『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿5話目です


第135話

「お~、120mは飛んだかな?」

「いや、130mは飛んでると思うけど…。」

 

沢村が投げ込んだインハイのボールを弾き返した東さんの打球は、

間違いなくホームランといえる程に飛んでいった。

 

その飛距離に東条は口があんぐりと開いたままになっている。

 

「残念だったね、ノリ。東さんに頭を下げてもらえなくて。」

「もし下げられたらって考えたら吐きそうだったよ。」

「ハッハッハッ!」

 

苦笑いをしながら胃を押さえるノリの姿に俺は笑ってしまう。

 

「東条くん、貴方も東くんと1打席勝負してみる?」

 

礼ちゃんが微笑みながらそう言うと、東条は腕を組んで悩みだした。

 

「東さん程の打者と勝負出来るのはやりがいがあるんですけど…

 俺、葉輪さんのピッチングも見たいんですよねぇ。」

 

東条の言葉を聞いた礼ちゃんが俺の方を見てきた。

 

「葉輪くん、大丈夫かしら?」

「俺は大丈夫だけど、時間は大丈夫なの?」

「えぇ、問題ないわ。元々、東条くんと沢村くんには葉輪くんのピッチングを見てもらおうと

 思って、学校見学の時間に余裕を持たせていたのよ。」

 

おぉ!流石は礼ちゃん!出来る女性だぜ!

 

礼ちゃんの言葉で東条は俺のピッチングを見る事に決めたので、

俺は一也に声を掛けて肩を作り始めたのだった。

 

 

 

 

東にホームラン級の当たりを打たれた沢村は、今もまだ打球の方向を呆然と見続けていた。

 

「小僧。」

 

そんな沢村に東が声を掛けると、沢村はハッとした様に勢いよく東の方に振り向いた。

 

「勝負は俺の勝ちやな。」

 

腕を組んで不敵に笑う東の姿に、沢村はぐぬぬとリアクションを見せる。

 

「もう1回!もう1回勝負!」

「俺はそれでもよかったんやが、お前以上に勝負したい相手が準備をしとるからな。

 泣きの1回は無しや。」

 

東は顎でパワプロの方を示すと、それにつられて沢村もパワプロを見る。

 

「…誰?」

 

沢村のその一言に、東は膝が抜けてしまった。

 

「葉輪を知らんのかい!?世間知らずが過ぎるやろ!」

「あー!?田舎者だからってバカにするな!」

「しとらんわ!アホか!」

 

沢村のオーバーリアクションに東は血が疼いてついついツッコミを入れてしまう。

 

頭をガシガシと掻いた東は改めて沢村に目を向ける。

 

「なんだ?!もう1回勝負するなら受けて立つぞ!」

「やらんわ!」

 

東の返事に沢村はブーイングをする。

 

(ったく、なんとも憎めん奴や。)

 

そう考えながら東は苦笑いをした。

 

「小僧、たしか沢村やったな?」

「おう!」

「最後のインハイ、あれは良かったで。」

 

東がそう言うと、沢村は満面の笑みを見せる。

 

「だよな!あの1球は最高に手応えがよかった!」

「まぁ、俺は打ったんやけどな。」

「くっそ―――!!」

 

沢村は両手で頭を抱えて身を捩る。

 

そんな沢村の反応に東は大笑いをした。

 

「やっぱりもう1回!もう1回勝負!」

「やらへん言うてるやろう。」

 

苦笑いをしながらそう言う東に、沢村はまたしてもぐぬぬと悔しがる。

 

「沢村、お前もピッチャーならよう見とけ。」

 

東のその言葉に沢村はキョトンとする。

 

「あいつは葉輪 風路。今の高校野球界で間違いなく日本一のピッチャーや。」

「日本一?」

 

東のパワプロに対する評価に、沢村は懐疑の目を向ける。

 

「俺でもどこまで葉輪に食い下がれるかわからへん。せやけど、お前にホンマもんの

 怪物のピッチングを見せられる様に頑張ったるわ。」

 

沢村は息を飲んだ。

 

沢村は東との1打席勝負で、東は間違いなく自分が今まで対戦したバッターの中で

一番の強打者だと確信している。

 

その東をして、どこまでやれるかわからないというパワプロのピッチングが

全く想像出来ないのだ。

 

沢村は御幸とキャッチボールをして肩を作っているパワプロを見る。

 

すると、沢村はキャッチボールをしているパワプロのボールを見ただけで

ゾクリと寒気の様なものを感じたのだった。




これで本日の投稿は終わりです

また来週お会いしましょう

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