『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第203話

今年の夏合宿が始まった。

 

青道野球部の夏合宿の練習量に1年生達は余さず筋肉痛になり、ストレッチで悲鳴を上げる様になった。

 

2年生、3年生も筋肉痛になっているけど、経験から合宿時のケアはそれなりに心得ているので、1年生に比べればまだマシのようだ。

 

そんな中で俺は特殊能力の『鉄人』のおかげで筋肉痛にならないから1人元気でいるのだが、それのおかげで他の人よりも練習量が増えているんだよね。

 

経験ポイントがガッツリと増えていくぜ!

 

そんな感じで夏合宿も半分が過ぎると、今年も他校との練習試合が始まるのだった。

 

 

 

 

「今年もよろしく頼みます、片岡はん。」

「よろしくお願いします、松本監督。」

 

去年と同様に青道との練習試合にやって来た大阪桐生高校のメンバーは春の甲子園のリベンジに燃えていた。

 

「それで、今日は葉輪君が投げてくれるんやろか?」

「いえ、申し訳ありませんが、葉輪は明日の練習試合に投げさせる予定です。」

「なるほど、巨摩大さんにやな。」

 

松本は残念そうに苦笑いをしたが、今日の練習試合を去年からの青道との試合での負け癖を払拭するチャンスと捉えた。

 

「ほな、お互いに怪我人が出んようにいきましょ。」

「はい、失礼します。」

 

頭を下げた片岡が離れていくと、松本は笑みを浮かべる。

 

「さて、館の尻を叩かなあかんな。先ずは青道打線を抑えんと、夏の甲子園も優勝を持っていかれてまうからな。」

 

 

 

 

青道の1軍が大阪桐生と練習試合を始めようとしていた頃、青道の2軍は黒士館と練習試合を始めていた。

 

1回の表の青道2軍チームのマウンドに上がった沢村に、ケガを完治させて合宿に参加している小野が声を掛ける。

 

「沢村、調子はどうだ?」

「ワハハ!絶好調ですよ!」

「無理はするなよ、筋肉痛で動きが鈍っているのはわかっているからな。」

 

小野の指摘に沢村はエスパーかと疑惑を抱いて後ずさるが、そんな沢村を見て小野は苦笑いをする。

 

「黒士館の財前さんは東東京地区でトップクラスの投手だ。噂ではプロのスカウトから声を掛けられているらしいぞ。」

「プロのスカウトから!?ここで投げ勝ってボスに認めて貰えば俺も1軍にって事ですね!よっしゃ!パワプロ先輩直伝のチェンジアップでバッタバッタと打ち取ってやりますよ!」

「力んで地面に叩きつけるなよ。」

 

小野はミットで沢村の胸を軽く叩くと、キャッチャーボックスへと戻っていったのだった。

 

 

 

 

この日の練習試合は2軍、1軍共に青道が負けてしまった。

 

2軍チームの練習試合の結果は1ー5と黒士館に力負けした形だ。

 

もちろん合宿での疲労の影響もあったが、小湊 春市を除いて財前を打ち崩せなかった事が大きい。

 

1軍チームの大阪桐生との練習試合の結果は7ー8と後一歩のところで負けてしまった。

 

しかし、本調子でなかろうと負けは負け。

 

練習試合の後、片岡はあえて1軍メンバーに何も言わなかった。

 

1軍メンバーの誰もが理解していたからだ。

 

そんな1軍チームの皆が疲労で身体が重い中で、パワプロ一人がレフトで元気にプレーをしていた。

 

1番レフトで出場して5打数4安打2本塁打3打点の大活躍をした。

 

パワプロのこの成績は松本が館にこの試合の課題とある事の確認のためにインコース勝負を指示した影響も大きいが、春季大会や今回の合宿で得た経験ポイントで基礎能力を成長させたからでもある。

 

松本はパワプロのプレーを見て、パワプロが投手だけでなく打者としても怪物であると認識した。

 

そんなパワプロの活躍の裏で、倉持はセーフティバントでの出塁以外は全打席凡退と完全にスランプに陥っていた。

 

打順も8番へと下げられてしまい、明日の巨摩大との練習試合の結果次第ではレギュラーの座も危うい可能性がある。

 

それを理解している倉持は、疲労している身体に鞭を入れてバットを振り込んでいくのだった。




次の投稿は13:00の予定です。

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