ご注文は希望ですか? 作:指輪の魔法使い兼バリスタ
「邪魔をするな!」
ファントムが戦斧を手に、切掛かってくる。
しかし、晴之は避ける素振りも、防御する素振りも見せず、ただまっすぐに、ファントム目掛け走り出す。
ファントムが戦斧を突き出すタイミングに合わせ、体を屈め、戦斧を回避すると、がら空きとなった腹に、掌底を打つ。
「ぐおっ!?」
《コネクト プリーズ》
ファントムが怯んだ隙に、コネクトウィザードリングを使い、魔法陣から、ウィザードソードガンを取り出し、そのまま至近距離で、弾丸を撃ち込む。
「ぐあああっ!?」
ファントムが声を上げ、膝をつく。
素早くソードモードに切り替えると、下から斬り上げ、振り下ろす。
ダメージを食らいながらも、ファントムは戦斧を振り、攻撃を仕掛ける。
晴之は後ろに回転しながら戦斧を躱し、地面に降り立つと、戦斧を弾き、突きをファントムの胸の中央目掛け、打つ。
ファントムは後退しながらも、戦斧を構えなおし、晴之と同じように突きを放つ。
晴之はそれを真正面から受けて立ち、突きを放つ。
剣先同士がぶつかり合い、甲高い音が響く。
同時に、戦斧は粉々に砕け散り、晴之の一撃は、ファントムの喉元を捉える。
ファントムは突き飛ばされ、地面を転がる。
「くそおおおおおおお!!」
立ち上がると、ファントムは頭の角を晴之の方に向け、突進をしてくる。
晴之は剣を盾にし、受け止めるもその凄まじい力に押される。
「これはまずい……!」
このままだと自分が潰されかねないと思った晴之は、受け止めるのではなく受け流し、ファントムを弾き飛ばす。
「まだだ!うおおおおおおおおっ!」
再び突進を仕掛けてくるファントムに、晴之は溜息を吐く。
「まったく、とんでもない馬鹿力だな」
フレイムウィザードリングを外し、今度は黄色いウィザードリングを嵌める。
《ランド プリーズ ド ド ド ド ド ドン ドゥン ド ド ドン!》
手を地面に向けると、下か魔方陣が現れ、晴之の体を通過する。
すると先ほどまで赤かった部分が黄色へと変わり、マスクも黄色の四角形の形へと変わる。
《ディフェンド プリーズ》
右手につけた新たな指輪、ディフェンドウィザードリングを使い、地面に触れると、そこから岩の壁がせり上がり、ファントムの突進を防ぐ。
「なっ!?貴様、エレメント変化できるのか!?」
「まぁな。じゃ、飛びな」
そう言い、回転回し蹴りを放ち、ファントムを下から蹴り上げる。
「ぐおっ!?」
「まだまだ、こんなものじゃないぞ。お次は」
ランドウィザード外し、今度は緑色の指輪を嵌める。
《ハリケーン プリーズ フーフー フーフーフーフー!》
今度は黄色い部分が緑色に変わり、マスクも緑色の逆三角形の形になる。
ウィザーソードガンを逆手でもち、風を纏うと浮かび上がり、連続してファントムを斬り付ける。
斬り付けては蹴り飛ばし、蹴り飛ばした先に素早く移動し、また斬り付ける。
最後に、上から叩き付けるように斬り、ファントムを地面に落とす。
「ぐっ………!」
「これで」
《フレイム プリーズ ヒーヒー ヒーヒーヒー!》
フレムスタイルに戻り、新たなリングを右手に嵌める。
「フィナーレだ」
《ルパッチ マジック タッチ ゴー! チョーイイネ! キックストライク! サイコー!》
足元に魔方陣が展開され、晴之の右足に焔が纏う。
「ハッ!」
走り出し、側転をして、飛び上がると、空中で体を一回捻り、焔を纏った右足をファントムに向ける。
そのまま蹴りがファントムを貫く。
「ぐあああああああああああっ!!?」
晴之が降り立つと同時に、ファントムの体は爆発し、跡形もなく消えた。
だが、晴之はそんなファントムに目もくれず、ココアのもとに向かう。
「ココア!」
「晴之さん、これ以上はもう………!」
チノの言う通り、ココアの体は限界寸前だった。
「あ、あはは………私、馬鹿だなぁ………」
ココアは乾いた笑みを浮かべる。
「晴之君の言葉………ちゃんと聞いてすぐに帰っていればこんなことにはならなかったのに…………私って、本当に馬鹿だよ………。ありがとね、晴之君………助けに来てくれて嬉しかったよ…………」
「…………簡単に諦めるな」
晴之はある指輪を取り出し、言う。
「絶望に屈したらいけない。諦めず、希望を持て。お前は、俺が必ず救う」
ココアの右手を手に取り、晴之は言う。
「俺が、お前の最後の希望だ」
「晴之君…………うん、私、諦めないよ」
「それでいい」
右手の中指に、指輪を嵌め、ベルトに翳す。
《エンゲージ プリーズ》
ココアの頭上に魔方陣が展開される。
「じゃ、行ってくる」
そう言い残し、晴之は魔方陣の中へと飛び込んだ。
晴之が降り立ったのは白黒の世界だった。
山に囲まれた街の駅、そこにココアとココアとよく似た年上っぽい人物がいた。
「似ている。ココアの姉か母親か?………ここがココアのアンダーワールドか」
アンダーワールド。
それはゲートが過去に経験した記憶のうち、最も心に深く刻まれた心象風景を再現しているこの世界の名でもある。
すると、突如空間にヒビが入り、そこから異形の生物、ファントムが現れた。
ファントムは暴走し、アンダーワールドを破壊しようとする。
アンダーワールドが壊れると、ファントムは現実世界に現れ、ゲートは死ぬ。
その為、アンダーワールドが壊れる前に、ファントムを倒す必要があった。
ファントムは、空へと飛び、破壊を続ける。
「来い!ドラゴン!」
《ドラゴライズ プリーズ》
上空に現れた巨大な魔方陣から機械のような見た目のドラゴンが現れ、ファントムに攻撃をし始める。
《コネクト プリーズ》
今度は魔方陣から愛車であるバイク、マシンウィンガーを取り出し、走らせ、ファントムとドラゴンを追いかける。
上空ではドラゴンがファントムに派手に攻撃を仕掛け、その所為でアンダーワールドの崩壊が激しくなっていた。
「たっく、もうちょっと穏やかに戦えないのかね」
そんなドラゴンに溜息を吐きながらも、晴之はマシンウィンガーを走らせる。
そして、ドラゴンが下りた瞬間、一気にマシンウィンガーで飛び上がる。
すると、マシンウィンガーが形を変え、巨大な翼のような形態、グレイトフルウィンガーになり、ドラゴンの背中にくっ付く。
「俺に従え、ドラゴン!」
ハンドルを切ると、ドラゴンはその通りに動き、ファントムと戦い始める。
強力過ぎて扱うのが難しいドラゴンをこうして制御することで、アンダーワールドの崩壊を極力抑えて戦うことができる。
ドラゴンの爪がファントムを襲う。
ファントムも負けじと、口から魔力弾を撃ってくる。
それを躱し、ドラゴンの口から火球が飛び、ファントムに直撃する。
怯んだファントムに向かってドラゴンのしっぽを叩き付け、そのまま地面に落とす。
「フィナーレだ!」
《ルパッチ マジック タッチ ゴー! チョーイイネ! キックストライク! サイコー!》
ドラゴンの背中から離れると、ドラゴンはその形を変え、再びマシンウィンガーと合体する。
その姿は、巨大なドラゴンの脚に見える。
マシンウィンガーに足を乗せ、晴之は蹴りを打つ。
「はあああああああああああっ!!」
巨大な一撃にファントムは押しつぶされ、大爆発する。
後には、ドラゴンとウィザードである晴之しかいなかった。
晴之がファントムを倒すのと同時に、ココアの崩壊が止まり、ヒビが消える。
それを見て、チノとリゼは安堵の息を吐く。
そして、魔方陣が出現し、晴之がマシンウィンガーに乗って現れる。
「ココア」
変身を解くと、晴之はココアに近づく。
晴之の声に、ココアはゆっくりと目を開ける。
「晴之君……私、助かったんだ………」
「ああ。ココアはもうゲートじゃなくなった。これでもう襲われる心配はないよ」
「……そっか、ありがとう。晴之君」
「いいってことさ。俺は――――――――」
「お前たちの最後の希望だからな」