『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿5話目です。


第150話

「すまない、クリス。」

「丹波、気にするな。」

 

鵜久森との練習試合の5回の表、4回の表と同じノーアウト1、3塁の状況を作られた丹波は、鵜久森のバッターに犠牲フライを打たれて同点に追い付かれてしまった。

 

「あそこで俺がナックルカーブのサインに首を横に振らなければ抑えられていたかもしれない。」

「それは結果論だ。今は後続を抑える事を考えろ。」

「あぁ。」

 

力強く頷いた丹波の様子に大丈夫だと確信したクリスは、丹波に先程の一球の真意を問う。

 

「丹波、気にするなといっておいてなんだが、なぜさっきは首を横に振った?」

「…正直に言えば、葉輪のプレーにあてられて真っ直ぐで力勝負をしたくなった。」

「葉輪のプレーに?」

 

驚くクリスに丹波は決まりが悪そうに頬を掻く。

 

「おかしいか?」

「いや、丹波がピッチャーらしい欲求を持つようになって安心した。」

 

そう言って微笑んだクリスはミットで丹波の胸をポンッと叩く。

 

「残りアウト2つ、頼むぞ。」

「あぁ。」

 

キャッチャーボックスに戻るクリスを見送った丹波は大きく息を吐きながら帽子を被り直す。

 

(ピッチャーらしい欲求か…俺自身、こんな気持ちを持つようになった自分に驚いている。)

 

丹波はスパイクで足場を均すともう一度大きく息を吐く。

 

(葉輪、まだお前の様に笑うことは出来ないが、俺も少しずつ、投げるのを楽しめる様になってきたぞ。)

 

プレートに足を掛けた丹波はクリスのサインに頷くと、同点に追い付かれた影響を感じさせずにしっかりと投げ込んでいくのだった。

 

 

 

 

5回の表に同点に追い付かれた青道だったが、5回の裏に直ぐに2点を追加して3ー1と鵜久森を突き放す。

 

だが、6回の表に鵜久森が再び同点に追い付く粘りを見せた。

 

6回の裏ではツーアウトながら四球で出塁した倉持がすかさず盗塁を決めると、バッターの小湊がライト前に落ちるタイムリーヒットを打って4ー3と三度勝ち越した。

 

続く青道のバッターである結城を梅宮が気合いの投球で抑えると、7回の表の鵜久森はセーフティバント等を用いて積極的に仕掛けてチャンスの場面を作り、梅宮の一打で4-4の同点に三度追いつく。

 

7回の裏、先頭打者のクリスがヒットで出塁すると、5番バッターも続けてヒットを打ってノーアウト、1、2塁のチャンスを作ったのだが、6番バッターの前園がゲッツーに打ち取られてツーアウト、ランナー3塁となってしまった。

 

続く青道の7番バッターが四球で塁に出ると、鵜久森バッテリーは8番のパワプロを敬遠した。

 

そして満塁で投手の丹波と勝負という場面で、青道の監督である片岡は御幸を代打に送った。

 

御幸はここでタイムリーヒットの結果を出して、青道は2点を追加し6ー4と鵜久森を四度突き放す。

 

御幸の次打者である倉持が凡退した事で7回の裏の攻撃は2点を追加して終わってしまったが、8回の表に鵜久森ベンチと見学している青道OBがざわめく出来事が起こる。

 

それはレフトに向かうはずのパワプロがマウンドに立ったからだった。

 

 

 

 

「葉輪、残り2回、お前に任せる。」

「はい!」

 

練習試合の1戦目から出番が来たことで俺のテンションが上がる。

 

出番が無くなったノリは少し悔しそうに苦笑いしているな。

 

ノリ、すまんな。

 

「レフトは白州、クリスは御幸と交代だ。残りの練習試合でも起用を色々と試していく。ベンチの者達も気を抜かずにしっかりと準備をしておけ。」

「「「はい!」」」

 

片岡さんの話が終わって貴子ちゃんから投手用のグローブを受け取ってマウンドに向かうと、一也がマウンドにやって来て俺に話しかけてきた。

 

「パワプロ、残りアウト6つ、ランナーを一人も出さずに全部三振を狙うぞ。」

「お?いいね!望むところだぜ、一也!」

 

俺は一也と笑顔でグローブとミットを合わせると、初めてのリリーフのマウンドを楽しんでいったのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。

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