『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です


第102話

甲子園で行われた夏の高校野球選手権全国大会決勝戦に勝利した事で、

青道高校は全国制覇を成し遂げた。

 

表彰式も終わって東京に帰ってくると、青道高校全体でお祝いムードになっていた。

 

チームの皆を率いた片岡さんを始めとして、大会のメンバーに選ばれた全員が

全校生徒の前で理事長等に祝われた。

 

そんな感じで皆に祝われた後、3年生の先輩方が引退をしていった。

 

大学に進学を目指す先輩もいれば、野球部のある企業に就職を希望する先輩がいたりと様々だ。

 

そんな中で東さんはプロ志望届けを出した。

 

だから東さんは青道高校野球部を引退しながらも、俺達と一緒にグランドで汗を流しながら

秋のドラフト会議を待っている。

 

3年生の先輩方が引退した後、俺と一也は青道高校の応接室でとある雑誌の取材を受けていた。

 

月刊『野球王国』

 

それが取材を受けている雑誌の名前だ。

 

記者の人はシニア時代から付き合いのある峰 富士夫さんと、大和田 秋子ちゃんだ。

 

「久し振りだね、葉輪くん、御幸くん。」

「峰さん、クリスさんとか東さんの取材はいいんですか?」

「もちろんその2人も取材をさせてもらいたいけど、上司に

 葉輪くんと御幸くんの2人を先にって言われてるんだ。」

 

俺の言葉に峰さんが苦笑いをしながら応える。

 

秋子ちゃんはニコニコとした笑顔で一也を見ているな。

 

コンコンコンと応接室の扉がノックされる。

 

「失礼します。お茶をお持ちしました。」

 

そう言って応接室に礼ちゃんが入ってきた。

 

礼ちゃんは青道高校の理事長の娘であり、さらに野球部の副部長でもあるので、

俺と一也の取材の立会人として今回は参加するとの事だ。

 

「高島先生も来られたので取材を始めさせていただきます。まずは夏の大会の

 全国大会制覇おめでとうございます。」

「「ありがとうございます。」」

 

秋子ちゃんが手帳とペンを持ちながらそう言ってきたので、俺と一也はお礼の言葉を返す。

 

「甲子園での第2回戦で完全試合を達成しましたが…。」

 

そんな感じで取材を受けた後日、俺は約束通りに貴子ちゃんとデートをしたのだった。

 

 

 

 

「御飯美味しかったね、フーくん。」

「うん。美味しかったね、貴子ちゃん。」

 

夏の大会が終わって秋の大会に向けてチームが動き始めた頃、私とフーくんはデートをした。

 

「皆は残って練習をしてるのにごめんね、フーくん。」

「気にしないでいいよ、貴子ちゃん。それに、俺は貴子ちゃんとのデートは大歓迎だから。」

 

そう言って笑顔になるフーくんの姿に、私の顔が熱くなる。

 

胸のドキドキが止まらない。

 

あぁ…やっぱりフーくんはカッコいいなぁ…。

 

甲子園で優勝した事もあって、青道高校の女子の間でもフーくんは大人気になっている。

 

まだ誰もフーくんに直接告白した事は無いけれど、それでもフーくんは

手紙を一杯貰う様になった。

 

その事を考えると、胸がモヤモヤとする。

 

「どうしたの、貴子ちゃん?」

「何でもないよ、フーくん。」

 

私の事を気にしてくれるフーくんの気持ちが嬉しい。

 

その事だけで私の胸のモヤモヤは直ぐにドキドキへと変わる。

 

我ながら単純だと思うけど、私はそれだけフーくんの事が好きなんだから仕方ないわよね?

 

フーくんと手を繋いで夏の大会の事とか、今日のデートの事を話していると、

あっという間に家まで帰りついてしまった。

 

「今日も楽しかったよ、貴子ちゃん。」

 

そう言うフーくんの笑顔に、私はお母さん達に言われていた事を実行する為の覚悟を決めた。

 

「フーくん、約束を果たしてくれてありがとう。」

「今日のデートの事?」

「違うわ、私を甲子園に連れていってくれた事だよ。」

 

私がそう言うと、フーくんは苦笑いをした。

 

「背番号1は丹波さんだったし、皆に打って貰えたから勝てたんだけどね。」

「それでもフーくんが一番カッコ良かったよ。」

 

私がそう言うと、フーくんは照れ臭そうに笑った。

 

うん、覚悟を決める必要なんてなかったわ。

 

だって、今の私は心からそうしたいと思っているんだから…。

 

「フーくん、約束を果たしてくれたご褒美をあげるね。」

「ご褒美?」

「うん、今用意するから目を瞑ってくれる?」

「おぉ!?何だろう?楽しみだな!」

 

フーくんはニコニコとした笑顔で目を瞑った。

 

音が聞こえる程に胸がドキドキしてる。

 

もし他の女子が知ったらどう思うかな?

 

羨ましがるかしら?

 

それでも、誰にも譲るつもりはないわ。

 

だって、私はフーくんが好きなんだから。

 

幼稚園の頃からずっと好きだったんだから。

 

私はフーくんの正面に回って一歩近づく。

 

フーくん、大きくなったなぁ…。

 

180cmを超える長身のフーくんの顔を見上げると、私の顔がまた熱くなる。

 

私は両手をフーくんの頬に添えて軽く引き寄せる。

 

すると、少し前屈みになったフーくんは驚いた様に目を開けた。

 

フーくんの目と私の目が合う。

 

私はフーくんに微笑むと、つま先立ちをして唇を重ねたのだった。




本日は5話投稿します

次の投稿は9:00の予定です

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