ということで、初の○.5話を書くことになりました!今回の話は拓真の過去編の、別視点での話となっております。多分、これを読んだら『120話』の見方も変わるかと思います。
そして、お気に入り登録してくださった方が115人になりました!本当にありがとうございます!
では120.5話、スタートです!
〜side みのり〜
私の名前は成瀬みのり、普通の中学3年生。私には、1年生の頃から好きな男の子がいる。彼の名前は橋本拓真くん、入学した時偶然後ろの席だった男の子。彼は人付き合いが苦手なのかずっと1人でいたけど、話しかけてみるととても素敵な人だった。
彼は何気ない気遣いができる優しさを持ち、彼自身人付き合いが苦手だと言うのに話が面白い。そして何より、彼といる時間が私の中で1番楽しくて、落ち着く時間。そんな彼に、私は惹かれていった。
でも、そんな彼と1年2年と一緒だったクラスが、3年から離れることになってしまうことが今日の始業式で分かってしまった。
はぁ…今年も同じクラスが良かったなぁ…
内心落ち込みながら、私は少ない荷物を学生鞄に詰めていく。全て片付け終わり、帰り支度を済ませた私は教室から出ていった。
「ねぇ、みのり。ちょっと良い?」
そんな私に話しかけてきたのは、福本麻耶。確か今年は橋本くんと同じクラスで、この学年の女子では一番カーストが高い女の子。私とはそんなに話したことなかったけど、何の用だろう?そう疑問に思いながら、私は彼女に着いていく。
「それで、話ってなに?」
彼女に連れてこられた空き教室で、私はそう尋ねた。
「あんた、2年の終わり新一に告られたって聞いたけど、ほんと?」
「新一…?」
彼女に言われた名前を自分の記憶の中から探り返していく。新一…あっ、金井くんのことか!確かに、彼女に言われた通り2年の終わり、私は彼に告白された。
「うん、そうだけど…」
「チッ…」
彼女の問いに答えると、舌打ちが聞こえた。
「なんであんたなんかを…」
彼女は小さく言葉を零すと、
パシンッ
と乾いた音が鳴り響き、私の頬に痛みが走る。
「えっ…?」
私は声を漏らすとようやく、自分が彼女に叩かれたことに気づいた。
「私、昔から新一のこと好きなんだよねぇ…なのに、なんでぱっとしない地味なあんたなんかが告られるのよ!」
「そんなの私に言われたって…」
「うるさい!」
福本さんはそう叫び、今度は私のお腹を殴ってきた。
「うぅ…」
「私に逆らうのは許されない!それがこの学年…いや、この学校の生徒のルールよ!」
なんと自分勝手なことだろうか…しかし、普段同じ学年の女子を何人も引き連れている彼女に、私一人如きじゃ逆らえないことは目に見えている。
「まっ、今日はこのぐらいでいいわ。これからあんたは、私のサンドバッグ決定よ。覚悟してなさい。あっ、そうだ。」
空き教室から出ていこうとした福本さんは、何かを思い出して立ち止まる。
「あんたって、橋本のこと好きなの?」
「あなたに言う必要ないでしょ…きゃっ!?」
再び私は頬を叩かれる。
「まだ分かってないようね。あんたが私に逆らうことは許されないのよ。」
「っ…好き、です…」
「そう…」
私の答えを聞いて、福本さんは不敵な笑みを浮かべる。
「お願い!橋本くんには酷いことしないで!」
「別に橋本に恨みはないから、あいつには何もしないわよ、直接はね。」
そう言い残し、福本さんは教室から出ていった。
翌日から、私は福本さんから虐めを受けるようになった。そしてもう1つ、橋本くんとの会話がなくなってしまった。何故か私と橋本くんが付き合っている、という噂が流れ出したからだ。恐らく、福本さんが流した噂だろう。直接何かしない、というのはこういうことか…
それから私は、福本さんや福本さんと一緒にいる女の子たちから、虐められる日々を送った。単純に暴力を受けたり、水をかけられたり、酷い時は上靴に画鋲が入っていた時もあった。あの時は事前に気づけて本当によかった…
先生は勘づいていたようだけど、虐めをしているのが社長令嬢の福本さんなので何も言わない、見て見ぬふりをしている。
そして時は流れ、待ちに待った夏休みを迎えた。ようやく彼女たちに虐められずに済む日々がやってきた。そう思っていた私は、運悪く初日から福本さんに遭遇した。
「あんた、ほんと運悪いね。夏休み初日から私に遭遇するなんて…さっ!」
そう言って、彼女は私のお腹を殴ってきた。その衝撃で、私は地面に踞る。
「まっ、私としては良いストレス発散だから嬉しいけどね。ププッ…」
それから私は、普段通り目立たないような所を殴られたり、叩かれたりした。
「ふぅ…まっ、今日はこのぐらいでいっか…じゃ、また会ったらよろしくね、サンドバッグちゃん。ふんっ!」
最後に福本さんが私の腕を蹴り、去っていった。
「いたたた…はぁ…夏休み初日から、本当についてないな…」
私は福本さんに連れてこられた人気のないコンビニの裏道から出て、蹴られた腕を押えながら歩いていた。そんな時、偶然通りかかった路地裏から、ある人が出てきた。
「あっ…橋本、くん…」
私の想い人、橋本拓真くんだ。
「成瀬さん…」
約3ヶ月ぶりに彼と話すことに心躍る私だったが、彼の顔の傷を見て驚いて声をかける。
「ってどうしたの!?凄い怪我してるよ?」
橋本くんの口元に傷があり、そこから血が出ていた。更に腕にも傷がある。
「いっ、いや…これは…」
何故か言葉を詰まらして答えない橋本くんが、ふと視線を下げると私の腕に目がいった。
「って成瀬さんも腕に痣あるよ!?」
「あっ…うっ、ううん。大丈夫大丈夫、さっきちょっと転んだだけだよ。」
私はつい嘘をついてしまった。本当のことを話すと、優しい橋本くんは私を助けようとして、彼まで酷い目に遭ってしまいそうだったから…
「でも早く手当しないと!あっ、家すぐそこだから…」
えっ!?橋本くんの家、行っていいの!?
「えっ、でも…」
ずっと行きたかった彼の家への誘いを受けた私は、驚きのあまり言葉が出てこなかった。そんな私を見た彼は、表情を暗くして言う。
「あっ、ごめん。嫌だよね、俺の家なんか来るの…俺のせいで流れた変な噂で、成瀬さんも嫌な思いしてるだろうし…」
私の曖昧な態度が、橋本くんにあらぬ誤解をさせてしまった。
「そっ、そんなことないよ!」
「えっ…?」
「その…私、橋本くんと一緒にいるの全然嫌じゃないよ!橋本くんと一緒に話してるの凄い楽しいし、最近話せてなくて凄い寂しいんだ…」
弁解しようとつい本音を言ってしまった私は、顔を赤くする。
「俺も!その、最近話せてなくて凄い寂しかった…」
「っ…」
嬉しい…橋本くんも、そう思ってくれてたんだ…
「あっ、そうだった!早く手当しないと、とりあえず家来て。」
「うっ、うん、ありがとう…」
そう答えると、私は彼の手に引っ張られて行った。
「ここが、橋本くんの家?」
彼がある一軒家の前で足を止めたので、私は彼に尋ねた。
「うん、そうだよ。」
彼がそう答えると、私は自分の手に温もりがあるのに気づき、彼に手を握られっぱなしだったことを思い出した。
「あっ、その…」
「ん?どうかした?」
「いや、その…手…」
「手?」
彼も忘れていたのか、私に言われて視線を手に移した。
「あっ!ごっ、ごめん!ほんとごめん!」
彼は慌てて私の手を離した。
「だっ、大丈夫…恥ずかしかっただけで、嫌じゃないよ…」
嫌なわけがない。むしろ、もっと握っていたかった。
私のより一回り程大きい手の温もりを思い出し、名残惜しく感じていた。
「えっ?そっ、そう…?あっ、その、入る…?」
私の言葉を聞いて少し戸惑った彼は、家のドアを開けて家に入るか聞いてきた。
「そっ、そうだね…」
「よし、終わり。これで後は、安静にしてればすぐ痕も消えると思うよ。」
彼の家に招き入れられた私は、彼から腕の治療を施された。
「ありがとう…あっ、橋本くんも治療しないと!橋本くんの方が、酷そうだし…」
「俺はいいよ。こんなの寝たらすぐ治る。」
むぅ…橋本くんは優しいけど、自分のことに関しては少し無関心なところがあるんだよなぁ…
「駄目だよ!私がするから、じっとしてて。」
彼を無理やり座らせた私は、まず顔の傷の手当てをして、次に腕の手当てをした。
「はい、終わったよ。大丈夫?キツくない?」
私は腕に巻き終えた包帯の巻き具合を彼に尋ねた。
「うん、大丈夫。ありがと。」
「ううん、こちらこそありがとう。」
「「……」」
お互いにお礼を言い合うと、さっきまでの色々と恥ずかしい会話を思い出し、沈黙が流れる。
「あっ、あの…」
沈黙に耐えきれなくなった私は、考え無しに声をかけてしまった。
「へっ?」
「いや、その…そろそろ、帰ろうかな…」
なんでそんなこと言っちゃったの私!?せっかく橋本くんの家に来れたのに…
「あっ、そうだね…」
「今日はありがとね…その、出来たらまた、こうしてお話ししたいな…」
玄関まで見送ってもらった私は、恥ずかしがりながらも今の私の気持ちを伝えた。
「っ…!俺もっ!俺も、また成瀬さんと話したい!」
「っ…良かった…」
彼も同じ気持ちだったことが分かり、私はつい安堵の声を漏らした。
「えっ?」
「私だけがそう思ってるのかなって、ちょっと心配してたから…じゃあ、また今度ね。」
私は別れの言葉を告げて、彼の家を出ていった。
はぁ…久しぶりに橋本くんと話せて、楽しかったなぁ…!今日ばかりは、福本さんに遭遇して良かった、かな…
〜side out〜
〜side 麻耶〜
いや、夏休み初日から成瀬を殴れて、良い
私、福本麻耶は同級生の成瀬みのりと偶然会い、ストレス発散をしてからその辺をぶらついていた。
「ん…?成瀬?」
すると、さっき会った成瀬がある家から出てきて、上機嫌にスキップして行くのを目撃した。
「ここって…?」
成瀬が出てきた家の表札を見ると…
『橋本』
へぇ…あいつ、橋本と仲良くしてんだ…私の新一を奪ったくせに、ウザイなぁ…これは、もっとお灸を据えてあげないとね…!
〜side out〜
〜side みのり〜
「あんた、橋本と結構仲良くやってんの?」
私は夏休みも終盤に差し掛かった登校日の帰り際、いつもの空き教室に呼び出され、福本さんからそう聞かれた。
「えっ…?」
「私見たんだよねぇ…夏休み初日、橋本の家から笑顔でスキップしながら出ていくの。」
しまった…
福本さんの言葉を聞いた瞬間、私の頭は真っ白になり、サーっと血の気が引いた。
「なんで…私の新一を奪ったあんたの恋が成就すんのよ!ふざけんじゃないわよ…」
「そんな!私は金井くんを奪ったつもりもないし、橋本くんとも付き合ってるって訳じゃなくて…」
「うるさい!とにかく、あんたはこれから橋本と会話するな!」
「嫌ッムグッ…!?」
私が反対しようとした時、福本さんに口を塞がれた。
「あんた本当にバカねぇ!私に対する答えは、はいしかないんだよ!あんた、これからは橋本と関わるんじゃないわよ!もし破ったら、橋本にも危害が及ぶと思いなさい!」
そう言って、福本さんは空き教室から出ていった。
「そんな…うぅ…橋本、くん…」
一人残された私は、その場に崩れ落ちた。
そして2学期初日、下駄箱で靴を履き替えていると、
「あっ…」
私は橋本くんが来たのに気づいた。
「成瀬さん、おはよう!」
橋本くんは笑顔で挨拶してくれた。嬉しい、今すぐにでも挨拶を返したい。でも…
『あんた、これからは橋本と関わるんじゃないわよ!もし破ったら、橋本にも危害が及ぶと思いなさい!』
「っ…うっ、うん…おはよう…じゃあね。」
私は逃げるように教室へ上がって行った。
ごめんね…本当に、ごめんね…
そして、再び橋本くんを避けながら、福本さんに虐められる日々が始まってしまった…
〜side out〜
〜side 麻耶〜
ほんと、橋本と話せなくなってからの成瀬最高!めっちゃ落ち込んでるし、私に歯向かうとどうなるか、ようやく理解してきた頃かしら?
でも、まだ足りないわね…新一を奪ったあいつを、もっとどん底に落としてやらないと気が済まないわ!となると、やっぱり利用できるのはあいつが好きな橋本よね…
ある土曜日の午前中、そんな考え事をしながら歩いていた私は、通りかかった公園のベンチに件の橋本が座っているのを目撃した。
あっ…良い事思いついた!私って天才じゃない?
「あれ?橋本じゃーん!」
私はそれを実行に移すため、橋本に声をかけた。
「あぁ、福本か…」
私に気づいた橋本は、興味なさげにそう言った。
この私に声をかけてもらったのに、その反応…ムカつく…まっ、一応この作戦はこいつも酷い目に遭うだろうし、これぐらい許してあげる。
「偶然だね、隣良い?」
すると橋本は、ベンチの隣を開けたので私はそこに座った。
「俺に話しかけてくるなんて珍しいな、何の用だ?」
「んー、特に用っていう用もないんだけどね…」
変に疑われないように、まずはこう言っとこ…
「用ないのかよ…」
「あっ、そうだ!前から聞いてみたいことあったの忘れてた!ねぇねぇ、橋本ってみのりと付き合ってる噂あったよね?あれほんと?」
私が成瀬と仲良いという風に思わせるために、呼び方もみのりに変えてそう聞いた。
「いや、あれはデマだ。俺の片想い、成瀬さんは俺に恋愛感情なんて抱いてないよ。」
やっぱり、こいつも成瀬のこと好きなのね…
「ふーん…じゃあ、橋本はみのりのこと好きなんだ!」
「まぁ…」
「告らないの?」
「えぇ!?いや、俺なんかが告っても…」
「そう?みのりもあんたに気がありそうだけど。」
「ないない!俺なんかを、成瀬さんが好きになるなんて…」
くっ、じれったいなぁ…
中々良い流れに持っていけず、私は少し苛立っていた。
「でもさ、ちょっと可能性あるなら、告ってみるのもいいんじゃない?あたしらもうすぐ卒業だしさ、どの道別れるなら想いを伝えるのもありだと思うけど?それで付き合えたらラッキーみたいな!そんぐらい楽に考えた方が、楽しいんじゃない?」
我ながら良い言い回し。これなら橋本も…
「なるほど…確かに卒業したら離れ離れになるしな…告白してみるのも、ありか…なんかありがとな。福本のおかげで、ちょっと悩みが軽くなった気がする。」
よし、乗った!
「それなら良かったよ!あっ、でも振られたからってあたしのせいにしないでよ?」
「あぁ、それはもちろん。」
「じゃ、あたしはそろそろ行くわ!」
そう言って、私は橋本と別れて走っていった。
よし、これで作戦の第一段階クリアね!
それから少し経ち、12月の初め…私は橋本に呼び出され、成瀬に告白する決心をしたと聞いた。そして、橋本は2学期の終業式の後、成瀬を体育館裏まで呼んで欲しいと頼んできた。
これで作戦は上手く行きそうね!今から楽しみ!成瀬の絶望に落ちる顔を見れるのが…
〜side out〜
〜side みのり〜
2学期も残り僅かとなった今日、私は福本さんから空き教室に呼び出された。いつも通り虐められると思っていたが、今日は私に話があるだけだそうだ。
「私さ、面白いこと聞いたんだよねぇ…橋本、本当にあんたのこと好きなんだって。」
「えっ…?そんな、嘘だよ…まさか、橋本くんが…」
「嘘じゃない、私直接聞いたから。」
えっ…?本当に…?
私は嬉しさのあまり頭が真っ白になり、思わず口を手で塞ぐ。
「でさ、橋本があんたに告りたいから2学期の終業式の後、体育館裏に来て欲しいんだってさ。良かったね、念願の橋本と付き合えることになって!」
「えっ…?行っていいの?」
「もちろん!私さ、ちょっと反省したんだよね…これまで、あんたに酷いことしすぎたなって…だから、橋本と付き合って幸せになってきな!」
嘘、あの福本さんが虐めをやめる、幸せになれって言ってきた…?……やったぁっ!ようやく、虐めが終わる…それに、橋本くんと付き合えるなんて…
「福本さん、ありが「なわけねーだろ!」えっ…?」
福本さんにお礼を言いかけた時、それを遮って彼女がいつものような下卑た笑みを浮かべて言った。
「なに自惚れてんの!私から新一を奪ったあんたを、許すわけねぇじゃん!あんたにはこれから、もっと絶望してもらうよ!」
そんな…やっぱり、福本さんが優しくなるなんてこと、あるわけなかった…
「あんた、橋本の告白を断りな!それも、あいつを罵倒して嫌われてきなよ!」
「そんな…絶対嫌だよ!」
「あんた、本当に学習能力ないねぇ…!答えは『はい』しかないんだよ!もし断ったら、橋本にも痛い目見てもらうよ。精神的にだけじゃなく、肉体的にもね!」
「っ…!?……分かり、ました…」
「ププッ…じゃ、終業式の日、楽しみにしてるから。」
そう言って、福本さんは教室から出ていった。
そんな…せっかく橋本くんに告白してもらうのに、こんなのって…
「こんなのって…ないよ…」
私は1人、座り込んで泣いた。どれぐらい泣いていたのか分からないけど、気づいたら外は暗くなっていた。
そして、終業式の日がやってきてしまった…
「あの、橋本くん…」
体育館裏に着いた私は、橋本くんに呼びかける。橋本くんは気づいてないみたいだけど、橋本くんの後ろの物陰から福本さんがニヤニヤしながら見ている。やっぱり、断らないとダメなの…?
「成瀬さん、突然呼び出してごめん。あと、来てくれてありがとう。」
ダメだよ、橋本くん…今から私は、あなたに酷いこと言うのに…そんな私にお礼なんて、言っちゃダメだよ…
「ううん…それで、話って…?」
本当なら夢にまで見た話を聞くのに、こんなにも聞きたくないなんて…そう思いながら、橋本くんに尋ねた。
「あの…成瀬さ…」
私の名前を呼びかけた橋本くんは、何故か止めた。
「みのり!」
私は突然の名前呼びに、目を見開いて驚く。念願の、橋本くんからの名前呼びに…
「1年生の時からずっと1人だった俺のことを、たった1人、あなただけが気にかけてくれて、話しかけてくれた。その事が本当に嬉しくて、俺の心の支えでした。」
「あなたの事が、好きです!!」
っ……嬉しい、涙が零れそうなぐらい…本当なら、すぐにでも私もと答えたいのに…
私はしばらく、零れそうな涙を堪え、俯いていた。それを不安げに橋本くんが見ているのが、何となくわかる…そして、私は意を決して口を開いた。
「あーあ…最悪…」
「えっ…?」
自分でも、驚くぐらい低い声が出た。橋本くんも、それに驚いている。
「ほんと最悪…あんたなんかに、告白されるなんて…」
最悪なわけない、本当は最高なのに…
「大体、惨めなあんたに、嫌々接してあげていたのを…真に受けて好きになるとか、ほんとダサい…」
嫌々なわけがない!橋本くんと過ごす日々は、私の15年の人生の中で一番楽しかった時間なのに…
「っていうか、名前で呼び捨てって…あんたなんかに名前呼びされるとか、ほんと気持ち、悪い…」
気持ち悪くなんかない!ずっと、呼んで欲しかった名前なのに…
もう嫌だよ…こんなの、言いたくないよ…
「あんたなんかと、二度とっ…二度とっ、話したく、ない!!」
違う!これからも、もっともっと話したい!話したいのに…
そして私は、一番言ってはいけない言葉を口にする。
「大っ、きらい…」
大嫌いなわけ、ないのに…もう、嫌だよ…
「っく…うぅ…ごめん、なさい…さよなら…」
橋本くんは涙を流しながら、走り去ってしまった。
橋本くん、本当にごめんなさい…どれだけ謝っても許して貰えないと思うけど、本当にごめんなさい…!!
「あーあっ、ひっどーい!」
わざとらしい、福本さんの声が聞こえる。
「せっかく橋本が告ってくれたのに、あんな酷いこと言うなんて〜!成瀬、最低だねぇ!あっはっはっはっはっ!」
そう言って、福本さんは去っていった。
ポツ…ポツ…ポツ…
それからしばらく、私がその場に座り込んでいると、空からいくつか水滴が落ちてくる。それは次第に激しくなり、土砂降りの雨が降ってきた。
「うぅ…橋本、くん…本当にごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさーーいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
私は今まで経験したことの無い程の涙を流しながら、してもしきれない後悔を胸に、そう叫んだ。
それからしばらくして、私は橋本くんが死んだと聞いた。死因は、トラックに轢かれそうな子供を庇ったからだそうだ。
最後まで、優しい橋本くんだった…それなのに…私は…私は、そんな橋本くんを裏切ってしまった。
橋本くんをもう二度と見ることすら出来ない。もう謝ることだって出来ない。私は、なんてことを言ってしまったのだろうか…
橋本くん、本当に…本当に、ごめんなさい……
いかがでしたでしょうか?拓真の過去の裏では、こういうことが起こっておりました。
僕自身こういう雰囲気の話を書くのも、同じ話を別視点で丸々1話書くのも初めてだったので、この『120話』と『120.5話』は書くのに苦戦し、ちゃんと完成させるのに時間がかかってしまいました…ラブライブ要素も仮面ライダー要素もない話自体初めてでしたからね…
しかし、次回からはμ'sのみんなもちゃんと登場致します!次回も楽しみにして頂けると嬉しいです!お気に入り登録、評価や感想などもよろしくお願いします!では、ここまで読んで頂きありがとうございました!