夏の公式戦が始まり、いよいよ俺のデビュー戦だと意気込んだものの
一回戦では俺の出番が無かった。
というのも、監督が決めた投手の役割のせいだ。
うちのチームの投手人数は俺を含めて5人。
6年生が2人、5年生が2人に4年生の俺が1人だ。
そう言った事情で監督が決めたそれぞれの役割はこういった感じだ。
6年のエースを先発にして、もう1人の6年生はクローザー。
5年生の2人は中盤から終盤の勝負所での中継ぎを担当。
そして、余った俺は第2先発をやる事になった。
公式戦未経験の俺に、難しいポジションである中継ぎや抑えは任せられないという事だな。
だが、消去法であれど先発が出来るのは嬉しい。
そう言う訳で二回戦の先発は俺である。
相手は江戸川リトルというチームらしい。
よっしゃ!やってやるぜ!
◆
「クリスさん、どうしたんですか?」
試合前にクリスさんがメンバー表をジッと見ている。
「相手チームの捕手が気になってな…。」
「捕手?」
クリスさんの言うことが気になって俺はメンバー表を覗き込む。
「えっと、御幸 一也…4年生?」
「あぁ、お前と同い年だ。」
へ~、4年生で試合に出るなんて御幸とかいうのもやるじゃないか!
「葉輪、江戸川リトルはそれほど有名なチームというわけではないが…油断するなよ?」
「オッス!でも、俺はいつだって全力で野球を楽しむだけですよ!」
俺の宣言にクリスさんが苦笑いをする。
そんな感じでクリスさんと話していると、相手チームのグラウンド練習が終わり
俺達の練習時間となった。
「葉輪、いくぞ。」
「はい!」
クリスさんに返事をしながらマウンドに向かう途中で、俺は自身の状態を確認する。
基礎能力
最高球速:75km(※105km)
制球:D
スタミナ:E
変化球:カーブ1(※所属カテゴリーにおける成長限界:3)
これが今の俺の投手能力だ。
一年前から球速が10km上がって、制球が2段階、スタミナが1段階成長した。
変化球は7段階ある中で1と最低の数値だが、ポイントが足りなくて現状これが精一杯なのだ。
そして、俺が覚えた変化球はカーブだ。
このカーブなのだが、カーブの種類は4種類しか無かった。
その4種類はこんな感じだ。
『カーブ』
『パワーカーブ』
『スローカーブ』
『ナックルカーブ』
俺の拙い知識では『ドロップ』とかあった気がしたんだが、能力で覚えられる物は
この4種類だけだった。
どうやら今生では縦変化のカーブは『ドロップ』等の別の名称は無くて
カーブで統一されているらしいのだ。
なので、速いカーブが『パワーカーブ』で遅いカーブが『スローカーブ』と
区別されているぐらいでドロップとかいう呼び方はない。
後は握りがハッキリと違う『ナックルカーブ』があるぐらいだ。
投手能力の確認はこのぐらいにして、次は野手能力の確認をしよう。
基礎能力2
弾道:1
ミート:G
パワー:G
走力:E
肩力:E
守備:F
捕球:F
うん、野手能力は大して成長していないんだ…。
だって!ノックとか打撃練習をしないで、投げ込みと走り込みばっかりだったんだもん!
そのせいで野手能力にまで回すポイントがほとんど無かったのだ。
こんな所が現状の俺の能力である。
「葉輪!」
おっと、クリスさんが座ってボールを要求している。
俺はクリスさんのミット目掛けてフォーシームを投げ込む。
一年前に比べてずっとよくなったコントロールは、狙い場所からボール2つ分ずれたぐらいで
クリスさんのミットに納まった。
パンッ!
いい音をさせて捕球してくれるクリスさんのキャッチングに、俺は自然と笑顔になる。
そして俺達、丸亀リトルのグラウンド練習も終わって両チームが整列をする時間となる。
俺は早く試合がしたいとウズウズしながら挨拶をするのだった。
「「「お願いします!」」」
本日は5話投稿します
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