『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です。


第222話

Uー18日本代表とUー18キューバ代表の試合、先攻の日本代表は三者凡退に倒れてキューバ代表の攻撃に移っていた。

 

この試合の日本代表の先発である天久は先頭打者はショートゴロに打ち取ったが、続く2番打者に右中間への長打を打たれて初回からランナー2塁のピンチを背負ってしまった。

 

ピンチの場面でも落ち着いていた天久はキューバ代表の3番打者をピッチャーフライに打ち取った後、キューバ代表の4番打者をサードゴロに打ち取った…と思われたが、ここでサードの轟が球足の速いゴロをトンネルしてしまった。

 

ツーアウトであった事もあり、キューバ代表のセカンドランナーはホームに突っ込む。

 

しかし、レフトのパワプロからレーザービームの様な低く速い返球がホームに返ってくる。

 

このパワプロの返球にキューバ代表のベンチは総立ちになった。

 

何故なら、俊足のキューバ代表のセカンドランナーが滑り込む事も出来ずに挟まれたからだ。

 

「『なんであいつはマウンドじゃなくてレフトにいるんだ?』」

 

パワプロの返球を見たキューバ代表のエースであるアーロン・ヂップマンはそう言って首を傾げた。

 

パワプロのバックホームでキューバ代表の1回の裏の攻撃は無得点に終わる。

 

そして2回の表の攻撃は、先程エラーをした轟 雷市から始まる。

 

先程のエラーによる汚名返上の為にここは打ちたいところ。

 

しかし、打席に入る轟の表情は今一つ冴えない。

 

調子が悪いのか?はたまた先程のエラーを引きずっているのか?

 

実はどちらでもない。

 

現在の轟は左投手に苦手意識を持っているから表情が冴えないのだ。

 

これは夏の大会でのパワプロとの対戦が原因だ。

 

そうとは知らない日本代表監督は轟のバッティングを信じて見守ったが、轟はヂップマンのフォーシームに差し込まれてショートゴロに打ち取られてしまった。

 

続くDHの原田もヂップマンを攻略出来ずに打ち取られ、ツーアウト、ランナー無しの状況で6番の御幸に打席が回る。

 

御幸はバットを指一本分余して持ち、コンパクトなスイングでヂップマンのフォーシームを弾き返した。

 

(速いボールだけど、パワプロに比べればコースが甘い。)

 

打球は右中間に飛んでツーベースヒットになり、日本代表チームはツーアウトながらランナー2塁のチャンスを迎えた。

 

しかし、ギアを上げたヂップマンが160kmのフォーシームを投げ込むと、甘いコースだったにもかかわらず、日本代表チームの7番バッターは空振り三振に倒れてしまった。

 

その後、5回の表まで両チーム共に無得点が続いたが、5回裏に天久がキューバ代表の3番バッターにソロホームランを打たれてしまい、キューバ代表に先制点を許してしまった。

 

しかし天久は後続を抑えて5回の裏を終える。

 

5回終了時にヂップマンと天久は共に90球を超えていた事もあり、両者はこの回でお役御免となった。

 

天久は今大会の参加チームにおいて、アメリカと並ぶ強打のキューバ代表を相手に5回1失点ならば十分に及第点だろう。

 

だがヂップマンとの投げ合いに負けた天久は、ベンチに座ると悔しそうに紙コップの中のスポーツドリンクを一気に飲み干したのだった。

 

 

 

 

「『へぇ、ヂップマンもいいボールを投げるね。もう少しコントロールを改善出来れば、ロジャーズのクローザーを任せられそうだ。』」

 

スタンドに視察に訪れていたロジャーズスカウトのベックは、メモを取りながらヂップマンをそう評価する。

 

「『さて、中盤にきて先制された日本代表チームはどうするのかな?出来ればパワプロがアメリカ代表チーム相手にどんなピッチングをするのか見てみたいんだけどね。』」

 

メモ帳を閉まったベックは、ネクストバッターサークルに向かうパワプロを見て笑みを浮かべたのだった。




次の投稿は11:00の予定です。

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