片岡さんから春の選抜大会への出場が決定した事が発表された。
秋の選抜東京地区大会のリベンジに燃える皆の表情が一気に引き締まったぜ!
その日からの練習は皆気合いが入っていた。
まぁ、いつも気合いが入った練習をしているんだけどね。
季節は冬となり11月も末に差し掛かった頃、俺を含めた1軍投手陣は屋内練習場で投げ込みをするようになった。
秋以降の寒い季節は野球ではオフシーズンと呼ばれており、投手にとっては肩が冷えやすくて無理な投げ込みは控えるべき時期である。
その為、この季節は外での投げ込みは極力やらない様にしているので、こうして屋内練習場で投げ込みをするようになったわけなのだ。
そういうわけで屋内練習場で投げ込みをするために移動をして肩を作っているのだが、その時に丹波さんが俺に話し掛けてきたのだった。
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「葉輪、ちょっといいか?」
「何ですか、丹波さん?」
俺が返事をすると、丹波さんはボールを片手に近寄ってきた。
「俺にフォーシームの握りを教えてくれないか?」
「フォーシームの握りですか?」
「練習試合でも実感したんだが、俺はフォーシームを痛打される確率が高い。今まではピッチングに幅を作る為に変化球を磨いてきたんだが、この冬は基本に立ち返ってフォーシームを磨こうと思ったんだ。」
へぇ~、色々と考えているんだなぁ。
「いいですよ、丹波さん。」
「そうか、じゃあ見せてくれ。」
丹波さんが差し出してきたボールを受けとると、同じ屋内練習場で肩を作っていた純さんとノリ、そして俺達のボールを受けてくれるキャッチャーの人達までもが俺の所に集まってきた。
「これが俺のフォーシームの握りです。」
俺のフォーシームの握りを見た丹波さん、純さん、ノリの三人が驚きの表情を見せる。
「葉輪は指をくっ付けているのか…。」
「パワプロ、これでボールをコントロール出来るの?」
「川上、パワプロは実際にピンポイントのコントロールをしてるじゃねぇか。」
丹波さん、ノリ、純さんが俺のフォーシームの握りを見て口々に話し出す。
丹波さんのフォーシームの握りは指二本ぐらい間隔を空けていて、純さんは指一本ぐらい間隔を空けている。ノリは丹波さんと同じぐらい間隔を空けているみたいだ。
「葉輪、この握りはいつからやっているんだ?」
「リトルの時にクリスさんに教えてもらってからですね。」
「クリスに?」
俺の言葉で俺を除いた皆がクリスさんの方を向いた。
「指を閉じればキレが、開けばコントロールが良くなるって聞いた事がありますけど、どうしてクリスさんはリトルの時にパワプロにこの握りを教えたんですか?」
一也がクリスさんにそう聞くと、クリスさんは腕を組んで話し始めた。
「当時の葉輪はフォーシームすら知らない素人だったんだ。そこでコントロールに期待出来ないと思った俺はキレを優先してその握りを教えたんだ。」
「それが今となってはピンポイントのコントロールと抜群のキレを両立したあのフォーシームに成長したわけですか。」
クリスさんと一也が話している間も投手陣は握りの感触を確かめている。
「確かにこの握りはボールを強く叩けそうだが…コントロール出来るのか?」
「とりあえず、やってみねぇとわかんねぇだろ。」
「今の握りと投げわけが出来れば武器にならないですかね?」
この後の投げ込みはフォーシームを中心に行われた。
その結果、丹波さんとノリはフォーシームの握りを指一本ぐらいの間隔に変えたことで、以前に比べてフォーシームが伸びる様になった。
そして純さんは指の間隔を微調整した事で、フォーシームのノビはそのままにコントロールの向上に成功したのだった。
次の投稿は午後3:34の予定です。
イベント的には丹波と川上が『ノビ4』を習得して、伊佐敷が『低め〇』を習得したという感じです。
打者の方の成長イベントはどうしようかなぁ…。