『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

105 / 291
本日投稿2話目です


第103話

ご褒美として貴子ちゃんにキスをされた。

 

…え?

 

「フーくん、また明日ね。」

 

そう言って貴子ちゃんは真っ赤な顔で家に入っていった。

 

えっと、その…えぇ!?

 

ど、ど、ど…どういうことだってばよ!?

 

た、貴子ちゃんとデートをして、約束を果たしたからご褒美をくれるって言って…。

 

そ、そして、キスをされて…。

 

ウォ―――!!

 

自宅前で頭を抱えて悶えてしまう。

 

えっと、貴子ちゃんとは幼馴染みであって…こ、恋人じゃないよな?

 

え?キスしちゃったよ?いいの?

 

えっと、今までも手を繋いだり、腕を組んだりしてきたけど…それは幼稚園の頃から

やって来たことだし…俺と貴子ちゃんにとっては自然な事だったし…。

 

ピロン♪

 

俺は混乱したままだったが、突如脳内に響いた機械音に反射的にステータス画面を開いた。

 

 

※おめでとうございます。大人の階段を一歩登りました。

 

※お祝いとしてボーナスポイントをお贈り致します。

 

 

なんでやねん!

 

女神様が覗き見でもしとんのか!?

 

心の中でエセ関西弁でツッコミを入れてしまう。

 

だけどそのおかげで冷静になれた俺は、ため息を吐きながら頭をガシガシと掻く。

 

「明日、どんな顔をして貴子ちゃんと会えばいいんだ?」

 

考えが纏まらないままだったが、とりあえず家に入る事にした。

 

そしてご飯の時間になると、ニコニコとした笑顔の母さんが赤飯を用意していたのだった。

 

 

 

 

翌日、いつも通りに貴子ちゃんと朝練に向かう為に顔を合わせると、

お互いに中々目を合わせる事が出来ずに顔が赤いままだった。

 

俺は甲子園の決勝のマウンド以上に緊張している。

 

それでも、俺は勇気を振り絞って貴子ちゃんに昨日の事を聞いてみた。

 

「貴子ちゃん、昨日の事なんだけど…。」

「えっとね、フーくん。昨日の事はね、その…。」

 

貴子ちゃんが言うには、母さん達に煽られた事が理由でもあるんだけど、

幼稚園の頃から俺の事が好きだったからキスをしたらしい。

 

「フーくん、いきなりキスをしてゴメンね。」

「確かにいきなりで凄い混乱したけど、それ以上に凄い嬉しかったよ、貴子ちゃん。」

「本当?」

「うん、本当だよ。」

 

俺がそう言うと、貴子ちゃんは花開いた様な笑顔になった。

 

可愛い。

 

今までも可愛いと思ってたけど、今日の貴子ちゃんは今まで以上に可愛いと思う。

 

「それでね、フーくん。」

「えっと、貴子ちゃん。」

 

俺と貴子ちゃんの言葉が重なる。

 

「フーくん、先にいいよ。」

「うん、ありがとう。」

 

貴子ちゃんとは幼稚園からの付き合いだから、何を言おうとしていたのか何となくわかる。

 

だけど、それを言うのは俺からだ。

 

なんせ13年も貴子ちゃんを待たせたんだからな!

 

「貴子ちゃん、13年前の夏の大会のテレビ中継を覚えてる?」

「片岡監督が甲子園の決勝の舞台で投げていたやつだよね?もちろん覚えてるよ。

 私達が野球を好きになったキッカケだからね。」

 

そう言うと、貴子ちゃんはニッコリと微笑む。

 

「あの時にフーくんは野球選手になるって言ったよね。」

「うん、今もその気持ちは変わってないよ。」

「ふふ、マウンドのフーくんは誰よりも楽しそうに笑ってるもんね。」

 

貴子ちゃんの言う通りに、俺は本気で野球をやっているし、本気で野球を楽しんでいる。

 

だからこそ俺は最高の舞台で野球をしたい。

 

「貴子ちゃん。俺、青道を卒業したらメジャーに行くよ。」

「うん、フーくんならそう言うと思ってた。」

 

流石は貴子ちゃん!

 

俺の自慢の幼馴染みだぜ!

 

「貴子ちゃん、俺と恋人になってください。そして、一緒にアメリカに行こう。」

 

俺がそう言うと、貴子ちゃんは目に涙を浮かべた。

 

それでも貴子ちゃんは嬉しそうに微笑んでいる。

 

そして…。

 

「うん、喜んで。」

 

そう言って貴子ちゃんは俺に抱きつくと、俺の胸に顔を埋めた。

 

俺が貴子ちゃんを軽く抱き締め返すと、貴子ちゃんは顔を上げてそっと目を閉じる。

 

そして昨日とは違い、今度は俺から貴子ちゃんに唇を重ねたのだった。

 

ピロン♪

 

ほっとけや!




次の投稿は11:00の予定です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。