『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

211 / 291
本日投稿4話目です。


第209話

夏の高校野球選手権西東京地区大会の第2回戦、青道と薬師の試合は7回の表まで進んでいた。

 

薬師高校のベンチからは7回の表の先頭バッターである轟 雷市に必死な声援が送られている。

 

そんな声援の中で薬師高校の監督である轟 雷蔵はスコアボードに目を向けた。

 

0ー9

 

7回の表の薬師の攻撃で3点取らなければコールド負け。

 

この事実に雷蔵はため息を堪えながら頭を掻いた。

 

(試合前はもう少しなんとかなると思ったんだが…現役を離れて俺の勝負勘も狂ったか?)

 

雷蔵は苦笑いをしながら打席の方に目を向ける。

 

(ったく、容赦ねぇな。完全に雷市を潰しに来てやがる。高校生のくせに可愛気がねぇ。)

 

そう思いながら雷蔵はキャッチャーボックスに座る御幸に目を向ける。

 

(1打席目も2打席目も真っ直ぐだけで雷市を三振に抑えた…。そして止めにど真ん中を3つってか?)

 

今度こそため息を吐いてしまった雷蔵は、無精髭を撫でながら雷市に視線を移す。

 

そこには特徴的な笑いをする雷市の姿はなく、日常のシャイな…素の雷市の姿があった。

 

(雷市、勝負ってなぁ怖ぇだろ?でもな、その怖ぇのを乗り越えなきゃ、野球選手になれねぇんだぜ…。)

 

息子の成長を信じて、雷蔵は雷市の背中を見守るのだった。

 

 

 

 

薬師高校との試合は9ー0で俺達、青道高校が勝った。

 

俺は7回を投げて被安打0、与四死球0、奪三振19の結果だった。

 

7回コールドだから参考記録だけど完全試合を達成だ。

 

これでポイントをガッツリとゲットだぜ!

 

そんな感じで喜んでいると…。

 

ピロン♪

 

俺の脳内に機械音が鳴った。

 

俺は反射的に能力を使ってステータス画面を開く。

 

 

※おめでとうございます。一定条件を達成したので金特殊能力の『驚異のキレ』を取得しました

 

※金特殊能力を取得したのでボーナスポイントを贈ります

 

※一定条件の達成を確認しました。特殊能力の『パワーヒッター』を取得します

 

 

うおっ!?

 

一気に2つも取得!?

 

俺は取得した特殊能力の詳細を確認する。

 

 

『驚異のキレ』

 

・キレ系特殊能力の最上位特殊能力である

・変化球の変化開始位置が非常に打者寄りになり、変化球の変化速度が上昇する

・変化球の球威が上昇し、長打が打たれにくくなる

 

 

めっちゃいい特殊能力やんか!

 

ビックリして思わず似非関西弁が出てもうたわ!

 

ふう、落ち着いて『パワーヒッター』の詳細も確認しよう。

 

 

『パワーヒッター』

 

・強振した際にホームラン性の打球が出やすくなる特殊能力である

・打球を遠くに飛ばす感覚を得る

・最上位特殊能力に『アーチスト』が存在する

 

 

『パワーヒッター』もいい特殊能力だな。

 

しかし、打球を遠くに飛ばす感覚かぁ…。

 

この2つの特殊能力の感覚に、西東京地区大会中に慣れる事が出来るかなぁ?

 

明日は休養しなきゃいけないから、明後日から感覚に慣れるとしよう。

 

さて貴子ちゃんが待ってるし、急がないとな!

 

 

 

 

青道と薬師の試合が行われた球場のスタンドには、稲城のメンバーの姿があった。

 

「最速155kmか…また速くなってるな。」

 

稲城野球部の主将である原田の呟きに、見学に来ていた稲城のメンバー全員が頷く。

 

「雅さん、試合も終わったし帰るよ。」

 

成宮が立ち上がると、それに続く様に稲城のメンバー全員が立ち上がる。

 

「鳴、決勝で青道とやるまで例のボールは封印だぞ。」

「言われなくてもわかってるよ、雅さん。」

 

成宮と並んで歩く原田が釘を刺すと、成宮は両手を頭の後ろで組みながら返事をする。

 

「言っておかないと、お前は葉輪に対抗して投げそうだからな。」

「ひでぇ!もっとエースを信じろよ、雅さん!」

 

原田と成宮のやり取りに、稲城のメンバーから明るい笑い声が上がったのだった。




次の投稿は午後3:34の予定です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。