μ’sと仮面ライダーの物語   作:シーチ

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はい、125話です。

という事で、W編最終話です。

では125話、スタートです!




125話 Wよ永遠に/新たな約束

〜side 優〜

 

ディアーハイパーメカアニマルの案内の元、秀夜と花陽が潜入している財団Xのアジトに到着した俺、ことり、フィリップさん。

 

「ここを通るのか…」

 

俺はディアーハイパーメカアニマルがつついているマンホールを見て、そう呟いた。それからそのマンホールを開け、俺たちは中に入っていった。

 

梯子をつたって15メートルほど地下に潜ると、横幅2メートル程度の道があった。壁の所々に設置されているランタンの灯りを頼りに、俺たちは進んでいく。

 

それからしばらく進んでいくと、古びた鉄のドアがあった。

 

「多分、2人はこの奥に…」

 

俺はドアノブに手をかけ、開けた。

 

「優!」

 

中に入ると、秀夜がそう声をかけてきた。薄暗い部屋の中には、秀夜と花陽の他に財団X特有の白い服を着た男が7人ほど気絶した状態で縛られていた。恐らく、元々アジト内にいた組織の人間だろう。

 

「悪いな、急に呼び出して。」

 

「いや…ほいこれ、頼まれてたUSBメモ…」

 

『ジョーカー!』

 

「あっ、間違えた…」

 

俺はポケットからUSBメモリを取り出したつもりが、フィリップさんから預かった翔太郎さんのジョーカーメモリを取り出してしまった。

 

「何やってんだよ…」

 

これには秀夜も、他のみんなも苦笑していた。俺は恥ずかしさのあまり顔が赤くなりながらも、ジョーカーメモリを再びポケットにしまい別のポケットからUSBメモリを取り出した。

 

「ありがとな。」

 

秀夜はUSBメモリを受け取りながら言った。

 

「で、これは何に使うんだ?」

 

「あそこにでっかい機械があるだろ?あれの内部データを移すためにな。じゃ、早速やってくる。」

 

そう言って、秀夜はデータを移し始めた。それを確認した俺は、ゴソゴソと周りを見回っているフィリップさんに目を移す。

 

「ふむ…優くん、ここにはあの機械とそのノートパソコンしか、手がかりになりそうなものはないようだね。紙媒体の資料なども置いてないようだ。」

 

フィリップさんの言う通り、この部屋には大きな謎の機械が一つとノートパソコンが一つ、それ以外には組織の奴らが飲んだと思われるペットボトルのゴミや缶詰が机に置かれているだけだ。ただ、ここに飲み物や食べ物を食べた痕跡があるということは、今ここで伸びている奴らのような見張りは常に何人かいるようだ。

 

「私たちも隅々まで探してみたけど、大きな機械とノートパソコン以外には、このUSBメモリしかなかったんだ。」

 

秀夜と共にここに侵入していた花陽がそう説明した。

 

「ん?そのUSBメモリは、どこにあったんだ?」

 

「ここのペットボトルとか缶詰のゴミが置いてある机に置いてあったよ。もしかしたら中に何か手がかりになるようなデータが入ってるかもしれないから、優くんに渡しておくね。」

 

「あぁ、ありがとう。」

 

俺は花陽からUSBメモリを受け取った。

 

まあでも、そんな無造作に置いてあったUSBメモリなら、手がかりになりそうなデータは入ってなさそうだよな…それにしろ、なんでこんな所に置いてあったんだ…?

 

 

 

それからしばらくして、データのコピーが終わった。

 

「よし、後はこれとそのノートパソコン、それから花陽が見つけたUSBメモリを持ち帰って、じっくり調べるとするか。それで優、このアジトはどうする?」

 

秀夜はデータを取り込んだUSBメモリと、ノートパソコンを鞄に詰め込みながらそう聞いてきた。

 

「そうだな…このまま抜け出したら、あの機械はここに残ったままになるもんな。あれが何なのかは分からないが、一応データもコピーしたことだし、少なくともあれは壊していった方がいいよな…」

 

「そうだね。そうすれば、場所も特定されているここをアジトとして使うことも、もうないだろうしね。」

 

フィリップさんが俺の意見にそう賛同してくれた。それから秀夜、ことり、花陽もそれでいいと思って頷いた。

 

「よし…ことり、悪いがサバイブであの機械を燃やしてくれないか?幸いここは地下で、この部屋の壁は触った感じ防火壁みたいだ。そのぐらいなら周りに被害はでないだろうから。」

 

「うん、分かった。任せて!」

 

「おっと…その前にこいつらを運び出す準備しとかないとな…」

 

俺は1枚のカードを取り出し、腰についているアタックバックルに入れた。

 

『スペシャルアタック スモール!』

 

俺は財団Xの男たちを全員、手に収まるぐらいのサイズまで小さくした。

 

「ほぅ…そんな事まで出来るんだね。」

 

それを見たフィリップさんは、顎に手を添えて興味深そうに言った。

 

「この人たちは僕が照井竜に引渡しに行ってくるよ。」

 

「すみません。ありがとうございます。」

 

俺は財団Xの男たちをフィリップさんに渡した。

 

「じゃあ、悪い。ことり、頼めるか?」

 

「うん!」

 

そう答えたことりは機械の前に立った。そして、機械の液晶パネルの前に龍騎のデッキを構え、写し出したことにより腰にVバックルが出現した。

 

「変身!」

 

ことりはバックルにデッキを差し込み、仮面ライダー龍騎に変身した。そして、バックルから1枚のカード…サバイブカードを取り出したことによりドラグバイザーがドラグバイザーツバイに変化する。

 

『サバイブ』

 

ドラグバイザーツバイにサバイブカードを差し込み、ことりは仮面ライダー龍騎サバイブに変身した。

 

「みんな、下がってて。」

 

ことりの言葉を聞き、俺たちは機械とは真反対にあるドアの前まで移動する。

 

「よし、じゃあやるね。」

 

そう言って、ことりはドラグバイザーツバイから火の弾を放ち、機械に命中させた。

 

「これでこの機械は直に燃える。それに多少火は室内で広がるだろうから、もうこのアジトは使い物にならないだろう。よし、俺たちも脱出しよう。」

 

こうして、俺たちはアジトから脱出した。

 

 

 

「あっ、おかえりなさい。どうだった?」

 

絵里の病室に戻ってきた俺たちに、姉ちゃんがそう聞いてきた。ちなみに、アジトを出てからフィリップさんは照井さんに財団Xのやつらを引き渡すため、それが終わってから病院に戻ってくるようだ。

 

「あぁ、特に問題はなかったよ。アジトには大きい謎の機械が一つとノートパソコンが一つ、それから謎のUSBメモリが一本あるだけだったよ。一応機械の方は、内部データをUSBメモリにコピーしてから壊しておいた。」

 

「分かった、ありがとね。」

 

俺はUSBメモリ2本とノートパソコンを姉ちゃんに渡した。

 

「それで、薬の方は?」

 

「無事に完成したわ。絵里ちゃんや翔太郎くん、他の毒ガス攻撃を受けた人全員に投与したわ。もうしばらくしたら、みんな目を覚ますはずよ。」

 

「良かった…!これで絵里も、翔太郎さんも元に戻るのか…!」

 

姉ちゃんの言葉を聞き、俺たちは安堵した。それから少しして、落ち着いた俺が病室を見ていると、あることに気づいた。

 

「あれ?そういえば、綾乃さんは?」

 

周りに綾乃さんの姿が見えなかったため、俺は姉ちゃんにそう聞いた。

 

「綾乃は先に帰ったわよ。悪いんだけど、私も一足先に帰るわね。天界で、アジトから回収してきたものの解析をしておきたいから。」

 

「分かった。色々ありがとな、姉ちゃん。」

 

「ううん。じゃあ、また後でね。」

 

そう言って、姉ちゃんも病室から出ていった。こうして今この病室に残っているのは、眠っている絵里以外に俺、秀夜、花陽、ことりとなった。

 

「花陽、ことり。飲み物でも買いに、近くのコンビニ行かないか?」

 

すると、秀夜が突如そんなことを言った。

 

「えっ?あっ、うん。確かに少し喉が乾いたし、行こうかな。」

 

「私も…」

 

それにことりと花陽も着いていくようだ。

 

「優、お前は絵里の様子を見ててくれ。お前と絵里の分も買ってくるから。」

 

「そうか?悪いな。」

 

「いや、じゃあ行ってくる。」

 

秀夜がそう言って、3人共病室から出ていった。

 

秀夜、なんで急にコンビニ行くなんて言い出したんだろう…?よっぽど喉乾いてたのか…?

 

 

秀夜が出ていって1分程経った頃、眠っている絵里の小さな声が聞こえた。

 

「絵里!?」

 

「んっ…?ゆ、う…?」

 

目をゆっくり開いた絵里が、俺を確認してそう声を漏らした。

 

「良かった…」

 

俺は思わずそう呟いた。すると、絵里は起き上がろうと腕に力を入れていた。

 

「大丈夫か?まだ無理しない方が…」

 

「大丈夫よ。もうそんなに辛くないし、力も少しずつ入るようになってる気がするわ。それより、心配かけてごめんなさい。」

 

「何言ってんだ。謝るのは俺の方だ。本当にごめん!守ることが出来なくて…」

 

俺は頭を下げて謝った。

 

「そんな事ないわよ。守ろうとしてくれたじゃない。」

 

「それだけじゃない。約束したのに、ずっと忘れてしまっていたことも…本当にごめん。世界中のどこに居ても、絵里は俺が守る。そのために、俺はもっともっと強くなる。そう、約束したのに…」

 

俺がそう言うと、絵里は目を見開いて驚いていた。

 

「その言葉…もしかして、思い出したの…!?」

 

〜side out〜

 

 

 

 

 

〜side 絵里〜

 

これは今から8年前、私が小学四年生になった頃の話。

 

当時私は小学三年生まで住んでいたロシアを離れ、今も住んでる音ノ木坂学院の近くに引っ越し、少しした頃だった。

 

私は日本に来る時、今までずっと賞がとれずオーディションにも落ちていたバレエを諦める決断をして、日本に来ていたため落ち込んでいた。その上、クォーターの私はこっちでは珍しい金髪だったため、日本の小学校ではいじめっ子の男の子たちに悪口を言われたりしていた。

 

それが辛かった私は、ある日の学校帰り近くの公園で一人泣いていた。その時だ、彼と出会ったのは。

 

「何泣いてんだよ?」

 

「えっ?」

 

蹲って泣いていた私は、突然声が聞こえて顔を上げる。

 

「お前、1人なのか?こんな所で、何泣いてんだよ?」

 

「あなたは…?」

 

声をかけてきた男の子に、私は恐る恐る聞いた。

 

「俺?俺は仮野優!よろしくな!」

 

男の子は、笑顔でそう名乗った。

 

「君は?」

 

「えっ…私は、絢瀬絵里…」

 

「絢瀬絵里…?日本人なのか?金髪だから、てっきり外国の人かと思った…」

 

「わっ、私のおばあ様がロシア人だから…」

 

「へー…」

 

その時、私は学校のいじめっ子と同じように「気持ち悪い」などと言われると覚悟した。

 

「綺麗な髪だな!」

 

「え…?」

 

「それに目も綺麗!」

 

嘘偽りのない笑顔とキラキラした目で、私の髪と目を褒めてきた男の子に私はとても驚いた。

 

「それで、君はなんで泣いていたの?」

 

「それは…」

 

公園のベンチに移動し、私は泣いていた理由を話した。

 

「なんだよそいつら!こんな綺麗な髪なのに、気持ち悪いとか言うなんて…!」

 

話を聞いた彼は、拳を握って怒ってそう言った。

 

「そんなヤツらの言うことなんて、気にしない方がいいよ。絵里の髪も、目も、とっても綺麗なんだから!」

 

今まであまり良い風に言われなかった髪色や目の色をとても褒められ、私は照れて顔を真っ赤にしてしまう。

 

「絵里はこの近くに住んでるの?」

 

「うん…前まではおばあ様が住んでるロシアに住んでたんだけど、小学四年生になるこの4月から近くの小学校に転校したの。でも、私がクォーターだからってみんな怖がって、友達なんて一人もいないけどね…」

 

「……だったらさ、俺と友達になろうよ!」

 

私の言葉を聞いて少し考えた男の子は、そう提案してきた。

 

「えっ…?」

 

「俺と友達になれば、絵里は一人じゃないだろ?俺は学校も違うし住んでるところもちょっと遠いけどさ、どんなに離れていても俺たちは友達!それなら、絵里に友達が一人もいないなんてこと、なくなるだろ?」

 

私は彼の優しい言葉を聞いて、涙が溢れそうになるのを堪えて答える。

 

「うん!ありがとう、優!」

 

私がそう答えると、優は思いっきり笑った。それに釣られて、私も笑う。

 

こうして、私に日本で初めての友達が出来た。

 

「そういえば、優は遠くに住んでるって言ってたけど、今日はなんでここに来たの?」

 

私はさっきの会話から、ふと気になったことを聞いた。

 

「俺、前はこの辺に住んでたんだ。でも、両親が死んじゃってさ…それからはおじいちゃんとおばあちゃんの家に住んでるんだけど、今日は両親のお墓参りでこの近くに来てたんだ。」

 

「そうだったんだ…こめんなさい、辛いこと聞いちゃって…」

 

私はしゅんと俯いて謝った。

 

「ううん!大丈夫、俺にはじいちゃんとばあちゃんもいるし。それに、絵里とも友達になれたから!」

 

彼の言葉を聞き、私は嬉しくなって再び顔を赤く染めた。

 

「あれ?絢瀬じゃん、こんなとこでなにしてんだよ?」

 

その時、突然公園に来てそう言ってきたのは、学校で私に悪口を言ってくるいじめっ子の男の子3人だった。

 

「お前、ロシアって国の血が混ざってんだろ?やっぱりお前きもちわりー!」

 

「そーだそーだ!なんでお前の髪金色で、目も青いんだよ!」

 

いつもの様に私に悪口を言ってくる彼らだが、私ももう慣れているので俯くだけで反論はしない。しかし、彼は違った。

 

「なるほど…この3人が、普段から学校で絵里に悪口言ってんだな…?」

 

その3人が私に言った言葉を聞いた優は、さっきまでよりも低い声でそう言った。

 

「なっ、なんだよお前?」

 

優に睨まれ、少し怯えながらいじめっ子たちの一人が言う。

 

「俺は絵里の友達だ!」

 

「はっ、はぁ?こんな金色の髪のやつと友達なんて…」

 

「なんだよそれ、ふざけんな!」

 

そう怒鳴った優に、いじめっ子3人は更に怯えている。そんな3人に優は黙って近づいたと思えば、ゴツ、と鈍い音が響いた。なんと優は、いじめっ子の真ん中の一人に思いっきり頭突きしたのだ。

 

「いっ、いってぇ…!?」

 

頭突きを受けたいじめっ子は涙目になり、頭を抑えて悶えている。

 

「絵里の髪も、目も、凄い綺麗だろ!外国の血が混ざってたって、俺たちと一緒の赤い血が流れている、同じ人間だ!次絵里の事を悪く言ったら、すぐにお前らのとこに行くからな!次は、頭ぶつけるよりももっと痛いことしてやる!!」

 

優は凄い剣幕でそう言った。そんな優の勇ましい姿を見た時、私の胸がどっくんと音を立てた。

 

 

この時、私は初めて出来た友達に、人生で初めての恋をしたのだ。

 

 

まぁ、この時はこの気持ちがなんなのかは、子供の私には分かっていなかったけど…

 

「ごっ…」

 

「「「ごめんなさーい!!」」」

 

怯えたいじめっ子3人は、そう叫びながら公園から走り去って行った。

 

「大丈夫か?絵里。」

 

いじめっ子たちが去っていったのを確認した優が、先程までとは打って変わったとても優しい笑みで、そう聞いてきた。

 

「うっ、うん…ありがとう、優。守ってくれて…」

 

今日何度目かのお礼を優に言った。この時の私の顔は、とても赤くなっていただろう。

 

「絵里がもしまたピンチになったら、俺が絶対に守る。世界中のどこにいても、必ず駆けつけて絵里は俺が守る。そのために、俺はもっともっと強くなるから!」

 

「でも、優はもう強いんじゃ…?」

 

私はさっきいじめっ子を退治した優の姿を思い浮かべながら、そう聞いた。

 

「ううん、今よりももっと強くならないと…だって、この世界にはあの3人なんかよりももっと強くて、もっと怖い人達がいっぱいいる。そんな人たちからでも絵里を守れるように、もっともっと強くなる!それで、いつかまた絶対に会おう!約束だ!」

 

「うん!!」

 

こうして、私と優はお互いの小指を結び、約束を誓ったのであった。

 

この時は、子供ながらこんな大きな約束をして、守れる根拠なんてどこにも無かった。けど、何故か信じられた。彼はまた、更に強くなって私の前に現れるだろう、と。

 

 

 

それから7年…

 

「助けていただき、ありがとうございました!…………あの、あなたの名前って…?」

 

「さっきも言ったけど、俺は仮面ライダーインフィニティだ!」

 

彼は約束通り、私のピンチに駆けつけてくれた。出会った頃よりも、何倍も、何十倍も強くなって…この時はまだ、彼がこの仮面ライダーの正体だということも、彼が記憶を失っているということも、知らなかったのだが…

 

 

 

そして更に一年と半年程経ち、優はついに私のことを思い出したようだ。

 

「その言葉…もしかして、思い出したの…!?」

 

驚きのあまり、私は掠れた声でそう聞いた。

 

「うん、思い出したよ。本当にごめん!長いこと待たせちゃって…」

 

「優が気にすることじゃないわ。ただでさえ、8年も前に一度会っただけだったのに、記憶まで失っていたんだから。」

 

「でも、約束も守りきれなかったし…」

 

「そんな事ないわ。優は約束通り強くなって、去年私がピンチになった時に助けてくれたじゃない。」

 

私は優に微笑みかけながら、そう言った。

 

「それって、もしかして…(俺が初めて変身した時のことか…?)」

 

「それからだって、何度も何度も私を…私たちを助けてくれたでしょ?それにね、あの時優に出会ったおかげで私は救われたわ。あの時のいじめっ子たちもあれ以来突っかかって来なくなったし、優が友達だと思うだけでとても元気になれたわ。」

 

「絵里…」

 

私の言葉を聞いた優は、それでもまだ心細そうにこちらを見つめてきている。

 

「優との約束があったから、私は救われた。そしてあなたは、それを果たしに来てくれた。記憶があろうとなかろうと、私はそれだけでとても幸せになれたわ。ありがとう。」

 

「俺だって、転生してから絵里に何度も救われた。μ'sの中でも初めて転生者だって明かしたのが絵里だったし、それを知った絵里は俺を支えようとしてくれた。本当にありがとう!」

 

私たちがお互いにお礼を言い合った所で、私は落ち着くために深呼吸した。

 

「優、あの時の約束は今日で終わりにしましょう。」

 

「えっ…?」

 

私の言葉に、優はとても不安気な顔で声を漏らした。

 

「私ね、ずっと優と新しい約束がしたかったの。」

 

「新しい、約束…?」

 

「優、これからは私が守られるだけじゃなくて、私もあなたがピンチになったら守りたい。あなたの隣に立って、支えられるようになりたい。」

 

「絵里…?さっきも言ったけど、俺は今まででも沢山助けられたし、沢山支えられてきたよ?」

 

「もっと、あなたの支えになりたいの。おばあ様が言っていたわ。女性は、愛する男性にただ守られるのじゃ駄目。愛する男性を隣で支えて、共に助け合えるようになりなさい、って…」

 

私がそう言うと、優は驚いたのか目を見開いてこちらを見ている。

 

「絵里、それって…」

 

「そのまんまの意味よ。私はあなたを、一人の男性として愛しているわ。初めて会ったあの時は、まだこの気持ちが何なのかはっきり分からなかったけど、優と沢山一緒に過ごしてきた今なら分かるわ。優、私はあなたが大好き。心の底から愛してる。だから、私はあなたの隣で支えになりたい。」

 

「絵里……」

 

私の名前を呟くと、それから優は戸惑って言葉を詰まらせている。そんな優を見て、私は思わず「ふふっ…」と笑ってしまう。

 

「えっ…?」

 

「ううん、ごめんなさい。急に言われても、困るわよね。それに、私たちはラブライブ!の最終予選を控えているスクールアイドル。だから、ラブライブ!の本戦が終わってから返事を聞かせて。」

 

「あっ、あぁ…分かった。ラブライブ!が終わったら、ちゃんと返事するよ。」

 

戸惑っていた優だが、今度は真剣な表情でそう言った。

 

「ありがとう。でもね、約束はしたいの。私たちは8年間、ずっと結んできた約束が急になくなるのは嫌だもん…」

 

「そうだよな…」

 

「だからね、今は隣とは言わないわ。あなたの隣じゃなくてもいいから、あなたの支えになりたい。あなたの()()として、一緒に助け合いたい。2人だけじゃなくて、アイドル研究部12人で。」

 

私の言葉を聞き、優は満面の笑みで答えてくれる。

 

「あぁ、そうだな!()()として、一緒に助け合おう!12人で!約束だ!」

 

そう答えてくれた優に、私も満面の笑みになって答える。

 

「うん!!」

 

8年前の、あの日のように…

 

〜side out〜

 

 

 

 

 

〜side 優〜

 

「本当にもう大丈夫なのか?一日ぐらい入院した方が…」

 

秀夜たちが戻ってくると、絵里はもう退院すると帰り支度を始めようとしていた。

 

「もう大丈夫よ。目が覚めてからすっかり元気になったのよ?」

 

「まぁ、絵里がそう言うなら…」

 

「ほらほら、私は着替えるから優と秀夜は外で待っててもらえる?」

 

俺と秀夜は、絵里に言われた通り外で待つことにした。

 

 

しばらく外で待っていると、隣の病室の扉が開いた。

 

「おっ?優じゃねーか。」

 

病室から出てきた翔太郎さんがそう言った。

 

「翔太郎さん!良かった、目が覚めたんですね!って、翔太郎さんももう退院するんですか?」

 

「あぁ!もうすっかり元気になったし、いつまでも寝てられねぇよ。」

 

「僕も一日ぐらい入院した方がいいと言ったんだが、聞かなくてね…それより、『翔太郎も』ってことは、絵里ちゃんもそうなのかい?」

 

同じく病室から出てきたフィリップさんにそう聞かれ、俺は頷く。どうやら、無事照井さんに財団Xのやつらを引き渡したようだ。

 

「いつまでも病室で寝てたら訛っちゃいますから。それに、ラブライブ!の最終予選だって近いんだから。」

 

着替え終わった絵里が、病室の扉を開けてそう言った。

 

「まぁ、それもそうだな。じゃあ、フィリップさん、翔太郎さん。今日はそろそろ…」

 

「あぁ、もう暗いしな。折角来てもらったのに、戦いに巻き込んだりしちまって悪いな。」

 

「いえ、同じ仮面ライダー同士なんですから当然です!あっ、それよりこれ、翔太郎さんが眠ってる間に勝手に借りちゃったんですけど…すみません。」

 

俺は翔太郎さんのダブルドライバーとガイアメモリ三本を取り出し、そう謝った。

 

「何言ってんだ。俺たちが助かったのは優のお陰でもあるんだから、礼を言うのはこっちの方だ。ありがとな。」

 

翔太郎さんは笑って、そう礼を言ってくれた。

 

「じゃあ、アジトにあったデータの解析が終わったら、また連絡します。」

 

「うん、よろしくね。優くんのお姉さんたちにも、そう伝えておいてくれるかな?」

 

「分かりました、伝えておきます。」

 

「あのっ!」

 

俺たちの話に一旦区切りがつくと、ことりが翔太郎さんとフィリップさんに話しかけた。

 

「照井さんと亜樹子さんにも、ありがとうございました!って伝えておいてくれませんか?」

 

ことりの言葉を聞いたフィリップさんは、優しく微笑んで答える。

 

「あぁ、分かった。必ず伝えておこう。」

 

「じゃあ、翔太郎さんもフィリップさんもお元気で。」

 

「あぁ、優たちもな。」

 

翔太郎さんはそこまで言うと、俺と肩を組んで耳元まで近づいて小声で話す。

 

「フィンディッシュとの戦いの時、μ'sのみんなも、蓮も、秀夜も、ラビリーも、それにお前の姉ちゃんたちも、みんなお前が絶対に戻ってくるって信じて、必死に戦ってたよ。本当に絆の強い、良い仲間を持ったな。まっ、俺と相棒の絆には少し劣るがな。」

 

最後はイタズラな笑みを浮かべながら、翔太郎さんはそう言ってくれた。

 

「はい!僕もさっきのガス・ドーパントとの戦いで、翔太郎さんとフィリップさんはお互い離れていても、とても信頼し合っているんだと改めて感じました。でも、次に会う時は、僕らもお二人に負けないぐらい信頼し合える仲間になってますから!」

 

俺のその答えを聞き、翔太郎さんは更に嬉しそうに微笑んだ。

 

「おっ、言うなぁ!じゃ、次会う時を楽しみにしてるぜ。」

 

そう言って、翔太郎さんはフィリップさんがいるところまで下がった。

 

「じゃあみんな、元気でね。」

 

フィリップさんが別れの挨拶を告げると、翔太郎さんと共に俺たちに手を振って見送ってくれた。

 

「ありがとうございました!」

 

俺は2人に頭を下げ、俺たちは帰路についた。

 

〜side out〜

 

 

 

 

 

〜side フィリップ〜

 

「さて、僕らもそろそろ帰ろうか。」

 

「そうだな。」

 

優くんたちを見送った僕らも、鳴海探偵事務所に帰るため病院を出た。

 

「そうだ、翔太郎。君に伝言を預かっているんだった。」

 

「伝言?誰からだ?」

 

「須藤霧彦から。」

 

「っ!?霧彦…?あいつは死んだはずじゃ…」

 

当たり前といえばそうなのだが、死んだはずの須藤霧彦からの伝言に翔太郎はとても驚いている。

 

「あぁ。そのはずだが、今回は一時的に復活したようだ。それで僕たちに手を貸してくれた。何故復活したのかは僕はもちろん、彼自身も分かっていなかったようだけどね。」

 

「そうだったのか…」

 

「それで何て?」

 

「妹を救ってくれてありがとう。それから、今もこの街に変わらず風が吹き続けているのは、君たちのおかげだ。と。」

 

「そうか…」

 

伝言を聞いた翔太郎は、目を閉じて風都の風を感じていた。翔太郎と同じように、この街を愛していた須藤霧彦が好きな風を…

 

それにしても、今回の件を通して僕は改めて感じた。優くんと共に戦ったのは勿論心強かったが、やはりWとして、僕の相棒として、共に戦えるのは左翔太郎、一人しかいないと。

 

「翔太郎。」

 

既に目を開いて、鳴海探偵事務所に向かって再び歩き出そうとしていた翔太郎に、僕は声をかけた。

 

「やっぱり、僕の相棒は君一人だけだ。」

 

「…?どうしたんだ急に?っていうか、そんなの当たり前だろ。俺にとってもフィリップは、たった一人の最高の相棒だ。これからも、ずっとな。」

 

最初から分かりきっていたが、翔太郎の言葉を聞いて僕は満足して笑う。

 

「これからもよろしく頼むよ、相棒。」

 

僕の言葉に、彼も笑って答える。

 

「あぁ。」

 

〜side out〜

 

 

 

 

 

〜side 優〜

 

音ノ木坂に戻ってきた俺たち5人は、再テストを受けていた穂乃果と凛の様子を見るため音ノ木坂学院に来ていた。アイドル研究部の部室に入ると、疲れきっている穂乃果、凛、にこ、蓮と、特に普段と変わった様子はない海未、真姫、希がいた。

 

「あっ!みんなお帰り!」

 

「おう、ただいま。それで、テストはどうだったんだ?」

 

「へっへーん!凛も穂乃果ちゃんも、余裕でバッチリ合格したよ!!ねー、穂乃果ちゃん!」

 

「うん!!」

 

笑顔でそう言った二人に、俺は意外だなと思いながらも一先ずホッとした。

 

「何が余裕でバッチリよ!2人ともギリギリだったじゃない!」

 

真姫がそう言うと、2人は「ギクッ…」と声を漏らして俺たちから目を逸らす。

 

「はぁ…普段からちゃんと勉強してないからそうなるんだぞ?」

 

「うわーん!それはもう海未ちゃんに何回も言われたよ…」

 

「ったく…蓮もにこも、テストでちゃんと赤点は回避したといっても、ギリギリだったんだろ?」

 

「「うぅ…すみませんでした…」」

 

穂乃果と凛もそうだったが、蓮とにこもかなり落ち込んでいる様子を見ると、俺たちが来るまでに海未にこってり絞られたんだろう。

 

「まぁ、とりあえずテストは終わったから良しとするか…これからは、ちゃんと勉強しておくこと!いいな?」

 

「「「「はい!!」」」」

 

「全く、返事だけはいいんですから。」

 

その様子を見た海未も、呆れ顔で声を漏らした。

 

「もし次また悪い点数やったら、わしわしMAXのフルパワーやで〜?」

 

希が手をわしわし動かしながらそう言うと、4人は怯えて震えている。っていうか、なんで男の蓮までそれに怯えてんだよ…

 

「よーし!それじゃあ、みんな!明日からはラブライブ!出場目指して、練習頑張ろー!あっ…でも、優くんは明日は参加出来ないんだっけ?」

 

切り替えて穂乃果が気合いを入れようとしたが、ふと思い出して俺にそう聞いた。

 

「あぁ、2日続けて悪いな…どうしても外せない用事があるんだ。」

 

「どうしても外せない用事?」

 

「あぁ、この前の俺が一時的に死んだ時、別の世界から転生してきた俺、橋本拓真と、元々この世界にいて死んでしまった仮野優の2人がそれぞれ分離してしまったんだ。その時に優と話す機会があったんだけど、その時に頼まれた事があるんだ。」

 

「それで、その頼まれたことって?」

 

真姫のそう聞かれ、俺は優に言われた頼み事について話す。

 

「祖父母の家に行って欲しいって…」

 

 

この世界に戻ってくる直前…

 

『一つ、頼みたいことがあるんだ。』

 

『頼みたいこと?』

 

『実は俺、死ぬまでじいちゃんとばあちゃんに育ててもらってたんだ。両親は、幼い頃に死んでしまったからな…それで、多分2人は俺が転生して生きていることを知らない。だから、悪いけど2人に会ってきてくれないか?俺は生きてる、無事だって伝えて欲しい。理由とかを全部話すかどうかは、お前に任せるから。』

 

『そんなことで良ければ、お易い御用だ。』

 

『悪い、ありがとう!』

 

とまぁ、こんな会話があった。

 

 

それを聞いたみんなは、快く許可してくれた。

 

「じゃ、穂乃果たちは明日から、優くんと12人揃っては明後日から、ラブライブ!優勝に向けて、練習頑張ろう!!!」

 

『おぉー!!』

 

穂乃果の掛け声に合わせて、俺たちは全員で声を上げた。

 

 

 

それから帰る支度をした俺たちは、学院を出て帰路についた。

 

「みんな!」

 

帰り道を歩いている時、俺は前に歩いていた穂乃果たちに声をかけた。それに気づいたみんなが俺の方に振り返る。

 

「俺はまだまだ未熟だし、みんながいなかったら、今まで乗り越えられなかった壁も沢山あるし、ここまで戦い続けられてなかったかもしれない…だから、これからも何かあったら支えて欲しい。それで、一緒に助け合って、どんな壁でも乗り越えていきたい!仲間として。親友として。この12人で!」

 

急に改まって言った俺に、みんな最初は戸惑ったが、すぐに笑顔で声を揃えて言った。

 

『もちろん!!』

 

その答えに安心した俺は、笑顔でみんなの元に駆け寄った。

 

 

 

翔太郎さん、フィリップさん。次会った時には、俺たちもお二人ぐらい…いえ、お二人以上に信頼し合える仲間になってますから、覚悟しててくださいね!!

 

〜side out〜

 

 

 

 

 

〜三人称視点〜

 

場所は戻り、風都のとある場所にてマスカレイド・ドーパントが数体暴れていた。

 

そこに、既に帰路についていた左翔太郎、フィリップ、そしてフィリップから預かった財団Xの連中を風都署まで届け終えた直後の照井竜の3人が駆けつける。

 

「もうひと仕事か。行けるか?左、フィリップ。」

 

照井はそう言って、アクセルドライバーを巻き付けた。

 

「当たり前だ。ったく…許せないな、この街を泣かせる悪党は。行くぜ、相棒。」

 

そう言って、翔太郎はダブルドライバーを巻き付けた。

 

「あぁ。」

 

そう答えたフィリップの腰にも、ダブルドライバーが出現した。

 

『アクセル!』

 

「変…身ッ!!」

 

照井は起動させたアクセルメモリを、アクセルドライバーに装填しハンドルを回す。

 

『アクセル!』

 

「さぁ、振り切るぜ!」

 

照井は仮面ライダーアクセルに変身した。

 

『サイクロン!』

 

『ジョーカー!』

 

フィリップはサイクロンメモリ、翔太郎はジョーカーメモリを起動させ、2人でアルファベットの『W』を象るように構える。

 

「「変身!!」」

 

そして、フィリップはサイクロンメモリをベルトに装填し、その場に倒れる。

 

翔太郎は自身のドライバーに移動してきたサイクロンメモリを差し込み、更にジョーカーメモリも差し込み、ダブルドライバーを展開させた。

 

『サイクロン!ジョーカー!』

 

翔太郎とフィリップは、二人で一人の仮面ライダー、Wに変身した。

 

「「さぁ、お前の罪を数えろ!」」

 

左手でマスカレイド・ドーパントを指しながら、ずっと街の悪党に投げかけ続けている、言葉を投げかけたのだった。

 

仮面ライダーW。仮面ライダーアクセル。この3人の仮面ライダーは、きっと風都に悪党がいる限り、そんな奴らから街の人々を守り続けるだろう。

 

そして、たとえ街を泣かせる悪党がいなくても、左翔太郎とフィリップは、いつまでも唯一無二の相棒で、探偵で、仮面ライダーWだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラブライブ!最終予選まで、あと16日…

 

 

 

 

 




はい、という事で125話でした。いかがでしたか?今回ついに優と絵里の出会いが明らかになりましたね。優が絵里と出会っていたことを、何故突然思い出したのか、予想がついてる方もいるかもしれませんが、それは次回にもチラッと触れますのでお楽しみに。

そして現在10周年でもある仮面ライダーWのエピソードも一先ず最終回。僕の想像の話ではありますが、翔太郎とフィリップが変身した話を書いて、やっぱりWは二人で一人だなぁ、と改めて感じました。

次回はレジェンド回ではありませんが、果たして次に登場するレジェンドは誰なのか…

では今回はこの辺で…お気に入り登録、評価や感想なども是非よろしくお願い致します!ではまた次回、お会いしましょう。

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