μ’sと仮面ライダーの物語   作:シーチ

118 / 136
はい、108話です!

今回からあるレジェンドライダーが登場するオリジナル回。更に海未ちゃんメイン回でもあります。今回は海未ちゃんと優がキャラ崩壊してると思います…

では108話、スタートです!


108話 新曲作りとデートと謎の女幹部

〜前回のラブライブ!、μ'sと仮面ライダーの物語!〜

 

希「ラブライブ!最終予選で歌う曲を考えるウチらμ's。」

 

海未「初めてラブソングを作曲しようということになり、考えてはみたものの、なかなか決まりません…そんな中、希は本当の仮面ライダーブレイド、剣崎一真さんに出会う。そこに財団Xが現れ、コーカサスビートルアンデッドの封印を解かれてしまいます。」

 

希「そしてウチは、更にレジェンドライダーと出会う。仮面ライダーカリスに変身する相川始さん、仮面ライダーギャレンに変身する橘朔也さん、仮面ライダーレンゲルに変身する上城睦月さんと出会ったウチは、先輩たちと協力してなんとかコーカサスビートルアンデッドを封印した。」

 

海未「そこに、3体のダイヤの上級アンデットが現れる。」

 

希「ウチはアンデットを倒すため、カテゴリーKのラウズカードを使おうと決意する。そして、13体のアンデッドと融合した姿、仮面ライダーブレイド キングフォームに変身し、3体の上級アンデットを封印した。」

 

海未「そこに集まった私たちは、空から降ってきた雪に心打たれる。そして、私たち一人一人が言葉を出し合い、ラブソング製作に一歩近づきました!」

 

希「それにしても、珍しい組み合わせでのあらすじ紹介やね。ウチと海未ちゃんの2人って。」

 

海未「そうですね。こういうのも、新鮮でいいと思います。それにしても、優はどうしたんでしょう?一緒にあらすじ紹介する予定だったというのに…私、ちょっと探してきます!」

 

希「えっ、まだあらすじ紹介のとちゅ…あっ、行っちゃった…えっ、えっと…どうなる108話!」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜三人称視点〜

 

「ふわぁあ…」

 

まだ薄暗い朝、黒崎秀夜は目が覚め寝付けなくなってしまったため、朝食を買おうとコンビニに寄っていた。その帰り、神田明神の近くを通った秀夜は、何かに気づく。

 

「あれは、花陽か?」

 

「ふっふっはっはっ…ふっふっはっはっ…」

 

花陽が神田明神の前の階段を、走っていたのだ。秀夜はそんな花陽に声をかけた。

 

「秀夜くん?」

 

「こんな朝っぱらから、走ってるのか?まさか…また太ったのか?」

 

なんともデリカシーのない発言をした秀夜に、花陽は顔を赤くしながら慌てて答える。

 

「ちっ、違うよ!」

 

「じゃあなんで?」

 

「それは…私、今は戦う時モモタロスさんたちに頼ってばかりだけど、いつまでもそういう訳にはいかないと思うの。元の契約者である野上良太郎さんが記憶を取り戻したりしたら、少なくとも今のようにって訳にはいかないと思うの…だから、その時がきたら私1人でも戦えるように、最近トレーニングしてるんだ!」

 

「花陽…」

 

普段は気弱な面がある花陽がこんなにもしっかり考えていたことに感銘を受けた秀夜は、思わず彼女の名前を呟いた。

 

「あっ、これモモタロスさんたちには内緒だよ?この時間はまだモモタロスさんたちも寝てるし、バレないようにしてるから。」

 

「あぁ、分かった。花陽は偉いな。よしっ!明日からは、俺も一緒に走る!」

 

秀夜の言葉に、花陽は思わず「えっ?」と聞き返した。

 

「俺も仮面ライダーだからな。優と蓮も、それにμ'sのみんなもどんどん強くなってるのに、進化の仮面ライダーなのに俺はまだまだ全然追いつけないなって前から思ってたんだ…だから、これは良い機会だと思うし俺も一緒に走るよ。付き合わせてくれ。」

 

「えっ!?つつつ付き合う!?」

 

秀夜の言葉の最後の部分に強く反応した花陽は、顔を真っ赤にしながら驚いた。それにキョトンとした様子で「どうしたんだ?」と聞く秀夜。

 

「あっ、ううん…なんでも。走るのに付き合うってことだよね?」

 

「それ以外に何があるんだよ?」

 

秀夜が言ったように、話の流れからして走ることに付き合うということ以外ではないのは明確だが、恋は盲目。そう言われるように、花陽は交際する方かと一瞬考えてしまったらしい。

 

「そうだよね…うん!こちらこそ、よろしくお願いします。」

 

こうして、これから2人は毎朝ランニングすることになった。

 

 

 

「では、行ってきます。」

 

秀夜と花陽が走る約束をした頃から2時間程時は流れ、μ‘sのメンバーの1人である園田海未は、音ノ木坂学院に向かうため家を出た。そんな海未の前に、財団Xが仕向けてきたであろうダスタードが現れる。

 

「…!?全く、朝から迷惑ですね…仕方ありません。」

 

海未は音叉を取り出し、展開して音を奏でた。

 

「はぁぁぁぁぁ…たぁ!」

 

海未は仮面ライダー響鬼に変身し、

 

「はぁぁぁぁぁ…」

 

更に響鬼紅に進化した。

 

「はぁ!たぁ!」

 

音撃棒でダスタードを叩いて倒し始める。

 

「これで終わりです。はぁぁ!」

 

そして、音撃棒に炎を纏わせ、一気にダスタードを倒した。

 

「よし…早く学校に行かないと…うっ!?体が、うご、かない…」

 

その時、何者かの力によって海未の動きが封じられ、強制変身解除に追い込まれる。そして、そんな海未の前に、恐らくその犯人であろう人物が現れる。

 

「あ、なたは…財団Xの…」

 

「あぁ、クロッカーだ。」

 

その男とは、財団Xの幹部であるクロッカーだ。

 

「早く、これを解いて…ください…!」

 

海未はクロッカーを睨みつけながら言った。

 

「そう言われて簡単に解く敵はいないだろうな。まぁ、そう怖い顔するな。すぐに済む。」

 

「っ!?」

 

そう言ったクロッカーは、海未に向けて何かを投げつけた。それに気づいた海未は、驚いて目を瞑る。数秒目を瞑っていた海未だが、特に異変を感じなかったので目を開けた。

 

「あれ、いない…?」

 

目を開けた時には海未の前からクロッカーは消えていて、体も自由に動かせるようになっていた。

 

 

 

 

 

海未がクロッカーと一悶着あった頃、優の周りに現れた紫色の物体が体内に入り、優は気を失って倒れてしまっていた。

 

「優くん!優くん!」

 

路地裏で倒れている優を、偶然見つけたことりが駆け寄りそう声をかける。

 

「優くん!しっかりして!」

 

ことりのその声が聞こえたのか、優の瞼が少し開いた。

 

「優くん?」

 

「こと、り…?」

 

「目が覚めた…良かったぁ…」

 

「あっ、あぁ…わる、い…」

 

優はことりに支えてもらい、ゆっくりと立ち上がりながら答えた。

 

「なんでこんな所で、倒れてたの?」

 

「えっと…俺は確か、剣崎さんと会ってラウズカードを預かって別れた。それから…ダメだ、思い出せない…倒れる直前の記憶が、抜けてるみたいだ。」

 

優は少しずつ倒れる前のことを振り返っていたが、剣崎一真と別れてからのことは思い出せなくなっていた。

 

「そっか…どこか痛むとことかない?」

 

「あっ、あぁ…大丈夫みたいだ。」

 

ことりに言われ、優は自分の体を軽く動かしながら答えた。

 

「良かった…」

 

安心して胸をなでおろしたことり。

 

「心配かけて悪い。」

 

そんなことりに対しそう言った優だが、ことりは首を横に振って話を続ける。

 

「ううん。ねぇ、最近優くんずっと戦ってるし、無理しすぎてるんじゃ…?」

 

「……そんなことねぇよ。」

 

優にも思うところがあるのか、少し返事に間が空いたがそれを否定する。

 

「むぅ…無理してても、そうとしか答えないでしょ?」

 

しかし、ことりにはそれはお見通しな様で、優に顔を近づけて頬を膨らませながら言った。

 

「なんか、最近似たようなこと何度も聞かれているような気がするな…」

 

優は苦笑し、頭をかきながらそう言った。

 

「それだけ、みんなが心配してるってことだよ。」

 

「悪い…でも…」

 

「分かってるよ。それでも優くんは、戦うんだよね?」

 

「あぁ。最終予選も、それに勝ったら本線も控えているみんなに、できるだけ戦って欲しくないんだ。ことりたちの可愛い顔に、傷がついたらダメだろ?顔だけじゃないけどな。」

 

「かわっ…!?無自覚でこういうこと言うのは、反則だよ…

 

優の言葉を聞き、みるみる顔を赤くしたことりは小さく呟いた。

 

「ん?なんな言ったか?」

 

「ううん。なんでも!優くんは、出会った時から何も変わってないなぁって思っただけ。」

 

「なんだよそれ?」

 

「今は知らなくていいのっ。それより、本当に大丈夫?病院に行った方が…」

 

「大丈夫大丈夫!ほらこの通り元気元気!」

 

そう言いながら、手と足をガシガシ動かす優。

 

「それより、ことり。今何時だ?」

 

「えっと…8時だよ。」

 

「……今、なんて?」

 

「だから、8時だよ。」

 

「8時…?」

 

「うん。」

 

「8時…はっ、早く行かないと!遅刻遅刻!」

 

「あっ!学校!」

 

「忘れてたのかよ!あーもうっ、仕方ない!」

 

『スペシャル召喚 ライドインフィニティ!』

 

「後ろ乗って!」

 

「うん!」

 

優はライドインフィニティを召喚し、ことりにヘルメット を投げ渡した。2人はライドインフィニティに跨り、音ノ木坂学院に向けて発進させた。

 

〜side out〜

 

 

 

 

 

〜side 優〜

 

「想い、ときめき、予感、未来、Melody、不思議、切なさ、勇気、純情、空、気持ち、好き…」

 

放課後になり、部室で海未がノートにまとめながら、昨日みんなで出し合った言葉を言っている。

 

「いろいろ出たなぁ…っていうか蓮、勇気って少年漫画じゃないんだぞ?」

 

「でもさ、想いを伝えるには勇気がいるだろ?」

 

俺の言葉に、そう答えた蓮。

 

「なるほど…お前にしては、まともな考えだな。」

 

「俺にしてはって、なんだよ!」

 

「優、蓮。今はそれより、曲作りでしょ?」

 

「んっ…そうだな。」

 

絵里にそう言われ、俺たちは口を閉じる。

 

「では、他に曲の案などはありますか?」

 

「そうだなぁ…」

 

「やっぱり、甘酸っぱい感じがいいよね!」

 

「あとは、雪が降る中で考えたから、雪が降る冬の日って感じがいいとちゃう?」

 

各々が意見を出していく。

 

「甘酸っぱい感じ…雪が降る冬の日…分かりました。その感じで、出し合った言葉を元に考えてみますね。」

 

「よろしくね、海未ちゃん!」

 

「はい。」

 

残りは普段から作詞している海未に任せることになり、今日は解散となった。

 

「優、少しよろしいですか?」

 

「どうした?」

 

帰り、海未に呼び止められ振り返る。

 

「あの、その…//」

 

少し話すのを躊躇ってか、モジモジとする海未。その顔は、少し赤みを帯びているようにも見える。

 

「この後、空いてますか?」

 

「あっ、あぁ。空いてるけど…」

 

そんな海未の様子に、俺は少し戸惑いながら返した。

 

「でしたら…わっ、私とデートしてください!!」

 

顔を真っ赤にしながら、意を決したようにそう言った海未には悪いが、俺はこんな反応しかできなかった。

 

「えっ…?」

 

 

 

「でっ、では、行きましょうか…」

 

「あっ、あぁ…」

 

という事で、俺と海未は少しどぎまぎしながらデートすることに…っというのはあくまでも建前。海未が突然デート、なんて言った時は驚いたが…

 

『いっ、いや…あの、その…ラブソングを作るのは初めてですし、全員で言葉を出し合いましたが、やっぱりイメージを掴んでおきたいので…』

 

ということらしい。

 

「それで、どういう所に行きたいんだ?」

 

「実は、あんまり決まっていなくて…殿方と2人で出かけることなんてあまりありませんし、普通の恋人がどういう所に行っているのか分からなかったので…」

 

「なるほど…」

 

「優は、茜さんとどういう所に行っていたのですか?」

 

「俺が茜と行ってたところ…」

 

そう聞かれて1番に思いつくのは、スクールアイドルショップ。茜自身、スクールアイドルが大好きだったからよく行ってた。でも、海未と2人で行く場所ではないか…

 

あとは、ハンバーガーショップのワックだったり、ファミレスだったりで適当に話したり…あとは、家でゴロゴロしてたり…あれ?よくよく考えると、俺たちってあんまりデートっぽいことしてなくね?そういえば、あのクリスマスの日が、初めて本当にデートっぽいことしたんだったな…

 

それにしても、どうしよ…海未と行くような場所…あっ、そういえば…

 

 

『へぇ…玲奈ちゃん早速熱々だねぇ。』

 

『優奈?携帯見て何言ってんだ?』

 

『友達の玲奈ちゃんがね、彼氏出来たらしいんだけど、スイーツデート行ってきたんだって。ほら、これその写真。もう、こんなの送りつけてきて自慢かよって感じだよね…』

 

『優奈…もしかして、好きな男でもいるのか…?』

 

『えっ?んー、特に居ないよ。』

 

『そっ、そうか…もし彼氏出来たら、ちゃんとお兄ちゃんに会わせるんだぞ?変な男に捕まらないように気をつけろよ?』

 

『わかってるよ。全く、お兄ちゃんは心配性だな…』

 

 

あの時は優奈が彼氏でも出来たのかと思って気にも止めなかったが、スイーツデートか…海未はスイーツというより和菓子ってイメージではあるけど、意外といいかもな…

 

 

※以上、優の脳内で約2秒間で行われた考えである。

 

 

「よし、海未。偶には、甘い物食べに行くのとか、どうだ?」

 

「はい!いいですね!」

 

会ったことないけど、玲奈ちゃんとその彼氏、ありがとう!

 

〜side out〜

 

 

 

〜side 海未〜

 

デート…私、園田海未は、これまでの16年と少しの人生で、殿方との関わりはほとんどありませんでした。穂乃果やことりも、同じようなものらしいのですが…そんな私にとって、デートというのはもちろん初めてです。

 

そんな初デートの相手は、仮野優。優がμ'sのマネージャーになってから、私はどんどん優が気になり始めました。優と話すと心音が早くなったり、優のことを考えるだけで気持ちが少し高ぶります。最初はほぼ殿方との関わりもなかった私なので、殿方と接するとそうなるのかと考えていました。しかし…

 

 

『海未ちゃん…いやいや、それは、ねぇ…ことりちゃん?』

 

『うん…海未ちゃん、その気持ちには自分で気づかなきゃ!』

 

『そうだよ!それは、海未ちゃんにとって、大切な気持ちだから!』

 

 

穂乃果とことりに聞いたところ、そう言われました。私にとって、大切な気持ち…それは一体なんなんでしょう?

今回のデートは新曲のイメージを掴むためと言いましたが、それと同時に優に対してのこの気持ちが、一体なんなのかというのを考えるためでもあります!

 

それに、最近優がどこか元気がないように見えます。私たちの前では、元気そうに振舞っていますが…これで少しでも元気が出してもらうことができればいいのですが…

 

「いらっしゃいませ!何名様ですか?」

 

そんなこんなで、私たちは最近流行っていると有名なカフェにやって来ました。

 

「2人です。」

 

「では、こちらのお席にどうぞ。」

 

優が答え、店員さんの案内の元、私と優は席に着きます。この店は人気で入店することが困難と聞きましたが、平日ですし今日は何席か空いているようです。ですが、平日でも席が多く埋まっている所を見ると、本当に人気なようですね。

 

「ただいまカップル限定メニューがおすすめです。」

 

私たちを恋人同士だと勘違いしたのか、そう勧める店員さん。そういえば、前にテレビでここのカップル限定メニューを食べれば、永遠に結ばれる方が多いと言っているのを見ましたね…

 

「いや、俺たちこいび…むぐっ!?」

 

「それお願いします!」

 

「かしこまりました。」

 

恋人じゃないと言おうとした優の口を防ぎ、私は限定メニューを注文した。

 

「海未?」

 

「はっ…//すっ、すみません…その、ついどういうものなのか気になって…」

 

「そうか…まぁ、カップル限定って言っても2人分のものってだけだろうし、ちょうどいいんじゃないか?」

 

「すみません…」

 

本当に、何故こんなことを言ったのでしょうか…やはり、慣れていないので少し戸惑っているのでしょうか…?

 

〜side out〜

 

 

 

〜side 優〜

 

「お待たせ致しました。ごゆっくり、お楽しみください。」

 

頼んだカップル限定メニューを、店員さんが運んできてくれたのはいいんだが…

 

「想像よりガッツリカップル向けのやつが来たな…」

 

俺たちの元に運ばれてきたのは、1つの容器に入った大きめの…恐らく2人分のパフェと、同じく2人分の大きめのジュース。ジュースにはご丁寧に、途中ハートを型どりながら交わっている2本のストローが付いている。

 

ここまでならまだ良かった。問題は、パフェやジュースと一緒に運ばれてきた説明書。その説明書には、食べ方について書かれている。

 

『STEP1:ジュースは向かい合って、愛する人と見つめ合いながら飲みましょう。

 

STEP2:パフェはお互いにアーンで食べさせ合いましょう。

 

STEP3:最後にパフェに刺さっているポッキーでポッキーゲーム!』

 

っていうか、こういうのってベタな恋愛映画とかにしかないと思ってたのに、現実でもあるんだな…

 

「まぁ、海未。絶対にこの通りに食べないといけないってわけでもないし、普通に食べてもいいんじゃないか?」

 

「そうで…っ!?」

 

海未は近くの席で同じくカップル限定メニューを頼み、パフェを食べさせ合っているカップルを見て、言いかけてた言葉を飲み込んだ。

 

「いえ、やっぱりせっかくなので、この通りに食べましょう!」

 

「えっ…?」

 

何がせっかくなんだ…?なんか今日の海未、変じゃないか?いつもならこんなこと、『破廉恥ですっ!』とか言うはずなのに…

 

「まぁ、じゃあ海未がそう言うなら…」

 

「っ!」

 

俺の言葉を聞いた海未は、一気に表情を明るくする。

 

「では、まずは飲み物から…」

 

「おっ、おう…」

 

俺と海未はお互いストローを口に咥え、チューとジュースを吸い始める。

 

「「……//」」

 

しかし、俺達は店にいる他の恋人たちのように、キャッキャッと少し恥じらいを見せながらイチャイチャしているのとは違い、もはや恥じらいしかない状態。お互い顔が真っ赤だ。

 

「じゃっ、じゃあ次はパフェを…//」

 

「そっ、そうですね…//」

 

お見合いかっ!

 

俺がパフェを食べるためスプーンに手をかけようとした時、あることに気づく。

 

「あれ?スプーン1つしかない…あっ、なんか書いてる…」

 

その事に気付き、ふと説明書きを見ると、『恋人同士の仲を深めるため、1つのスプーンを使って食べるべし!』と書かれていた。

 

「「……」」

 

「海未、流石にこれは…」

 

「いっ、いえっ大丈夫です!一緒に食べましょう//」

 

何が大丈夫なの…?最早海未もやけくそな感じになっているのか、何を言っているのか本人も理解してないんじゃないか…?

 

「では、行きますよ…」

 

海未はスプーンを手に取り、パフェの生クリームを掬い、俺の顔の前まで持ってくる。この店で、こんなに真剣な顔でこれやってるのも俺たちぐらいだろう…

 

「では…」

 

「あっ、あぁ…」

 

「あっ、あーん…//」

 

「あーん…//」

 

声に出す必要があるのかは知らないが、海未は俺に生クリームを食べさせた。

 

「どう、ですか…?」

 

「うん、美味い…//」

 

そう言った俺だが、恥ずかしすぎてなのか、オーバーロード化の影響なのか…いや、恐らく両方の影響で、味なんて分からなかった。

 

「じゃあ、次は俺が海未に食べさせるのか…?」

 

「おっ、お願いします…//」

 

俺は海未からスプーンを受け取り、同じく生クリームを掬い取る。

 

「じゃあ…」

 

考えるな…考えるな…間接キスということは、今は考えなくていい…

 

「あーん…//」

 

「あーん…//(はっ…!これはまさか、優との間接…キ、ス…?)」

 

 

ボンッ!

 

 

俺が海未に食べさせた瞬間、海未の顔が真っ赤になり、ボンッと大きな音を立てて頭から湯気を出した(ように見える)。

 

「うぅ…やっぱり、恥ずかし、すぎますぅぅ!」

 

「えっ、ちょっ、海未!?はやっ!?」

 

恥ずかしさの頂点に達した海未は、俺からスプーンを取り、目にも止まらぬ速さでパフェを完食した。

 

「ははは…」

 

俺は苦笑を浮かべながら、残ったポッキーをポリポリ食べていた。まぁ、この状態じゃポッキーゲームなんて出来ないだろうしな…でも、恥ずかしがり屋の海未がこんなことしようとするなんて、ちょっと驚いたな…

 

 

 

「ありがとうございました〜。」

 

俺は会計を済ませて、海未と店を出た。

 

「すみません…あんなことになってしまった上に、お金まで…」

 

「気にしなくていい。でも、海未があんなことしようって言うなんて意外だったよ。なんかあったのか?」

 

「自分でも、よく分からないんです…」

 

「そうか…」

 

「(本当に、私はどうしてしまったのでしょう…今も、優の隣を歩いているだけで、鼓動が早くなってしまいます…それに、心做しか顔が熱い…//)きゃっ…」

 

「おっとと…大丈夫か?」

 

地面に落ちていた小石に躓いた海未を、俺は手を握って支える。

 

「はっ、はい…//すみません…(うぅ…優の顔が、近い…//)」

 

本当、今日の海未どっか変だな…

 

「(このままじゃ、照れてばかりになってしまいます…話題を変えないと…あっ、そうだ!)」

 

すると、さっきまで真っ赤だった海未だが、突然真剣な顔付きになった。

 

「海未?」

 

「そういえば、今朝前に会ったクロッカーという財団Xの幹部が、私に会いに来たんです。」

 

「えっ!?何かされたのか!?」

 

「それが…少し動きを封じられましたが、特に何もせずに帰っていってしまったんです…」

 

「そうか…何もされてないなら、とりあえずはよかった…」

 

それにしても、何が目的で…でも、財団Xの狙いはμ‘sだし、やっぱり海未本人が狙いか…

 

「あら、こないだの…」

 

その時、誰かに声をかけられたので、俺たちの話は一旦途切れる。俺たちが声の聞こえた方に振り返ると、そこにいたのはこの前俺と海未が一緒にいた時、俺とぶつかった超美人なお姉さんだ。

 

「あぁ、こんにちは。」

 

「こんにちは。ちょうど良かったです。挨拶しておきたかったので。」

 

「挨拶…?」

 

女性の言葉を疑問に思った俺。すると、女性は再び言葉を発し、少し不敵な笑みを浮かべた。

 

「ふふふっ…これから長い付き合いになると思うので、仮野優さん。」

 

「なんで俺の名前を…?それに、長い付き合いって?」

 

「あぁ、その前に自己紹介と行きましょうか。私の名前は、ガリュサ。財団Xの幹部で、あなた方がデビュラーと呼ぶ存在です。」

 

「っ!?」

 

その瞬間、俺も海未も一気に警戒心を持つ。

 

「まあまあ、そんな怖い顔をしなくてもいいじゃない。別に、今日は戦いに来た訳ではないわ。ただ、伝えておきたくて。」

 

「伝える?」

 

「私はあなたの全てを知っている。あなた自身も、知らないようなこともね。」

 

「どういう意味だ?」

 

「フフフ…」

 

「っ!?いつの間に!?」

 

不敵な笑みを浮かべたガリュサは、目で追えない速さで海未の目の前に移動してきた。

 

「きゃっ!」

 

「海未!」

 

そして、海未の頭に触れた。

 

「ふんふんふん…なるほどね。」

 

「てめぇ…海未から離れろ!」

 

俺がガリュサに殴りかかると、それを避けガリュサは海未から離れた。

 

「海未、大丈夫か!?」

 

「はい。特に変わったことは、ありません…」

 

「フフフ…そんなにカッカしなくてもいいじゃない。」

 

「巫山戯んな!海未に何しやがった!」

 

「それは今から分かるわ。園田海未さん。」

 

「はっ、はい…?」

 

「あなたの今日の朝食は、白米、味噌汁、鯖の塩焼き、納豆、小松菜の胡麻和え。それから、飲み物に緑茶と言った、まさに和食の朝食だったわね?」

 

は?突然何の話だ…

 

「そうなのか?」

 

「はっ、はい。何一つ間違えありません。」

 

「それから、今朝高校に向かっている途中財団Xに遭遇したり、財布を拾って交番に届けていたりして、少し遅刻しそうになって慌てたわね?」

 

「そうですけど、何故それを…?」

 

「まさかあんた、海未のストーカーか?」

 

「フフッ、まさか…気づかない?」

 

「…?もしかして、お前の能力って…!?」

 

「その通りよ。私の能力は、人…というよりかは、生き物の記憶を覗いたり、少し操ったりできる能力よ。」

 

また厄介な能力だな…あれ、でもこれって…

 

「これで分かったでしょ?私があなたの全てを知っているってことが。」

 

 

『あっ、頭になにかついてますよ。』

 

 

「そうか…あの時も、俺に何かついていたわけじゃなく…」

 

「その通り。あなたの記憶を覗くためよ。あなた、面白い過去を持つのね。フフッ、あの子が興味を持っていたのも分かるわ。」

 

「あの子…?どういうことだ。俺の過去について、何を知ってる…?」

 

「だから言ったでしょ。全部よ。やっぱり気になるのね?でもいいの?私がここで話しちゃったら、困るのはあなたよね?」

 

「くっ…」

 

俺はガリュサの言葉を聞き、後ろに海未がいることを再確認する。すると、ガリュサはコツコツと、俺にゆっくり近づいてくる。そして、俺の頭部をコツンと少し触った。

 

「何をした?また何かの記憶でも覗…っ!?」

 

その時、俺の脳内に『明後日の午後6時、羽田空港で待ってるわ。誰にも内緒のデートと行きましょ♪』という言葉が浮かんだ。

 

「そういうこと。じゃあね。」

 

そう言って、ガリュサは去っていった。まさか、こんな能力まであるのかよ…

 

「優、さっきのがガリュサという女性が言った言葉、どういう意味ですか?」

 

「……何の話だ?」

 

もちろん、海未が何を聞いてきているのかは分かった。だが、とぼけたふりをして聞き返してしまう。こういうとこは、俺の悪い癖だということを自覚している。

 

「優の過去の話です。」

 

「別に、大したことなんてないよ。」

 

まぁ、俺自身も知らないこともあるし…

 

「っ!?」

 

その時、俺の脳内に、言葉では言い表せられないほどの嫌な気配を感じとった。

 

「優?」

 

「この感じ…まさかグリードか…!?海未、多分怪人が現れた!」

 

俺の脳内には、グリードが現れた気配が、なんとも気持ち嫌な感じで浮かんだのだ。

 

「行きましょう!」

 

俺と海未は、グリードが現れたであろう場所に向かって走り出した。

 

それにしても、何でグリードの居場所が頭に浮かんだんだ…?もしかして、またさっきのガリュサの能力かなにかなのか…?

 

〜side out〜

 

 

 

〜三人称視点〜

 

「ごめんことりちゃん!今日お店の手伝い頼まれてて、先帰るね!」

 

「あっ、そうなんだ…分かった。頑張ってね、穂乃果ちゃん!」

 

時は少し遡り、海未が優とデート(仮)に向かった頃、穂乃果と帰ろうと思っていたことりだったが、穂乃果は家の店の手伝いがあるそうで先に帰って行った。

 

「あっ、そうだ。ちょうどいい機会だし、話してみようかな…絵里ちゃん!」

 

穂乃果と別れたことりは、にこ、希と共に帰ろうとしていた絵里に話しかける。

 

「ことり?どうしたの?」

 

「ちょっと、話があって…一緒に、帰れないかな?」

 

「……希、にこ。ごめん。今日は2人で帰ってもらってもいい?」

 

ことりの表情を見て、何かを察した絵里は希とにこにそう言った。

 

「絵里?」

 

「ごめん。」

 

「じゃあにこっち、ウチらはパフェでも食べて帰ろか。次は絵里ちもやで。」

 

そう言って、希はその場から去っていった。

 

「うん。ありがとう。」

 

「あっ、ちょっ、希!」

 

にこも慌てて希を追いかけて行った。

 

「ごめんね。急に。」

 

「大丈夫よ。優のこと、よね?」

 

「うん。絵里ちゃんも、知ってるんだよね?」

 

「えぇ。知ってるわ。」

 

明確に何を知っているのかと聞かれた訳では無いが、絵里の中で心当たりは充分にあるようだ。

 

「ちょうど良かったわ。ことりがあの事を知ってるのは聞いていたけど、詳しく話すタイミングがなかったから、話したいと思っていたのよ。」

 

「µ’sの中では、私たち2人だけなんだよね?知ってるの。」

 

「そうみたいね。まぁ、話が話だけに、仕方ないといえばそうなんだけどね。立ち話もなんだし、ワックにでもよりましょうか?」

 

 

 

絵里の提案で、毎度おなじみのハンバーガー店、ワクドナルドまでやってきた2人。夕飯前ということもあり、2人とも頼んだのは飲み物だけ。

 

「単刀直入に、聞くね…絵里ちゃんは、優くんが1度死んでるって聞いてどう思った?」

 

「そうね…もちろん、最初は驚いてわ。でも、だからと言って優に接する態度が変わるかって言われたら、何も変わらない…いえ、何も変えないようにしないとね。じゃないと、優が感じる負い目が増えちゃうから…」

 

「けど、私ちょっと不思議なんだ。」

 

「不思議?」

 

「優くんって、なんであそこまで負い目みたいなのを、感じてるんだろって…もし、1度死んで蘇ったからって理由だけなら、あそこまで感じてる必要ないと思うし、なんなら喜ぶ人だっていると思う。だから、他に何か理由があると思うの…」

 

「……実は、私も少し考えてたの。確かに、優は転生してから茜の事だったり、色んなことがあって仮面ライダーとしての重みを感じたり、負い目を感じるのも分からなくはないわ。でも、ことりの言う通り、感じすぎているとも思う。もしかしたら、優が転生してくる前に、何かあったのかもしれないわね…」

 

「優くんが、転生してくる前…」

 

「えぇ。もしそうなら、優自身もその事を知らないのかもしれない。」

 

「あっ…!そっか。優くんは、高校生になる前までの記憶が無いって言ってた…ねぇ、絵里ちゃん。もしも、優くんにそんな過去があったとして、それを思い出したらどうなると思う…?」

 

「……優の過去がどんなものかにもよるけど、仮面ライダーとしての責任を人一倍感じて、正義心が強い優のことだし…下手したら、優自信が…壊れるかもしれないわね。」

 

「壊れる…」

 

「あくまで可能性の1つ。でも、嫌な可能性が実現することだってあるかもしれないから、頭にその事を留めておくのも必要かもしれないわね…」

 

「うん…」

 

その時、ワックから少し離れたところから、爆発音が聞こえた。

 

「っ!?絵里ちゃん!」

 

「えぇ、近いわね…行きましょう!」

 

2人は飲み終わった紙コップを捨て、ワックから出ていった。

 

 

ワックから走って20秒程度で、2人は現場に着いた。

 

「殺れ!屑ヤミー。人間共を襲って、オーズを誘き寄せろ!」

 

緑色のグリードと呼ばれる怪人、ウヴァが屑ヤミーを従え、人間を襲っている。

 

「絵里ちゃん、変身を…きゃっ!?」

 

ことりと絵里が変身しようとした時、屑ヤミーが2人に襲いかかる。なんとか避けた2人だが、その拍子に転んでしまう。そんな2人を、4体の屑ヤミーが取り囲む。

 

「絵里ちゃん…」

 

「ことり…」

 

2人は少し目に涙を貯め、お互い手を握り合う。そして、屑ヤミーが2人に襲いかかろうとした時…

 

『スキャニングチャージ!』

 

「セイヤーー!!」

 

4体の屑ヤミーに斬れ跡が3本入り、倒された。

 

「優、くん…?」

 

太陽の光に照らされあまりはっきりとは見えないが、ことりの目線の先には仮面ライダーオーズのタカヘッドが…優が過去オーズに変身しているのを目撃した2人は、その戦士は優だと思ったが、

 

「大丈夫?」

 

その戦士から聞こえてきた声は、別人のものだった。

 

「えっ、えぇ…あなたは?」

 

「俺は火野映司。オーズ、仮面ライダーオーズだ。」

 

 




次回の、μ‘sと仮面ライダーの物語!

出現したヤミーと戦う優の前に、新たなレジェンドライダーが…更に謎のヤミーが出現するが、そのヤミーは何故か優を助けるのであった…

次回、『109話 恋心と紫のメダルと欲望の暴走』





どうでしたか?今回は優と海未ちゃんのデート回でしたが、まさかあんな風になるとは(笑)
そして次回は、あのレジェンドライダーたちが登場します!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。