パンッ!
クリスさんのミットの音がグラウンドに響き渡る。
そして…。
「ストライ――ク!バッターアウト!ゲームセット!」
審判が試合終了を告げる。
俺は、初めての公式戦でノーヒットノーランを達成する事が出来た。
「…よっしゃ―――!!」
俺は雄叫びを上げながら、両手を天に突き上げるガッツポーズを取る。
すると、チームメイトが俺を祝福するべく走って集まってきた。
「「「やったな!パワプロ!」」」
皆がバシバシと俺の背中を叩いて激励してくる。
痛いって!
だが、その痛みも興奮を煽るものにしかならない。
「丸亀リトル!整列を!」
おっと、試合終了の挨拶をしないとな!
「2―0で丸亀リトルの勝利!礼!」
「「「ありがとうございました!」」」
挨拶が終わると、チームメイトがまた俺の背中を叩こうとワラワラ集まってくる。
やめて!紅葉が出来る場所なんてもうないのよ!?
俺は逃げる様にして皆と一緒に相手ベンチに挨拶に向かう。
「「「ありがとうございました!」」」
挨拶をすると、江戸川リトルの監督の話を一言二言聞いてから自チームのベンチに戻る。
「よぉーし!お前ら!よくやった!」
「「「はい!」」」
「疲れてるだろうから細かい事は後日だ!でも、これだけは先に言うぞ!」
監督が少し溜めを作ってから言葉を発する。
「パワプロ!おめでとう!」
「ありがとうございます!」
監督の言葉にチームメイトが沸き立つ。
このまま皆と騒いでいたいが、次の試合が控えているのでベンチを空けないといけない。
なので撤収作業を始めるのだが、そこに江戸川リトルの選手の1人がやってきた。
「クリスさん、今日は負けました。」
そう言って、その少年はクリスさんに手を差し出す。
クリスさんも手を差し出して握手をする。
「御幸…だったな?」
「はい!」
「初回の失投以外、うちの打線はそっちのピッチャーの球を捉えきれなかった…いいリードだ。」
「たはっ、こっちはノーノーをやられましたけどね。」
クリスさんの言葉に御幸は苦笑いをしている。
「クリスさん、五回にピッチャーが首を横に振ったの…あれ、サインですよね?」
「さて、どうだったかな?」
「うわぁ、性格悪いっすね。」
「キャッチャーにとっては誉め言葉だな。」
「そうですね。」
そんな会話をする2人は一緒に笑っている。
同じキャッチャーとして、通じ合う何かがあるのかな?
「次は勝たせてもらいますよ。」
ニッと笑いながらそう言った御幸は、走って帰っていった。
これは、あれか?
ライバル関係成立って奴か!?
熱い展開だな!
俺も負けないぞ!
その後、家に帰りついた俺は両親と藤原家のおじさん、おばさんに試合結果を報告する。
両親達は大いに喜んでくれて、お祝いにステーキを焼いてくれた。
ひゃっほい♪
食事をしながら貴子ちゃんと、今日の試合の事を色々と話していく。
だが、腹が膨れると急激に眠気が襲って来たので、俺は先に寝ることにした。
みんな、おやすみ~。
◆
「かー!仕事休んで見に行けばよかったなぁ!」
フーくんが先に寝ると、おじ様がそう話す。
「貴子、風路くんはどうだった?」
「カッコ良かったよ、お父さん。」
私の答えを聞いたお父さんが「違う、そうじゃない」って言ってる。
野球は好きだけど、まだそこまで詳しいわけじゃないから、上手く説明できないわ。
「しかし、風路がエラーをしなきゃパーフェクトかぁ…。」
「まぁまぁ、葉輪さん。今は風路くんを誉めてあげましょうよ。」
うん!ちゃんとフーくんを誉めてあげなきゃダメよ、おじ様!
「そうですね。じゃあ、乾杯しましょうか!」
「「カンパ―――イ!」」
そう言ってお父さん達はお酒を飲み始めた。
私はスコアブックを見ながらフーくんのガッツポーズを思い出す。
フーくんの本当に嬉しそうな、楽しそうなあの笑顔を思い出すと、
私は顔が熱くなってしまうのだった。
これで本日の投稿は終わりです
また来週お会いしましょう^^