紅白戦が終わって1週間、練習試合の日がやって来た。
練習試合は基本的に秋の神宮大会の日程に合わせて組まれてるんだけど、
1軍が5試合、2軍と3軍はそれぞれ3試合組まれてるそうだ。
2軍と3軍は監督代行として落合さんが指揮を取り、太田部長が補佐するとの事。
太田部長は紅白戦が終わってからは落合さんの補佐をするために、
毎日資料とにらめっこしていたらしい。
頑張れ、太田部長!
さて練習試合なんだけど、俺は基本的に外野での出場となった。
これは丹波さんと純さんが第2先発の座を争う事が関係している。
二人がそれぞれ2試合で先発を担当して、その結果で判断するらしい。
まぁ、展開次第で抑えとして1イニングだけ投げさせてくれる場合もあるとの事だが、
俺の投手としての出番は基本的に最後の5試合目だけだってさ。
う~ん、残念。
そんな感じで俺は8番レフトで1試合目の練習試合に出場する事になった。
投手として投げられないのは残念だけど、試合を楽しむぜ!
◆
「おい見ろよ、葉輪がレフトにいるぜ。」
青道高校で行われる練習試合を見学に来た野球部OBの一人がそう話す。
「本当だ、ケガでもしたのか?」
「エースを外野守備に回して温存って感じだろう?」
練習試合を見学に来た野球部OB三人組は口々に憶測を話す。
「はぁ…葉輪のピッチングが見たかったなぁ。」
「でもよ、丹波も悪くねぇだろ?あいつも普通ならエースって言われても不思議じゃないぜ。」
「まぁ、葉輪がいるからエースにはなれねぇだろうな。」
「ついてないよな、丹波も。」
三人組が話していると、対戦相手の高校がグラウンドにやって来た。
「お?対戦相手が来たぜ。えっと…あのユニフォームはどこのだ?」
「えっと…鵜久森?たしか東東京地区の高校だったよな?」
「うわ、なんだあれ?リーゼントがバッチリ決まってるじゃん。」
「ヤンキーかよ…大丈夫か?」
青道野球部OB三人組が心配する中で、鵜久森の者達は準備を始めたのだった。
◆
「ちっ、葉輪の野郎が先発じゃねぇのかよ。」
「仕方ないよ、梅宮。青道さんにも事情があるんだから。」
愚痴を溢したリーゼントが特徴的な男は鵜久森高校のエース、梅宮 聖一である。
そして梅宮を諌めた車椅子に乗っている青年は、鵜久森高校で実質的に
監督をしているマネージャーの松原 南朋だ。
「梅宮、大丈夫だよね?」
「あぁ、今度は絶対に折れねぇ。」
梅宮はリトル時代にパワプロが所属していた丸亀リトルと対戦した事があるのだが、
その時に梅宮はパワプロの投球に心が折れてしまい、一時期野球から離れてグレていた。
だが、リトル時代に知り合った松原が交通事故にあっても、野球と関わるのを
諦めないのを見て、梅宮の野球熱が再燃したのだ。
「前座の奴等はさっさとボコボコにして葉輪を引きずりだす。そうだろ、南朋?」
「うん、期待しているよ、梅宮。」
松原は膝の上に乗せているノートに手を置いて、梅宮に微笑む。
「みんな、集まって。」
「おう!みんな集合だ!」
松原の代行として梅宮が鵜久森のメンバーに集合をかけた。
「みんな、甲子園で優勝した青道と練習試合を出来る機会はそんなに無い。
でも、胸を借りるつもりじゃダメだ。勝ちに行くよ。」
「「「応!!!」」」
松原の檄に応えた鵜久森高校のメンバーは、大きな声を出しながら
試合前の練習を始めたのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。