気を取り直して,
ドウゾ!
《b》連続刺殺事件資料 Vol.1《/b》
特徴 男性 パーカーを着ての犯行 使用凶器はナイフのみ
その他 全国で約1000人を殺害した模様
了
いつものように化粧をする、今日はドレスを着て彼とディナー。
普通の人なら楽しみや嬉しいなどの感情を抱くはずだ、ところが彼女は違う、これまでたくさんの男性と付き合い、男性は謎の死を遂げている。どの男性も多額の生命保険をかけて。そしていま彼女が抱いている感情は、
どうやって金をとって殺そうかしら。
彼女は黒い感情を隠すように真っ白なドレスを着て【彼】のもとに向かった。見えない死が後を追いかけた。
ふぅ、とため息をつく。
黒のパーカーを羽織る青年がいた。これから少し用事を済ませに行くための準備をしている。用事とは、女一名の殺害で、ナイフ一本のみこれが彼の装備だが実際ナイフなどなくとも息の根は止められる。
準備ができ彼は家から出た。
銀色の刃のみが淡く光っていた。
つい最近からこの国で刺殺体が増え始めていた。
さてどうやって巻き上げようかしら。
そう彼女は考えながら大通りを歩いていたが不意にどこからか呼び止められた。振り返ってみても誰もいない、空耳かなと前を向いてみると...
「水野霊華、三十二歳、これまで七人の男性と結婚、そしてみな殺害され遺産はすべてあなたに、警察に疑われるも証拠不十分で釈放。」
「まったく、金に目がない悪魔が、何人殺せば気が済むんだ?」
詩を読み上げるような口調で話す青年は、まるで人形の様な生のない奇妙な雰囲気を醸し出していた。顔はパーカーと街灯の光が逆光となって見えず、その場に立っていた。
霊華は微笑みながらも内心焦っていた。完璧なまでの犯行が正面の青年に暴かれようとしていた。
「あらあら、そのようなこと物騒なこと私にはできませんわ、第一私は動機がありませんもの急いでおりますのそれでは失礼いたしますわ。」
その場を早足で立ち去ろうとするが、すれ違う瞬間に一枚の写真が見えた。それは彼女がオトカを殺した瞬間の写真だった。
瞬間彼女は青年から後ろに飛びのき、距離をとった。最初からばれていた私の計画がこんな奴に邪魔されてたまるか。こうなったら...
殺さないと、殺さなくちゃ。隠していた暗殺用の小型ナイフとトンファーを取り出し構えた。彼女にはもう先ほどの優雅な態度は影を潜め殺意にあふれていた。
「やっと本性を現したね、やっぱり物騒なことしているじゃないか。」
片足を引き、だらんと脱力した構えをとる。慣れたことだった。いつもこんなことばっかりしていたし、そう教えられていた。
これから鮮血が舞う、二人とも理解していた、それほどの数を踏んできたのだ。両方とも恐れや躊躇いはなかった。
先に動いたのは青年だった。一歩で間合いを詰め攻撃に移る、が即座に霊華が反応し、トンファーで防ぎナイフで脇を狙ってきた。一般人ならそこで終わり、しかし相手が悪かった。指で鳩尾を突き、前のめりになった瞬間に頭に膝蹴りが入る。首が空き体制が崩れた。そこで霊華が持っていたナイフを外し自分のナイフで手首と肺を刺した。呼吸ができず倒れこんだのを確認して淡々と告げた。
「死ぬ前に教えてやる。霊輝が名前、いや、こっちのほうが分かりやすいか、
フード・リッパー
それが名前だよ。」
そう言って踵を返して闇に紛れた。
ジャック・ザ・リッパーまたは、切り裂きジャックを知っているだろうか?
知っている者は多いだろう人をバラバラに切り刻んだ人間だ。彼はたくさんの命を奪っていた。
それが悪魔と等しい行動であったため自ら死ぬこともできなくなった。時代が流れてこの世界に科学と魔法、正確には、核エネルギーが廃止され、それに代わるエネルギーとなったのが、
20k+z
である。これは自然現象すべてを人工的にエネルギーとして変換し圧縮させたものである。よってさまざまな現象を操ることができるようになった。
そんな時代にジャックは一人の捨て子を見つけ気まぐれに保護し育てた。育っていくその子を見ているうちにだんだんとジャックは変わっていった。それが次第に人間と戻っていった。しかし肉体は崩壊し始め最後にその子にこう言って死んだ。
「私の救世主、霊輝、いやフードリッパー。いいかい、絶対に自分の信念のためにその刃を抜くんだ。わかったね。」
フードリッパーは自分の意志で犯罪者を殺している。切り裂きジャックのような人間を作らないように。
フード「ツマンネ。 ポイッ」
レーキ「そんな、ショック」
フード「そんなに落ち込むなよ、よしよし。」
意外と優しい霊輝くんだった。