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(注)原作知識が曖昧な状態です。
私は士郎と凛には付いて行かずに教会の門の外側で待っていた。黄色い雨合羽を着せられてだ。
確かにこのボディアーマー姿では夜とは言え目立つのだが、これはセンスを疑うぞ。それにしても、虫が多いな。虫唾が走る。
「こんばんわ」
いつの間にか正面に大男のサーヴァントを従えた白髪で目の色が赤い少女が現れていた。その姿は浮世離れした芸術品の様に見えた。出来の良いホムンクルスだな。いや、混じっているか。
「こんばんわ。お嬢さん――って歳でもなさそうだな」
キョトンとした表情をする女の子。
「へぇ~、解るんだ。セイバーなのに意外ね」
「それなりに勉強しているのでね。――で、何用かね? アインツベルンのマスターよ」
「ふ~~ん。そんな事もお勉強してたのね。見直したわ、セイバー」
楽しそうにニコニコと笑顔を魅せる。
「でも、お兄ちゃんのサーヴァントはあのセイバーだと思ったんだけどなあ。凄く不思議」
「ふむ、興味をそそられる話だな」
秘密だよと蠱惑的な笑みを浮かべて私に言う。ふん、知っているさ。衛宮士郎のサーヴァントはかの騎士王であったとな。
「アインツベルンのマスターよ」
「イリヤよ。あなたは気に入ったからイリヤって呼ばせてあげるわ」
「ほう――有難う光栄だイリヤ。それで今宵の要件を聞いていなかったな」
「そんなの分かり切った事じゃない。殺しに来たわ」
事もなげに可憐な見た目のイリヤがそう宣告する。その目の奥には純粋な殺意と無邪気さが同居している様だった。
「ならばもう少し待て、やり合うのは一向に構わんが役者が揃っておらん」
「ふーん。――そうね。お兄ちゃんが居ないとね。でも凛はいらないわ」
「そうか」
会話が途切れた。沈黙は気まずいな。と思ったが杞憂に終わったようだ。
「あ、来た。お兄ちゃーーん!」
士郎と凛が駆けてくるのが見える。イリヤはブンブン手を振っている。
「あ、あの時の子か! なんでこんな場所に!」
「こうして会うのは2度目だね。お兄ちゃん」
士郎は驚きを隠せず、狼狽した様子だ。
「凛。――初めまして私はイリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。――アインツベルンと言えば分かるかしら?」
不敵な笑みを浮かべたイリヤの言葉を聞いて、凛はアインツベルンと零し、イリヤの顔を見つめる。後ろに控えるバーサーカーのステータスを視た凛が更に言う。その顔は焦りを隠せていない。
「驚いた。単純な能力ならセイバー以上じゃない。アレ」
イリヤの魔術によって背にある教会の鉄製の門が閉められる。元よりあの醜悪な神父に助けなど乞わんのだがな。
「セイバー何とかなりそう?」
「凛、こんな時こそ冷静さを忘れてはならんぞ。ふむ、――まるで怪獣の類だが、私は怪物退治は得意なんだ。取り敢えずは凌げよう」
命の危機に焦りは禁物だ。自信を顔に出して凛に言葉を掛ける。
「士郎、死にたくなければ逃げよ。これよりここは人理とは隔絶した世界となる。凛もだ」
え、と口から漏らす凛と私の顔を神妙な顔で仰ぎ見る士郎。
「大丈夫なのか、セイバー」
「任せておけ。これでも英雄の座まで上りあがった男なのだ。困難こそ我が人生、この程度の事は困難とは思わん。必ず追いつこう」
一歩進み出る。
「死は或は泰山より重く或は鴻毛より軽し――活路を開く。凛、士郎を頼む」
無言で凛は頷くと。
「衛宮君、セイバーを信じましょう!」
「くっ、死ぬなよ!セイバー!」
「了解だ!マスター!」
満点の笑みでイリヤスフィール・フォン・アインツベルンが告げる。
「そろそろいいかしら――やっちゃえ、バーサーカー」
2m50㎝はあるだろう。全身は筋肉の鎧で覆われており、肌は褐色を通り越して黒に近い。手には岩石を切り出して剣の形に寄せた様な物を持っている。
魂を委縮させるような咆哮をバーサーカーが放つ。
私は雨合羽を脱ぎ捨て黒剣を抜く。二人を横目で見ると身体が強張っているも、怯えてはいない。もし、ここでアーチャーが負傷していなければ状況は変わるのだろうがな。
「Start-up」
全身の魔術回路が脈動を始める。生前幾度も使った肉体強化の魔術を全身に行使すると同時にバーサーカーが突進してくる。
まるで隕石だなと加速された思考の中でバーサーカーの動きを捉える。その風貌ゆえ荒々しいものに一見見えるだろうが、あれは理性を失ってもその身体に染みついた武技/術理は一切色あせていない。
バーサーカーの巌剣を己の黒剣で受け止める。その一撃の重さたるや尋常ではない。もし、己がセイバークラスではなければ切り合いは御免被りたい。
バーサーカーの剣技は正当なものだ。言ってみれば真っ直ぐなもの。小細工など必要ないのだろう。それほどの技量/腕力だ。
手加減出来ぬな。ここでは巻き込む事は必至。森へと誘い込むか。
バーサーカーの攻撃を弾き、森の中へ突入してゆく。戦車の如き、バーサーカーも私を粉砕せんと追いすがって来る。
全く大した英霊だ。アインツベルンのマスターのあの自信も頷けるもの。
木々を遮蔽物にバーサーカーの暴風の如き剣風をから身を隠す。真面にぶつかり続けるのは得策ではないが、どう殺すか。
「まるでバーサーカーとは思えんな。元々狂っているのか、狂わされているのか分からんがその鍛え上げられた剣技、感服する。――しかし狂って呼ばれた事を感謝するぞ。バーサーカー!」
もしも、正常な状態。バーサーカー以外のクラスで呼ばれていたのならば手に負えていなかったろうな。狂って尚、これだ。生前の姿に近かったのならば私など手も足も出なかったろう。
剣戟の音が森に木霊する。
大分、奥に来たようだな。チラリと視界の隅にイリヤの姿が見えたが直ぐに、バーサーカーの身体で見えなくなる。
一度、距離を取る。不穏な空気を感じ取ったのか、睨め付けて来る。
「そろそろ、押されっぱなしでは私の見せ場がないと思わないかね?」
★★★★★★★
「はぁ、はぁ、クソ。俺はセイバーのマスターなのに! 何もできないのか!」
衛宮君の慟哭を聞いて私は思う。それは私も同じだと。アーチャーが居ない今アレに何かを出来るかと問われれば言葉にすることは出来ないだろう。
セイバーの言葉を信じるしかない。それが歯がゆい。今まで培ってきたモノが役に立たない現実。自信はあった、でもアレには敵わない。
「今はアーチャーと合流して戻るのが最善! 衛宮君、今はセイバーの言葉を信じるしかないわ!」
だからと言って、アーチャーの傷を治して戻ったとしてアレを倒せるのだろうか?
セイバーには余裕が見えた。いや、私たちに不安を与えないために強い言葉を使ってくれただけだ。
セイバーがどれほどの実力を秘めていようとアレを越えられるだろうか? 正直言えばセイバークラスは最優のクラスと言われているけれど、あのセイバーはお世辞にもセイバーとして飛び抜けて居るようなステータスではなかった。
あのバーサーカーは由緒正しきアインツベルンが選んだサーヴァント、きっとさぞ高名な英雄なはず。
では、あのセイバーはどこの英霊なのだろうか? 防具は騎士の鎧ではなく、どちらかと言うとアーチャーと同じようなものだ。それに、彼は魔術を行使していた。
「実は彼、セイバークラスの適性は低いのかしら?」
その私の一言を聞いて衛宮君が言う。
「そういえば、ランサーと戦っていた時に、まさかセイバーで呼ばれるとは思わなかったって言ってた」
「それ本当? 衛宮君」
「ああ、確かに言っていた」
くそ、判断を誤ったわ。もう私のバカバカ! こんな事なら万全の状態で教会へ来れば良かった!
「きっと、元々は剣技で英霊となった訳じゃないんだわ。でも、生前はそれなりに剣を使えたからセイバークラスも適性があった。でもその適正値はそこまでのものじゃない。それにバーサーカーとぶつかる前に強化の魔術を使っていたわ」
「そ、そうなのか? 俺にも使えるけど、分からなかったぞ」
「だから、衛宮君はへっぽこなの! 強化の魔術とはいえ、衛宮君が扱える魔術とは別次元よ。あそこまで瞬時に展開・起動・大出力に出来ればセイバーとして召喚されたなんて思わないわよ! これは推測だけど、もしかしたら――いや彼は生前魔術師だったはずだわ」
そうなのかと間抜けな顔をする衛宮君。
「衛宮君! 彼ってどこの英霊なの! 言いなさい!」
「え、いや。知らないぞ!俺は!」
「はああ!! あんた、自分のサーヴァントでしょうが! 知らないってなによ!」
私は衛宮君の胸倉を掴んで力を込めて揺らす。
「とーさか! ギブギブ!――はあ、本当に知らないんだ。セイバーがどこの英霊なのか。見当もつかない」
くそ、使えないわね。
「凛」
とその時、アーチャーの声が聞こえた。
「アーチャー! 来てくれたの!」
霊体化して何処にいるか分からないがアーチャーの声が聞こえる。
「胸騒ぎがしたのでな。さて、状況を聞かせてもらおうか」
「それより、あんた傷の具合はどうなのよ?」
自分のサーヴァントを放り出して男の世話していた君がそれを言うか?と衛宮君には聞こえない念話で言って来る。
「うぐ、うんもう! 終わった事よ! それより傷を治してセイバーの援護をしに行くわよ!」
アーチャーに治癒魔術を行使する。これで一先ずは大丈夫だろう。
「全く君は人使いが荒いマスターだな」
「うっさいわよ!――衛宮君!」
彼の目を真っ直ぐ見て告げる。
「私はアーチャーと行くわ。衛宮君はこのまま逃げなさい。セイバーの事は何とかします」
「何とかって、遠坂が行ってマスターの俺が行かないなんて駄目だ!」
頭に来た。この能天気のクソガキ。
「甘ったれるんじゃないわよ! セイバーがどんな気持ちであなたを逃がしたか分かってるの? 完全にあなたが足手まといだからよ。確かに私も逃げろと言われたわ。でも、今はアーチャーがいる。あんたには何があるの?」
絶句した顔。言っちゃった。
「凛、時間の無駄はよせ。それは覚悟も実力も持ち合わせぬ餓鬼だ。己の領分すら分からぬ、未熟者だ」
分かってるわよ。でもね。言ってやらないと気が済まないわ。
「なんだと、アーチャー!」
「真実を述べたまでだ。未熟者め」
衛宮君がアーチャーに食って掛かるがアーチャーは歯牙にもかけない。
「衛宮君いい。――あなたは確かに魔術を使えているけれど、こちら側の人間ではないわ。なまじ知っているからあなたは危険知らずに首を突っ込もうとしている。確かに、あなたはマスターとなってしまったわ。でもね。あなたはまだそちら側の視点でしか見えていないのよ」
開かれた目が驚きを表している様に見える。
「た、確かに俺は覚悟も足りてない。魔術だって未熟だ。それでも」
「そうじゃないの」
止めを刺す。
「あなたは一般人よ。本来ならこちら側に足を踏み入れてはいけない人」
あの子の姿が脳裏に映る。
「だから、今は逃げなさい」
何よりもあの子の為に。
「お、俺は・・・」
「行きましょう。アーチャー」
項垂れる姿を見てこれでいいのだと確信する。
★★★★★★★
「へえ、やるじゃない。私のバーサーカーを殺すなんて」
地に伏すバーサーカーを尻目に濡れた剣を振るって血を吹き飛ばす。
「それはどうも」
視線はバーサーカーから離さない。
「噂通り。不死身か、バーサーカー」
体中に刻まれた、切り傷・刺し傷・断裂が再生――いや時が巻き戻るが如く修復される。
魔術による修復、いや――最早呪いだな。
「さあ、バーサーカー。今度こそ――殺しなさい」
「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
全く世話しない事だ。
「なら何度でも殺してやる」
黒剣を開く。黒剣と魔術回路と繋がり沸騰する。懐にある懐中時計の時を刻む音が自分の中で広がっていくのが分かる。
「我は裏と表を歩むものなり――」
「我は真理と法則を欺くものなり――」
「我は時と空間を隔てるものなり――」
「我は在り得ないものと在り得るものを視るものなり――」
「我に突き従え」
「七の影《Shadow of Seven》」
黒剣を構え、バーサーカーに突進する。それに対応するべく、その巌剣が迫る。
「一」
己とは違う方向へ、幽鬼と化した影が分かれて、その鋼鉄の様な脇腹をすり抜ける。
「二」
私が飛び、二の影は地を這い、足の間をすり抜ける。
「三・四」
空中に居る私から、三と四の二つの影が分かれてその巌の如きバーサーカーに剣を突き立てる。
「五」
五の影は私の腕を掴み、バーサーカーの死角へ投げ。
「六」
空中に居る私に振るわれるバーサーカーの剣を受け止める。
片足の腱を切られたバーサーカーの体勢が崩れ、わき腹からは出血が激しい。
「7」
影は飛び、そのまま頭部目がけて剣を突き立てようと落ちる。バーサーカーは影の剣を防御する為、巌剣を盾とした。
「こっちだ。阿呆」
その狂気を孕んだ目と目で合う。魔力開放から下から切り上げで首を狙う。血飛沫が舞うが、代わりにバーサーカーの腕がぼとりと落ちる。
「阿呆と言った」
影が収束して、七の影が私から放つ。一つは心臓。もう一つは首を刺し。二つは口に。もう二つは目に。最後の影は下から回転しながら剣を振るいバーサーカーを断頭する。
手にした剣を落とすバーサーカー。やったか。
直後私の腹部を強打が襲って吹き飛ばされる。
「がは!――化け物か」
頭の上部を吹き飛ばされてもまだ動けるか!
その時、幾重もの赤い閃光がバーサーカーを強襲する。
「セイバー!」
凛が戻ってきたか。ならば先ほどのはアーチャーの攻撃。しかし、どうやらアーチャーの通常の矢では意味をなさないようだな。
「セイバー!退避して!!」
強大な魔力がここへ迫って来るのを感じる。あやつ、私を巻き込むつもりか。再生しつつあるバーサーカーを尻目に全力で凛へと向かい拾って退避する。
直後、バーサーカーを起点に大爆発を起こして一帯が焼け吹き飛ぶ。
「アーチャーの攻撃は大して聞かない様だな。凛」
遠ざかって行く熱せられた大地に立つそれは無傷であった。手強い相手だ。
「いいわ、セイバー。決着はまたの機会にしましょう。十分に楽しめたわ。今日の所は終演よ。――あと、じゃあね。凛」
強化された聴覚にはイリヤの声がそう聞こえた。
ヘラクレスがアーチャーで召喚されて居たら勝てませんよね。
バーサーカー以外だったらきっと聖杯戦争を勝てたかもしれないのになあ。
強化された分、宝具を失ったのは大きい敗因だったはず。
さて、どのルートとも違って、戦いの場に士郎は居ませんでした。この先どうなるやら。