『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です。


第212話

青道と稲城の決勝戦、両チームの先発は共にエースのパワプロと成宮だ。

 

1回の表、青道の攻撃から始まる。

 

1番バッターの小湊 亮介が左打席に入ると、成宮は初球にカットボールを投げ込んだ。

 

アウトコース寄りのやや甘めな所に投げ込まれたが、小湊は見送ってワンストライク。

 

(立ち上がりは悪くなさそうかな?)

 

普段はややスロースターター気味な成宮だが、今日の試合の立ち上がりは良さそうだと小湊は感じた。

 

成宮が投じた2球目はフロントドアのスライダー。

 

小湊は2球目も見逃してツーストライク。

 

成宮に追い込まれても小湊は落ち着いていた。

 

(さて、他のボールも見せて欲しいから、少し粘らせてもらうよ。)

 

3球目、アウトコースのフォーシームをカットしてファール。

 

4球目、真ん中低めのフォークを見逃してワンボール、ツーストライク。

 

5球目、フロントドアのスライダーをカットしてファール。

 

6球目、インローのチェンジアップをカットしてファール。

 

7球目、アウトローのカットボールを見逃してツーボール、ツーストライク。

 

初回から小湊が持ち前の選球眼とバッティング技術で粘り、今日の成宮のボールを丸裸にしていく。

 

成宮は一度プレートを外してロージンバッグを手に取った。

 

間を取られても小湊は打席を外さず、集中を切らさない。

 

そんな小湊を横目でチラリと見た原田は、小湊の成長に驚いていた。

 

(元々小技の上手い選手だったが、ここまでのバッティング技術はなかったはずだ…何があった?)

 

小湊から目を外して原田は成宮に目を向ける。

 

(だが、成長したのは鳴も同じだ。)

 

原田がサインを出すと、成宮は首を横に振った。

 

(鳴…ここで使うつもりか?)

 

原田がサインを出し直すと、成宮は首を縦に振った。

 

小さく息を吐いて原田がインコースに寄る。

 

8球目、成宮がボールを投げ込むと、小湊は球種をフォーシームと認識してスイングを始めた。

 

しかし…。

 

ガキッ!

 

バットから伝わった手応えに小湊は驚きながらも1塁へと駆け出す。

 

だが打球はセカンド正面の優しいゴロとなり、小湊は成宮に打ち取られてしまった。

 

1塁ベースを踏んでからベンチに戻る小湊はチラリと成宮を見る。

 

(俺が打ち損じた…わけじゃないみたいだね。)

 

小湊は2番打者に一言耳打ちをすると、駆け足でベンチに戻っていったのだった。

 

 

 

 

(クリスさんや一也だけじゃなくて、亮さんも面倒なバッターになったな。まぁ、俺の勝ちだけどな。)

 

小湊を打ち取ってロージンバッグを手に取った成宮は次のバッターへと目を向ける。

 

(こいつは余裕。さっさと打ち取ってパワプロと勝負。)

 

成宮の思い通りに青道の2番打者は三球三振で抑えられてしまう。

 

そして3番打者としてパワプロが打席に入った。

 

(雅さん、初球からいくよ。)

 

成宮が投げようとしているのは新たに習得した変化球…高速チェンジアップだ。

 

この高速チェンジアップを習得した経緯は怪我の巧妙と言えるものである。

 

春の甲子園で敬遠暴投した後の成宮は一時期、ピッチングにおいてコントロールが不安定になってしまった。

 

そのコントロールが不安定な時期に、特に決め球のチェンジアップのコントロールが乱れた事で成宮はチェンジアップの握りを元々の握り…中指と薬指で投げる握りに一度戻した。

 

元々投げていた握りでもブランクがあった為、成宮が想定した程にチェンジアップの球速が落ちなかったのだが、その一球を受けた原田は使えると判断した。

 

そこから原田と成宮は試行錯誤して、現在習得した高速チェンジアップへと辿り着いたのだ。

 

成宮は初球から高速チェンジアップをインコースに投げ込む。

 

高速チェンジアップをフォーシームと認識したパワプロがバットを振る。

 

ガキッ!

 

鈍い打球音と共に、打球は2塁手の正面に転がっていく。

 

2塁手が打球をしっかりと処理してスリーアウト。

 

(どうだ、パワプロ!)

 

首を傾げながらベンチに戻るパワプロの背中を見た成宮は、ご機嫌な様子でマウンドを下りていったのだった。




次の投稿は11:00の予定です。

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