな。感謝感謝。金は返さないが。

 

「じゃあこれ!生さんにも!」

 

文が先程持ってきた号外を俺に渡す。

さっと眼を通すと大きな記事は人里の祭りの事――さっき霖之助さんも少し言っていたな。

 

「これって、誰でも出店が出来るのか?」

 

「はい、ちゃんと許可を出せば、ですがね」

 

ふぅん……脳内に留めて置くか。

まぁ、それよりも。

 

「そら、早く」

 

「あやや?何がです?」

 

「何がじゃないよ!幻想郷の事が書かれてるって本!」

 

「冗談ですよ!はい!」

 

文が手渡してきた本は、薄めで表紙にはカラフルに色々な事が書かれていた。

其の中で、俺はその本のタイトルを見た瞬間。固まる。

自分の中で時間が止まった気がした。

 

「これ――」

 

プルプルと震えながら声を絞り出す。

 

 

「これ、グルメ雑誌じゃねぇか!」

 

表紙には『里のおすすめグルメ』の文字。

 

「幻想郷の事の雑誌ですから!嘘は言ってません!」

 

「ぬぅ……」

 

それを言われると反論出来ない。

 

「私の勝ちです!」

 

「クソッ、やられた!」

 

俺は雑誌を床に投げ付けて、悔しさを表すように地団駄を踏んだのだった。

 

 

 

「というか、今回の一番の被害者は僕だよね?―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【人喰い妖怪と人乞い人類】

 

 

 

 

 

「―――――キャラ」

 

「は?」

 

魔法の森付近で、俺はふと、ルーミアに呟いた。

 

「キャラ変えてみないか?」

 

「藪から棒にどうしたのよ?」

 

ルーミアは途端に怪訝そうな顔付きになる。

 

「いやさ。一回も『わはー』とか言ってくれないなぁと思って」

 

「漫画の読み過ぎじゃない?そんなの現実で言ってる生物が居たら妖怪ですら引く」

 

ルーミアの冷静な突っ込みに苦笑しながらも、話を続けていく。

 

「俺の中でのルーミアはそういうイメージなんだよ」

 

「あんたって……そういうところ変だよね。『そーなのかー』なんて台詞に執拗に執着したり」

 

まぁ、本人からしたら意味が分からないか。

例えるなら、芸人に逢った時、普段やってくれるネタを披露して欲しい感覚というか――分かりにくいか。

というか、『そーなのかー』なんて台詞の場合。割と誰でも使うし、意識して遣ってる訳ではないだろう。余計に、か。

 

「そのー……手を異様に広げてるのはキャラ付けなのか?」

 

ルーミアのパッと見無邪気さが溢れていそうなポーズを指差して問う。

 

「聖者は十字架に磔られましたって言ってるように見える?」

 

十字架(クロス)を好む中二病――という感じに見えるな」

 

というか、質問の答えになって無いんだが。

 

「別にキャラ付けじゃない。というか、キャラ付けって意識してやるモノ?」

 

「意識してやる奴も居るだろ」

 

「んー……」

 

ルーミアは顎に手を置き考える様な素振りをしたが……それ以上は、何も言わなかった。

 

――沈黙が流れる。

 

案税制の保障された沈黙なので、緊張感は無い。緊張感は無いが、何とも言えない気まずさは有る。

 

「……ツンデレとか?」

 

とりあえず沈黙を破ろうと、前振り無くルーミアに話を始める。

 

「何が?」

 

「キャラだよ、キャラ」

 

「まだ考えてたのか……」

 

それは、一度始めた話なんだから少しくらいで止めるのは勿体無い。

 

「ツンデレって……『べっ、別にあんたの為にやったんじゃないんだからね!勘違いしないでよね!』みたいなやつ?」

 

「グハァッ!?」

 

余りの破壊力に吐血――は、しないが、吐血した様に倒れる。

 

「良い、感じだぜ……」

 

「付いていけない……」

 

ただ、一つ言わせて貰いたいことが有るとすれば。

 

「現象的ツンデレも見たいな」

 

「現象的ツンデレ?」

 

「元の方のツンデレだよ。つまり、今みたいな感情の二面性じゃなくて、感情の変化を表すツンデレ」

 

「例えば?」

 

「うぅん……挙げづらいけど。ずっとツンツンしていた相手が、時間の積み重ねで打ち解けて言って、最後にはデレてくれたら、それはもう破壊力満点なんてレベルじゃない」

 

「どんな感覚なの?」

 

 

「――兵器だ」

 

「そんなに!?」

 

ツンデレで世界征服も夢じゃない。一瞬本気で思うくらいにはヤバイ。

 

「でも、今実演するのは難しいかなぁ……?」

 

「出来たら実演させられてたの!?」

 

惜しいが、ルーミアのツンデレ的台詞が聞けただけでもよしとしよう。

 

「ちゃんと録音もしたし」

 

「いつの間に!?」

 

俺はパソコンを取り出して、先程のツンデレボイスをルーミアに聞かせる。

 

「一体いつ録音起動を……」

 

「あぁ俺、ルーミアとの会話は全部録音するようにしてるから!」

 

「気持ち悪い!!キモいじゃなく、純粋に気持ち悪い!」

 

全力で引かれてしまった。

 

「友達だろ♪」

 

「親友にも家族にも恋人にだってしないから!そんな奇行!」

 

ルーミアが口で言わずも視線で消去を要請してくる。

その視線は殺気の塊。正に虫どころか弱い人間くらい殺せそうな視線だった。弱い人間である俺はもう死にそう。

 

「甘いぞルーミア!このパソコンはルーミアの記録は完全バックアップが作られ、完璧なるセキュリティが施される仕組みになっている!具体的に言うと、俺ですら全データ消去は不可能!」

 

「無駄過ぎる技術力!?」

 

まぁ、能力を使えば消去出来るが……消去するつもりなんて全然無いし、黙って置こう。

 

「それよりルーミア――あの台詞、終わりに頼むよ」

 

「えー……」

 

「この通り!」

 

昔から大得意だった華麗なる土下座を見せ付けて頼み込む。

 

「じゃあ、一回だけ……」

 

「よし来た!」

 

俺はまるで、これから戦争でも始まるような緊張感で台詞を待つ。

 

 

「わはー。そーなのかー」

 

 

沈黙が流れた後、静か過ぎる森には、一つの単調な音が響き渡った。

 

 

 

『録音しました―――――』

 

 

 

 

 




霖之助の台詞の少なさには書いてから気が付きました。次の番外編で頑張ります。
凄く今更ですが、『東方日常日記』には旧作の世界観やキャラは関係してきません。
後、多分秘封倶楽部も出てきません。ご了承ください。
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