「へ~、初めての試合で失点0かぁ…頑張ったなぁ風路くん。」
紅白戦が終わって家に帰って来ると、フー君はシャワーを浴びて
ご飯を食べたら直ぐに寝てしまったわ。
そして、今は葉輪家に私の家族も集まって私が書いたスコアブックをお父さん達が見ている所ね。
「でも、三回でこれはちょっと球数が多いよなぁ。」
「いやいや、葉輪さん。立派なもんですって。」
おじ様(フーくんのお父さん)と私のお父さんがそう話している。
「風路の課題はコントロールかな?」
「変化球を覚えても面白そうですね。」
「変化球かぁ…最近、日米野球で良く見るようになったムービング系がいいかな?」
「メジャーに渡った日本人投手がバッターを唸らせているあのフォークも捨てがたい。」
おじ様とお父さんがそんな風にフーくんが覚えるべき変化球の事を話している。
私はフーくんが覚えるって言った変化球を知っている。
残念ね、お父さん達…フーくんはその変化球を覚えないわよ。
私はお父さん達が置いたスコアブックを手に取る。
スコアブックに目を通していくと私はフーくんの勇姿を思い出して微笑むのだった。
◆
初めての試合を終えてからは野球が更に楽しく感じるようになった。
もっと上手くなりたいと強く思う。
さぁ、クリスさん!もっと色々と教えてください!
え?基礎が出来てから?
走り込み行ってきます!
そんな感じで日々が過ぎていき夏になるとリトルリーグの公式戦である選手権大会が始まる。
結果だけ言うと東京地区大会準決勝で松方リトルというチームに負けた。
来年、俺が投げてリベンジしてやるぜ!
選手権大会が終わると6年生の半分以上がチームを去っていく。
中学受験に専念するためらしい。
幾人か残った6年生も秋の大会が終わるとチームを去っていった。
ちなみに春のリトルリーグ選抜大会の予選となる秋の大会は三回戦で負けた。
夏の大会で主力だった6年生が多く抜けたのが原因だろうな。
6年生全員がチームを去るとレギュラーの座を勝ち取ろうと皆が練習に熱心になっていく。
俺だって負けないぜ!
6年生が去った事で監督の手が空いたのだ。
これで投げ込み以外の練習が出来るぜ!
さぁ、監督!俺はどんな練習をやればいいんですか!?
え?俺は走り込みがメイン?
ならばチームの誰よりも走ってやるぜ!
そんな感じで走り続けて秋が過ぎ、冬を越え、春が来る。
俺は4年生、貴子ちゃんは5年生になると今年のレギュラー選抜の紅白戦が始まるのだった。
◆
「よぉーし!それじゃ夏の公式戦のレギュラーを発表するぞ!」
紅白戦が終わりグラウンドの後片付けを終えると解散前に監督がそう話し出した。
「先ずは野手からだな…キャッチャー!クリス!」
「はい!」
クリスさんが普段は聞くことのない大きな声で返事をする。
試合中の野手への声掛けとかも大きな声を出しているのになんでいつもは小声なんだろうな?
そんな事を考えていると監督の野手のレギュラー発表が終わり投手の発表となる。
「続けて投手のレギュラーを発表するぞ!投手のレギュラーだが…。」
監督がそう言って少し間を空ける。
こい!
俺の名前来い!
「うちは投手の人数が少ないから4年生以上の奴は全員レギュラーだ!少ないと言っても
今年の3年生は投手志望がいつもより多いけどな!ハッハッハッ!」
監督の言う通りに今年の3年生は投手志望が5人もいる。
間違いなく日本人野球選手のメジャー進出のキッカケとなったあのパイオニアの影響だろうな。
だって、3年生達がブルペンで投げる時のフォームが思いっきり腰を捻っているんだもん。
それはそれとして…。
監督!俺の名前を呼んでくれと意気込んでいた俺の思いを返して!
「そういう訳だから投手の皆はいつでもいけるように準備しておいてくれよ。」
「「「はい!」」」
俺を含めた投手達が気合いを入れて返事をする。
「レギュラーに選ばれなかった皆もチームの一員として大会では応援してくれよ!解散!」
「「「お疲れ様でした!」」」
監督の号令で解散すると俺はいつも通りに貴子ちゃんと一緒に帰っていく。
「フーくん、公式戦頑張ってね!」
「おう!頑張るぜ!」
その後は貴子ちゃんと色々と話しながら歩いていく。
そして、時が過ぎて今年の夏のリトルリーグ選手権大会が始まる。
いよいよ俺が公式戦デビューをする時が近づいてきたのだ。
よっしゃ!やってやるぜ!
これで本日の投稿は終わりです
また来週お会いしましょう^^