「小湊、どうだ?」
「哲、ちょっと待って…うん、Uー18日本代表は決勝トーナメントに勝ち進んだみたいだね。」
携帯電話を片手に小湊 亮介がそう報告すると、それを聞いた結城、丹波、伊佐敷、クリスが頷いた。
「へっ、こりゃあ俺達も負けられねぇな!」
「あぁ、俺達も勝つぞ!」
「「「応!」」」
伊佐敷の言葉に頷いた結城が発破を掛けると、その場にいた元青道高校野球部の三年生達が大声で応えたのだった。
◆
「皆、そのまま聞いてくれ。決勝トーナメントの組合わせが決まった。準決勝の相手はキューバ、決勝の相手は台湾かアメリカのどちらかだが、おそらくはアメリカだろう。」
Uー18日本代表のメンバーが代表監督の言葉に頷く。
「キューバの先発はエースのアーロン・ヂップマンがくるというのが俺の予想だ。ヂップマンは190cm以上の長身のサウスポーで、まだ17歳ながら160kmの真っ直ぐを投げる速球派投手だ。」
ここで一度言葉を切り、日本代表監督はメンバーの顔を見渡す。
「持ち球にスライダーとチェンジアップをスコアラーが確認しているが、ヂップマンはコントロールがあまり良くないらしい。カウントを悪くした時にはスライダーでストライクを取りにくる傾向が強く、そのスライダーが狙い目だ。見逃さずにしっかりと打てよ。」
「「「はい!」」」
メンバーの返事に頷いた日本代表監督が今度は御幸に目を向ける。
「御幸、決勝トーナメントのキャッチャーをお前に任せる。決勝トーナメントからは球数制限の上限が100球に変わるのは知っていると思うが、それを頭に入れて投手をリードしてくれ。」
「はい!」
御幸がしっかりと返事をしたのを確認した日本代表監督は、次にパワプロに目を向ける。
「葉輪、お前は決勝戦で先発させる予定だから基本的にキューバ戦で投げさせるつもりはない。だが、負けたら終わりのトーナメントだ。気持ちの準備だけはしておいてくれ。」
「はい!」
パワプロの返事に頷いた日本代表監督は最後にメンバーの顔を見渡す。
「決勝トーナメントは明日一日の休養を挟んでからだ。外出は許可するが、必ず複数人で出かける様にしてくれ。以上、解散!」
監督の言葉を聞いたUー18日本代表のメンバーは、まだ十代の若者らしく喜びの声を上げたのだった。
◆
『フーくん、決勝トーナメント進出おめでとう。』
「ありがとう、貴子ちゃん。」
休養となった翌日、パワプロは宿泊先の部屋で恋人の貴子に電話を掛けていた。
『フーくん、アメリカはどう?』
「印象としては食事の量が多いかな。バランスに気を付ければアスリート向きの国かもね。」
『そうなんだ。そっちに行ったら食べ過ぎない様に気を付けないと…。』
年頃の女性らしくそこら辺は気になっているらしい恋人の様子に、パワプロは笑みを浮かべる。
『今日は休養日でしょ?フーくんはどこかに出掛けるの?』
「アメリカでの初めてのお出掛けは貴子ちゃんとのデートでって決めてるから、俺は宿泊先でのんびりと過ごすつもりだよ。」
『…うん。』
恋人の気遣いに電話先の貴子は頬を朱に染める。
その後、幾つか世間話をしてから二人は電話を終えた。
電話を終えたパワプロは同室の御幸に目を向ける。
すると、電話で話をしていた御幸もちょうど終ったところだった。
「一也、そっちも話は終わったのか?」
「あぁ、お土産は優勝で頼むってさ。」
「ははっ、それは負けられないなぁ。」
パワプロが何気無く部屋に備え付けられているテレビのスイッチを入れると、テレビにはメジャーの試合が映し出される。
それを見たパワプロと御幸は顔を見合わせると、同時に笑みを浮かべた。
「一也、俺達もあそこに行くぞ!」
「応!」
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。