『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第168話

青道野球部に入部した1年生達の体力測定はポジション毎に分かれた。

 

俺はお手伝いとしてブルペンに移動して、1年生投手達のピッチングを記録していく。

 

ブルペンには去年と同じく片岡さんと礼ちゃんが来た。

 

野手の方は落合さんと太田部長が見ていくらしい。

 

ちなみにブルペンキャッチャーは3年生の宮内さんだ。

 

肩を作り終わった1年生達が礼ちゃんに名前を呼ばれてピッチングをしていく。

 

1人、2人とピッチングが終わると、遠投で120mを投げた1年生の番になった。

 

遠投で120mを投げる1年生のその初球…。

 

パァン!

 

キャッチャーをしている宮内さんが立ち上がる程の高めに外れるボール球だった。

 

でも、球速は140km台は出ている様に見えた。

 

コントロールはあれだったけどいいボールを投げるなぁ。

 

そんな風に思いながらブルペンのマウンドに立つ…えっと、降谷だっけ?

 

まぁ、そいつの方を見ると、なんか驚いていた。

 

ん?どうしたんだ?

 

宮内さんからの返球を受けた降谷が投球モーションに入る。

 

2球目もまた高めに外れた。

 

しかも今度は宮内さんがジャンプする程の高めだ。

 

宮内さん、ナイスキャッチ!

 

コントロールがあまり良くないのかなと思って降谷の方を見ると、また驚いていた。

 

緊張してボールを上手くコントロール出来ないのを驚いているのかな?

 

その後も降谷はピッチングを続けていったんだけど、降谷は変化球の持ち球が1つもなく、しかもストライクゾーンに投げ込めたフォーシームは10球中2球だけだった。

 

う~ん、変化球の習得よりもコントロールの改善が先かな。

 

そんな事を思いながら記録を書き込んでいると、片岡さんが口を開いた。

 

「葉輪、降谷のピッチングを見て何かあるか?」

 

え?俺に聞くの?

 

俺、クリスさんみたいに専門的な知識はありませんよ?

 

そう言ってみたものの、片岡さんに思うところを言ってみろと言われてしまった。

 

まぁ、いいか。

 

「えっと、降谷だよね?」

「はい。」

「青道に来る前はどんな練習をしてたの?」

「1人で的当てをやってました。」

 

1人で的当て?

 

俺は貴子ちゃんと行ったバッティングセンターの9分割された的当てを思い浮かべる。

 

…もしかして?

 

「その的当てってマウンドはあった?」

「無いです。」

「そっか。」

 

うん、多分だけどコントロールが悪い原因はリトル時代の俺と同じかな。

 

「降谷、足下を見てみな。」

「足下?」

 

降谷は俺の言葉に素直に従って足下を見る。

 

「何がある?」

「マウンドです。」

「うん、それじゃキャッチャーの方を見て、今まで練習をしてきた感じで的を思い浮かべてみて。」

 

降谷が宮内さんの方をジッと見る。

 

「的はどこにある?」

「キャッチャーの人の頭の上…。」

「うん、降谷は的当てを一杯練習したから、マウンドに立っても宮内さんの上にある的に投げちゃうんだろうね。」

 

俺がそう言うと降谷はどこかボーッとした表情から驚いた表情になった。

 

「どうすれば?」

「いっそのことホームベースに叩き付ける感じでワンバウンドを投げようか。」

「ワンバウンド?」

 

これは俺が青道の学校見学をした時に純さんにしたアドバイスと同じだ。

 

でも、目的は少し違う。

 

「うん、先ずはコントロールを気にしないで、マウンドから投げ下ろす感覚を身に付けないとね。」

「投げ下ろす…。」

 

降谷は右手の中で少しボールを回すと、プレートに足を掛けた。

 

それを見ていた宮内さんが直ぐにミットを構えると、降谷が投球モーションに入る。

 

降谷が胸を張る様にしてリリースしたボールは、ストライクゾーンの真ん中付近に投げ込まれた。

 

「あっ…ワンバウンドにならなかった…。」

 

え?ストライクゾーンに投げ込めたのを喜ばないの?

 

もしかして降谷って天然さん?

 

その後、降谷は10球程投げ込んだんだけど、ストライクゾーンに投げ込めたのは真ん中付近に投げた1球だけだった。

 

そして、他の1年生が待っているからという事でマウンドを下ろされると、降谷は目に見えてわかる程に落ち込んだのだった。




次の投稿は13:00の予定です。

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