『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第148話

鵜久森との練習試合の3回の裏、俺はソロホームランを打った。

 

練習ではそこそこ打てているんだけど、試合形式では青道に入ってから初めてじゃないかな?

 

ダイヤモンドを一周してホームベースに戻ってくると、次打者の丹波さんが手を上げていたのでハイタッチをした。

 

イエーイ♪

 

ベンチに戻っても皆とハイタッチをしたぜ!

 

「葉輪、何を打ったかわかるか?」

「はい!インハイのフォーシームです!俺にはあの縦変化のボールは投げてきませんでした!」

 

俺の言葉を聞いた片岡さんは頷いてからベンチの皆に振り返る。

 

「鵜久森は勢いに乗ったら稲城と互角に渡り合えるチームだ。一点取ったからといって緩めずにこのまま攻め続けるぞ!」

「「「はい!」」」

 

 

 

 

「梅ちゃん…。」

 

パワプロがホームインをした後、鵜久森のキャッチャーはマウンドに向かった。

 

梅宮がパワプロが打った打球の方向を見たまま動かなかったからだ。

 

「…あぁ、こうでなきゃな。」

「え?」

 

パワプロがホームインしてから俯いていた梅宮が両手を腰に当てて話し出す。

 

「リトルの時、俺は葉輪のプレーを見て心が折れちまった。今の一発でなんか戻ってきたんだなって実感してよ。なんか、嬉しくなっちまったんだ。」

「梅ちゃん…。」

 

俯いていた梅宮が顔を上げる。

 

「やっぱ葉輪の野郎は怪物だ。でもよ、やりがいがあるよな。」

 

そう言うと梅宮は笑顔になった。

 

「心配かけて悪かった。もう大丈夫だからよ。」

「はは、最初から心配なんてしてないよ、梅ちゃん。」

「おう!ここからはパワーカーブをガンガン使っていくからな!後ろに逸らすなよ!」

 

梅宮のグローブとミットを合わせた鵜久森のキャッチャーがキャッチャーボックスに戻っていく。

 

「ふぅ、やられっぱなしじゃカッコつかねぇよなぁ…。」

 

そう呟いた梅宮は青道ベンチにいるパワプロに目を向ける。

 

「ぜってぇに引き摺りだしてやる。首を洗って待ってやがれ!」

 

ドンッと胸を叩いて気合いを入れた梅宮は、後続のバッターをしっかりと抑えたのだった。

 

 

 

 

4回の表、鵜久森の攻撃は4番の梅宮から始まった。

 

丹波は新変化球のナックルカーブを使ってカウントを整えて勝負にいったが、梅宮に上手く右中間に運ばれるツーベースヒットを打たれてしまった。

 

ノーアウトで得点圏にランナーを置くと、鵜久森ベンチから歓声が上がる。

 

続く鵜久森の5番バッターに対する初球、クリスは様子見で一球外すが、この一球を見ていた松原が動いた。

 

松原のサインに頷いた鵜久森の5番バッターが、バットを指一本分短く持って構える。

 

丹波が2球目を投じようと動いたその瞬間、ランナーの梅宮がスタートを切った。

 

鵜久森の5番バッターは短く持ったバットでボールを叩きつけるようにしてスイングをする。

 

松原が出したサインはエンドランだったのだ。

 

梅宮がスタートを切ったのを見た青道のサードを守る前園が3塁に入った事で、三遊間に大きな隙間が出来てしまった。

 

鵜久森の5番バッターはその隙間を狙って打球を転がした。

 

バットを短く持ちつつも鵜久森の5番バッターがバットを振り切った事で、球足の速いゴロがレフト前へと抜けていく。

 

エンドランでスタートを切っていた梅宮は迷わずに3塁ベースを蹴ってホームに向かった。

 

(これで…同点!)

 

梅宮はホームに向かって全力で走りながら得点を確信する。

 

だが…。

 

「回りこめぇ!」

 

その声が聞こえた瞬間、梅宮の目にボールを捕球したクリスの姿が映った。

 

反応良く前に詰めていたパワプロが迷わずにバックホームをしたのだ。

 

梅宮はクリスのタッチを掻い潜ろうと回りこむ様にして滑る。

 

結果は…。

 

「アウト!」

 

ホームのクロスプレーはアウトになったがプレーはここで終わらない。

 

鵜久森の5番バッターがパワプロが直接ホームに返球したのを見て2塁を狙ったからだ。

 

梅宮にタッチをしたクリスは素早く立ち上がると2塁へ矢の様な送球をする。

 

そして…。

 

「アウト!」

 

ノーアウト、ランナー2塁のチャンスは変則的なダブルプレーでツーアウト、ランナー無しになってしまった。

 

梅宮は立ち上がるとレフトのパワプロを見る。

 

左腕を高々と上げるパワプロを見た梅宮は、苦笑いをしながらベンチに戻っていったのだった。




次の投稿は13:00の予定です。

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