「片岡先生、貴方は青道高校野球部を数年ぶりの甲子園に導き、更に優勝もしました。
OB会からの突き上げの声は大きいですが、秋の大会の結果だけで辞任の答えを
出すのは早いでしょう。」
秋の大会の決勝に敗れてから翌日、片岡は青道高校野球部の監督を
辞任する形で責任を取ろうとした。
これは片岡の采配などに青道高校野球部のOB会から突き上げがあった事も理由の1つだ。
しかし、青道高校の校長は片岡が元は青道高校の生徒であったことや、
現在も教員として青道高校の生徒を導いている事で片岡を引き止めたのだ。
そんな校長に片岡は頭を下げる。
「ご厚意、感謝します。」
「マスコミやOB会には此方で対応しておきます。今は敗れて傷心の生徒達を
今一度立ち上がるために導いて上げてください。」
片岡はもう一度頭を下げると校長室を退室した。
◆
片岡が辞任の意を校長に伝えた一件の後、グランドに姿を見せた片岡に、
高島が片岡に来客がいると伝えてきた。
「久しぶりだな、鉄心。」
「榊監督!?」
榊 英二郎
青道高校前監督であり、片岡の青道高校野球部時代の恩師である。
その榊が青道高校野球部のグランドに片岡を訪ねてきたのだ。
「秋の大会、見させてもらったぜ。」
「…己の未熟を恥じるばかりです。」
神妙な表情を浮かべる片岡に対して、榊は面白いものを見るように笑みを浮かべている。
「勝ちに徹すれば教育の一環が云々言われ、教え子に機会を与えれば勝ちが云々…。
監督ってのは難しいもんだよな。」
榊の言葉に片岡は返事を返さずに頭を下げたまま黙している。
「だけどよ、教え子が成長した瞬間や、勝って心の底から喜んでる笑顔を見ちまったら、
もう止められんねぇよなぁ。」
「榊監督…。」
頭を上げて目を見開いている片岡の表情をみた榊は不敵な表情を浮かべた。
そして…。
「逃げんなよ、鉄心。」
そう言って片岡の肩に手を置いた榊は、踵を返して去っていった。
片岡は榊の姿が見えなくなるまで頭を下げ続けたのだった…。
◆
秋の大会の翌日、落合さんが正式に青道野球部のコーチになるという事で挨拶があった。
その挨拶の後はオフシーズンという事もあって各自の課題を自覚させるといった感じで、
落合さんは皆に考えさせていった。
そんな感じで皆が各々の課題を考えて少し経つと、来客があって遅れていた
片岡さんがグランドにやってきた。
なんか片岡さんの眉間の皺が和らいでいるな。
なにかあったのかな?
哲さんの号令で挨拶をすると、片岡さんの話が始まった。
秋の大会は決勝で負けたが春の選抜が絶望になったわけではない。
なので心の準備を怠らぬ様にとの事だ。
俺達が返事をすると、次に増子さんに2軍行きが言い渡された。
これは俺以外の皆が予想していたようで特に動揺は見られなかった。
増子さん本人も納得して受け入れていた。
それとレギュラーメンバーの白紙も言い渡された。
夏に甲子園で優勝した事でどこか気が緩んでいた所があるかもしれないそうだ。
なので今一度気を引き締めるためにレギュラー争いをしてお互いに切磋琢磨するようにとの事。
よっしゃ!エース争いは望むところだぜ!
え?俺は1軍当確?
解せぬ…。
まぁそんな感じでレギュラー争いに皆が燃える中で練習が始まったのだが、
そんな中で俺と純さんは落合さんに呼び出されたのだった。
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