『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿5話目です


第106話

秋の高校野球選抜東京地区大会に向けてのレギュラー争いが始まった。

 

3年生が引退した事で多くのポジションのレギュラーの座が空いたので、

青道高校野球部の皆の目はギラギラとしている。

 

先ずは休日を丸1日使って部員全員の体力測定が行われた。

 

春にも一度行われているのだが、部員達の成長を改めて確認する為だ。

 

元2軍、3軍の者達にとっては片岡さんに直接アピール出来る機会でもあるので

非常に張りきっている。

 

体力測定は順調に進んで暫定的な所属が決まると、シートバッティングや紅白戦が行われた。

 

あ、ちなみに俺と丹波さん、そして純さんは1軍が確定しているので

紅白戦には出場せずに手伝いをする事になっている。

 

他の夏の大会に出た2年生と一也はシートバッティングや紅白戦でレギュラー争いをする様だ。

 

シートバッティングや紅白戦で結果を出していったのは、やはり2年生が多かった。

 

1年生も青道に来てからしっかりと身体作りをしてきたのだが、

ほとんどの1年生は2年生との差を覆す事が出来なかったのだ。

 

そんな中でも今回1軍に選ばれた1年生が数人いた。

 

ノリ、倉持、前園、白洲、そして一也の5人だ。

 

この5人と俺を合わせた6人の1年生が、秋の大会の1軍20人に入る事になる。

 

秋の大会が始まるまで後1ヶ月程だ。

 

今から楽しみだぜ!

 

 

 

 

1軍メンバーが決まった翌日、以前に練習を見学に来ていたおっちゃん…落合さんがまた来た。

 

礼ちゃんの話では落合さんとの正式な契約は秋の大会が終わってからだそうだ。

 

だけど落合さんは自発的にコーチに来てくれているらしい。

 

そんな落合さんは投手陣を中心にコーチをしてくれるそうだ。

 

落合さんは丹波さん、純さん、そしてノリと話をしていく。

 

それぞれの課題を明確にしていく為だそうだ。

 

ところで…。

 

「落合さん、俺は?」

「葉輪には特に言うことは無い。そもそも、お前のボールをキャッチャーが

 捕れなければ話にならんだろう。だから、暇だったら御幸やクリスにスライダーの

 キャッチングを練習させてやれ。」

 

そういうわけで俺は一也を相手にスライダーを投げ込む事になった。

 

「一也、行くぞ!」

「おう!」

 

一也の返事を受けて俺はスライダーを投げ込む。

 

ボスッ!

 

一也はスライダーをあまり後ろに逸らさない様になったが、

その表情は眉を寄せて納得がいっていない様だ。

 

「御幸、手だけで捕りにいくな。しっかりとコースに身体を寄せていけ。

 手だけで行くとワンバンした時に後ろに逸らすぞ。」

「はい!」

 

一也のキャッチングを横で見学しているクリスさんがアドバイスを送る。

 

一也が数球スライダーを受けた後、クリスさんと交代する。

 

「右打者のインコースに左投げのピッチャーのスライダーを要求する時、

 俺はサインを出したら直ぐに左足を横に出す。」

「左足ですか?」

「あぁ、ピッチャーが投球モーションに入ると同時に身体を寄せるためだ。」

 

クリスさんのアドバイスを一也は軽く身体を動かして確認していく。

 

「それと、スライダーを要求した時には左脇を閉める事だな。」

「左脇をですか?」

「御幸、意識しているかはわからないが、お前はミットを横の動きで使っているだろう?」

 

クリスさんの言葉を受けて一也は少し身体を動かすと、納得した様に頷く。

 

「ミットを横に使っている時、左脇が開いていないか?」

「はい、開いてますね。」

「左脇が開いていると、ワンバンに対応する為にミットを上に向けようとしても

 一瞬遅れてしまうんだ。だが、左脇を閉じておけば対応しやすくなる。」

 

一也はクリスさんのアドバイスを確認する様にミットを動かすと目を輝かせた。

 

「いいですね、これ。」

「球界の頭脳と言われた名捕手の動きだそうだ。俺も夏の大会前にこのアドバイスを

 親父からもらったんだ。」

「流石は元プロ。技術や知識の引き出しが違いますね。」

 

へ~、アニマルさんはそんな事を言ってたんだ。

 

「クリスさん、よかったんですか?俺にこれを教えて。」

「これも親父が言っていたんだが、技術や知識を誰かに教えるのは自身の感覚を

 明確に出来て、スランプやケガ等で感覚を忘れた時に新しく感覚を作り直すのに

 役立つそうだ。まぁ、わかりやすく言えば自分の成長に繋がるという事だな。」

 

クリスさん自身一度感覚を失っているからなのか、その言葉には実感が込められていた。

 

「御幸、そう言うわけだから遠慮せずに盗め。」

「…負けませんよ、クリスさん。」

 

そう言って一也は挑戦的な笑みを浮かべた。

 

その後、投げ込みを再開すると一也は俺のスライダーをいい音をさせて

キャッチングする事が出来る様になった。

 

そして時が経ち、いよいよ秋の高校野球選抜東京地区大会が始まるのだった。




これで本日の投稿は終わりです

また来週お会いしましょう

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