進撃の双翼   作:黒炉

2 / 11
連続投稿ですね。

ペースいいのは最初のうちだけですきっとorz


第104期訓練兵② 訓練前夜

 とりあえず罰走10時間で飯抜き。

 それが生意気訓練兵リオ=ヴァラッグに言い渡された罰だった。

 

「ま、十時間と一食抜き程度ならただのウォームアップみたいなもんだな」

 

 かつて正真正銘24時間マラソンと称して(流石に連続では23時間が限界だった)、ウォール・ローゼの内側を一周したことのあるリオにとって、10時間走るだけというのはそこまで厳しい罰則にはならない。

 が、もう一人、罰則を喰らった少女はそうでもないようで、

 

「え、えー……私、もうきついです……」

 

「何言ってんだまだ4時間だぜガンバガンバ!」

 

 リオに隠れて見えなかった(勿論後でばれた)、吹かした芋を食っていた少女――――『芋女』ことサシャ=ブラウスである。

 元から鍛え方がまるで違うリオとは異なり、サシャはすでに限界を突破している。が、罰則として言い渡された時間は10時間。まだ四割しか終わっていない現状は、サシャをただただ絶望させるのみである。

 食事抜きを言い渡された時の方がショックが大きいように見えたサシャが、実は走るのは得意だったなんて言うのはリオの幻想にすぎない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後きっちり10時間走りきったリオは、既に立ちあがることもできず、呼吸しているかどうかも怪しいサシャを尻目に「いい汗かいたー」と運動後のストレッチ(と呼んでいいかどうか怪しい曲芸)を行った後、訓練兵の男子宿舎に戻っていた。

 芋女ことサシャに関しては、終盤になってこちらをずっと見ていた気配が何とかしてくれると思ったので放置。

 当然食事などあるわけないので(一食程度なら取らなくても深刻な影響はない)、さっさと自室に戻って寝ようというわけである。

 ガチャ、とドアノブを捻って部屋に入ると、

 

「……何やってんの?」

 

 バカと自分の悪友が取っ組み合いをしている光景。

 坊主の方は知らないが、悪友――――ジャンはリオの知る限りバカなので、一言でバカやってる、と言われればそれで納得できるが。

 

「あぁ、リオか。ちょうどいい、このバカに解らせてやれ」

 

「おい、そこのオマエ! このバカに言ってやってくれ!」

 

「何を?」

 

「「どっちの方がよりバカかを!!」」

 

「………」

 

 あまりの低レベルさに、思わずリオは頭を抱え込んだ。

 聞けば、敬礼の手を逆にして教官に怒られたバカ坊主――――コニー・スプリンガーと、教官の頭突きで 一発ダウンし、怒鳴られたジャンとどちらが間抜けでバカなのかを争っているという。

 先に相手をバカにしたのはジャンらしく、そう言う意味ではガキなのはジャンなのだが、敬礼をする気のないリオでさえきちんと覚えている敬礼を間違えるのは、それはそれでバカらしい。

 故に、リオが出した結論は――――

 

「どっちもバカじゃね?」

 

「「うるせぇバカ野郎!」」

 

「潰すぞテメェら!?」

 

 訓練が始まる前だと言うのに、熱心なジャンとコニーは寝る間も惜しんで猛特訓☆

 

 

 

 リオの特訓があまりにキツかったのか、コニーは他者の眠りを妨げようとしているとしか思えないイビキを掻きながら眠っている。

 当然、それも原因の一つだが、リオは眠ることが出来なかった。

 ついさっきまで10時間ぶっ通しマラソンを行っていたのだから、身体はある程度疲れているわけで、アレくらい運動をした直後なら、普段はもっとぐっすり眠れるはずなのだ。

 それが眠れないということは、新しい環境で緊張しているのか、それとも――――

 

「なあ……、起きてるか?」

 

 頭の中で考えていたことを払拭しようとした時、二段ベッドの下部で寝ているジャンが声をかけてきた。

 部屋はリオ、ジャン、コニーの三人で使っているので、他に起きている者はいない。コニーがあれで起きているなら、とりあえずぶっ殺す。

 

「起きてるよ。……なんだよ、寝とかないと訓練辛いんじゃないか?」

 

「バカのせいで眠れねぇよ。……なあ、やっぱりリナのことが心配なのか?」

 

「……ッ」

 

 払拭しようとしていた考え。

 考えたところで今はどうにもできないのだから、考えるべきではないこと。

 

「心配じゃないわけ、ねえだろ。アイツは、俺みたいに自分で勝手に強くなれるわけじゃない」

 

「……そうだけどよ」

 

「俺は親父やお袋とは違う。あんな奴らみたいに、家族をないがしろにして壁の外に行こうなんて思わねえ」

 

 バスク=ヴィラッグとサリー=ヴィラッグ。

 リオの両親は5年前、人類最強のコンビとして調査兵団を率いる存在だった。

 常に『壁の外の世界』を望み、憧れ、見ようとしていた。そして。

 

 そんなものに興味を持ったから、死んだ。

 

 それがリオの考え方。

 壁の外は危険な巨人で溢れかえっており、非力な人間がそんな所を目指すべきじゃない。

 立体起動装置と対巨人戦略はただひたすら自衛のために磨き、間違っても攻勢には出ず、ただただ現状維持に徹する。

 そうしていれば、人は巨人に食われない。

 

「見たこともない景色だか何だか知らないが、俺はそんな物が自分の息子や娘より大切だなんて思えない」

 

「リオ……」

 

「俺が強くなるのは『守る』為だ。『手に入れる』為じゃねえ」

 

 5年前、親が死んで、リオと妹のリナを守ってくれるものはなくなった。

 だからリオは、たったひとりの家族であるリナを『守る』為に力を望んだ。

 望むのは『守る』ことのみ。リナから離れずにすむ『駐屯兵団』のみ。

 

「……もう寝ろ。ガキじゃねえんだ、自分の身体くらいちゃんと管理しろ」

 

「……おう」

 

 ジャンからすれば、それは『危うい』のかもしれない。

 けれど、リオはその『危うさ』さえ糧にして強くなると、もう5年も前に覚悟したのだ。




《現在公開できる情報》

バスク=ヴィラッグとサリー=ヴィラッグはともに英雄と証されるほどの高い戦闘技術を有していたが、過去の調査兵団の壁外遠征で死亡している。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。