『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿1話目です


第107話

片岡さんから秋の高校野球選抜東京地区大会のメンバーが発表された。

 

「背番号1、葉輪!」

「はい!」

 

俺は大きな声で返事をして片岡さんから背番号を受け取る。

 

その後も片岡さんからメンバーの発表が続いていった。

 

正捕手にクリスさん。

 

1塁手に哲さん。

 

2塁手に亮さん。

 

遊撃手に俺と同じ1年生の倉持。

 

3塁手に2年生の増子さん。

 

右翼手に2年生の門田さん。

 

中堅手に1年生の白州。

 

左翼手に2年生の坂井さん。

 

これが秋の大会の基本的な野手のスターティングメンバーだ。

 

他の1軍メンバーも片岡さんから発表されていく。

 

投手は第2先発に丹波さん、中継ぎにノリ、抑えに純さんだ。

 

控え捕手には一也が選ばれた。

 

他のメンバーは1塁手控えに同じ1年生の前園が選ばれた以外は、

顔と名前が一致しないので割愛する。

 

以上のメンバーで秋の大会を戦っていく事になったぜ!

 

「夏の大会に優勝した事で多くのチームからマークされているだろう。だが、お前達も

 引退した3年に負けないだけの練習をしてきた筈だ!全力で勝ちにいくぞ!」

「「「はい!」」」

 

片岡さんの激に大声で返事をした俺達は、新しくキャプテンに任命された

哲さんを中心に円陣を組むと、青道高校野球部伝統の掛け声をしていく。

 

そして…。

 

「戦う準備は出来ているか!?」

「「「オォ―――!!」」」

 

青道の皆の心が1つになり秋の大会を戦う準備が整った。

 

よっしゃ!

 

やってやるぜ!

 

 

 

 

秋の大会で青道高校が勝ち上がっていく為の1つの懸念が投手不足だ。

 

青道は4人の投手で秋の大会を戦っていかなくてはならない。

 

そこで1人1人の投手の負担を軽くする為に継投を前提に戦っていく事になった。

 

俺か丹波さんが6回、もしくは7回を投げた後にノリが中継ぎとして投げて、

最後に純さんが抑えるというのが今大会の青道の投手の基本起用だ。

 

延長のタイブレークの際には先発しなかった時の俺か丹波さんが投げる予定である。

 

1回戦はシードだったので青道の試合は無し。

 

これは投手人数が少ない青道には好材料だとクリスさんが言ってた。

 

俺達は2回戦で戦う事になるだろう相手の試合をスタンドで見学している。

 

「どうやら財前は間に合った様だな。」

 

俺の左隣で試合を見学しているクリスさんがそう言う。

 

俺達が見学している試合、黒士舘高校の先発のマウンドに立っているのは財前さんだ。

 

「藤原先輩、財前さんの球数は?」

「5回で37球よ、御幸くん。」

 

クリスさんの左隣に座る一也が、俺の右隣に座る貴子ちゃんにそう聞いている。

 

「少ないな。」

「はい、まさに打たせて取るピッチングの見本ですね。」

 

クリスさんと一也が財前さんのピッチングをそう評価する。

 

「使っている球種はツーシームにカットボール、そしてスライダーといった所か。」

「クリスさん、財前さんはシニア時代も今みたいなピッチングだったんですか?」

 

俺の疑問の声にクリスさんが首を横に振る。

 

「いや、シニア時代の財前はフォーシームとスライダーでカウントを整えて、

 スプリットで三振を奪うピッチングスタイルだった。」

 

クリスさんの答えに俺と一也は、5回の表を無失点に抑えてベンチに笑顔で戻る

財前さんに目を向ける。

 

貴子ちゃんはスコアブックを書きながらクリスさんの言葉をメモしていっている。

 

貴子ちゃん、流石だぜ!

 

「クリスさん、財前さんがピッチングスタイルを変えたのはケガの影響ですかね?」

「それもあるだろうが、おそらくはピッチングに対する意識が変わったんだろうな。」

「ピッチングに対する意識?」

 

一也の疑問の声にクリスさんは頷いてから答える。

 

「俺も経験したが、ケガをした後は感覚が変わった。」

「はい。」

「親父のアドバイスで感覚を1から作り直したが、財前も親父からアドバイスをもらって感覚を

 1から作り直した筈だ。その時にピッチングスタイルを変える何かがあったんだろう。」

 

一也はクリスさんの言葉に納得した様に頷く。

 

打たせて取るか…。

 

俺自身は三振を奪うのが一番カッコいいと思っている。

 

でも、財前さんのピッチングも三振を奪うピッチングとは違うカッコ良さがあると思う。

 

「クリスさん、俺にも打たせて取るピッチングって出来ると思いますか?」

 

俺の言葉にクリスさんと一也が驚いた様に目を見開いた。

 

「パワプロ、ピッチングスタイルを変えるのか?」

「いや、そのつもりは無いよ。でも、財前さんのピッチングもカッコいいなと思ってさ。」

 

一也の問いに俺がそう答えると一也は苦笑いをする。

 

クリスさんと貴子ちゃんは何故か笑ってるな。

 

「フーくんらしいね。」

 

貴子ちゃんの一言に同意する様にクリスさんと一也が頷いた。

 

「葉輪、変えるのも貫くのもお前次第だ。だが、変えるつもりが無くてもああいった

 ピッチングがあるということは覚えておけ。」

「はい!」

 

俺が敬礼をしながら返事をすると、貴子ちゃんはクスクスと笑った。

 

その後、試合は財前さんが自ら2打点を叩き出し、91球という少ない球数で完投して

黒士舘高校が勝利した。

 

これで青道の相手は黒士舘に決まった。

 

試合で俺が投げるかはまだわからないけど、もし財前さんと投げ合う時は全力で楽しむぜ!




本日は5話投稿します

次の投稿は9:00の予定です

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