第1話☆
女神様にホームランされて目が覚めると幼児になっていた。
あ、ありのまま今起こった事を話すぜ…。
と、ネタに走ってしまいそうになるほど吃驚したが、次第に混乱は治まっていく。
記憶が統合されていったとでも言えばいいんだろうか?
現状を当たり前のものと認識し始めたのだ。
「俺は葉輪 風路(はわ ふうろ)、今年3歳でこれから幼稚園に入園する所っと…。」
なんとなく思い出せる事を呟いてみると不思議と受け入れる事が出来た。
「これも女神様のおかげなのかな?」
かっ飛ばされた事は甚だ遺憾ではあるのだがこうして転生させてもらった以上
受け入れて生きていくしかないだろう。
「さて、先ずは特典の確認でもしようかね。」
そう呟いて俺は、自分の中にある感覚を頼りに特典を使う。
今生の父さんは仕事に行っているし、母さんは台所にいるから問題無いだろう。
俺の目の前にゲームのメニュー画面のような物が浮かび上がった。
勿論、これは俺以外の人には見えない物である。
ご都合主義バンザイ。
基礎能力
最高球速:?km
制球:?
スタミナ:?
※一定年齢に達するまで基礎能力の表示、及び成長は出来ません。
「おろ?」
そう表示された事で疑問が口に出てしまう。
最後の注意書きの様なものから察する。
「なるほど、確かに幼児が160kmの豪速球を投げたりしたらおかしいもんなぁ…。」
努力をしたら実るけど、あくまでも人の範疇でと言った所なのだろう。
「まぁ、それでも十分にチートだから文句は言えないな。」
俺はメニュー画面を別のページに切り替える。
現在使用可能ポイント
筋力:500
敏捷:250
技術:500
変化球:0
精神:500
※金特殊能力の取得条件を満たした為、ボーナスポイントを取得しました。
「ファッ!?」
吃驚し過ぎて変な声が出てしまった。
「あら、フー君。どうしたの?」
俺の声に反応して台所にいた母さんが来てしまった。
やべぇ…なんとか誤魔化さないと。
「あのね、黒くてカサカサしたのがいたからビックリしたんだ。」
俺の言葉を聞いた母さんは「あらあら」と言いながら履いていたスリッパを左手に取った。
すまぬ…罪無き油虫よ…。
それはさて置き『メニュー』の再確認だ。
※金特殊能力の取得条件を満たした為、ボーナスポイントを取得しました。
このように表示されているので何かログが残っていないか『メニュー』を弄ってみる。
目線だけで操作出来るのはとてもありがたい。
空中に手を伸ばしてアレコレしていたら痛い奴だと思われるからな。
※『鉄腕』の取得条件を満たしました。
※『鉄人』の取得条件を満たしました。
お?あった。
どうやらこれがポイント取得の原因らしい。
俺はこの金特殊能力なるものの詳細を確認する。
『鉄腕』
・投球等の動作による怪我に非常に強くなる特殊能力である。
・この能力を取得すると練習や試合での投球で怪我をしなくなる。
・但し、ピッチャー返し等の打球が身体に当たった場合等はその限りでは無い。
※取得条件:3年間1度も怪我をしない事。
おぉ!めっちゃ良い能力やん!
思わず似非関西弁が出るぐらい素晴らしいものだ。
そして、どうやら俺の意識が無い間にこの取得条件を満たしていたようだ。
俺はもう1つの能力の詳細を見てみる。
『鉄人』
・怪我や病気に非常に強くなり、回復も早くなる特殊能力である。
・この能力を取得すると練習や試合、日常に於いて外的要因以外で怪我をしなくなる。
・この能力を取得すると病気に掛からなくなる。
※取得条件:3年間1度も病気にならない事。
おぉ!これもまた素晴らしい能力だ!
3年間、しっかりと俺の世話をしてくれた両親に全力で感謝を捧げよう。
「お母さん、ありがとう。」
年齢的にやや舌足らずな言葉で母さんに感謝の言葉を告げると母さんは
少し驚いた顔をしてからスリッパを持っていない手で頭を撫でてくれた。
「フー君、どうしたの急に?」
「ん~、よくわかんない。」
俺の返答に母さんはニッコリと笑いながら頭をワシワシと撫で続けてきた。
…将来が心配になるのでそろそろ勘弁してください、ママン。
さて、メニューを見ると特殊能力は取得可能なようなので早速2つを取得するとしよう。
そう思って俺はメニューを目線で弄って特殊能力のページに切り替える。
どうやら『鉄腕』は『ケガしにくさ』の、『鉄人』は『回復』の最上位能力らしい。
目線でメニューをポチポチと操作して金特殊能力を取得するとかなりあったと思った
ポイントが全て0になってしまった。
そのうちポイント関連の事を調べないとな。
俺がアレコレと頭を悩ませていると、母さんが見事な投球フォームでスリッパを投げ込んだ。
すると、壁を這っていた油虫に直撃して見事油虫を討ち取ったのだった。
本当にいたのね、油虫…。
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