『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿5話目です。


第225話

Uー18硬式野球国際大会の決勝戦が始まった。

 

先攻は日本代表チームだ。

 

1回の表、アメリカ代表の先発マウンドにJ・コンラッドが上がる。

 

日本代表チームの先頭打者であるカルロスが打席に入っての初球、カルロスはアウトコースを見逃したのだが、ストライクの判定で主審に振り返った。

 

(今のがストライク?)

 

体験した事のない横の角度を持つコンラッドのボールに、カルロスはたった1球で冷や汗を流す。

 

カルロスは1球でも多くボールを後続のバッターに見せようとしたのだが、3球目のコンラッドのスライダーにバットが空を切って空振り三振に倒れた。

 

だが、カルロスはまだスイングが出来ただけマシであった。

 

何故なら、次のバッターである白河はバットを振る事すら出来なかったのだ。

 

続く3番バッターはコンラッドのフォーシームに差し込まれて内野ゴロに倒れ、1回の表の日本代表チームの攻撃は三者凡退に終わってしまった。

 

経験した事のない角度からくるコンラッドの投球に、日本代表ベンチの雰囲気が僅かに暗くなる。

 

しかし、そんな雰囲気など関係無いとばかりにパワプロは笑顔で1回の裏のマウンドに向かった。

 

 

 

 

パワプロの投球練習の球を受けている御幸はマスクの奥で笑みを浮かべていた。

 

(国際大会の決勝戦でコンラッド程の投手と投げ合える…そんな状況でお前が燃えないわけがないよな、パワプロ。)

 

パワプロが規定回数の投球練習を終えると、同じ高校生とは思えないガタイをしたアメリカ代表チームの1番バッターが左打席に入ってくる。

 

(コンラッドの初球で飲まれたお返しをしないとな。)

 

御幸はパワプロにフォーシームを要求する。

 

笑顔で頷いたパワプロが独特の投球モーションからフォーシームを投げ込んだ。

 

(…ドンピシャ!)

 

インローぎりぎりに投げ込まれたフォーシームに、アメリカ代表の1番バッターは御幸のミットの位置に振り返ってから主審にタイムを要求した。

 

1回、2回とバットを振るのを御幸は横目で観察する。

 

(今のでフォーシームに意識付け出来た筈だけど…次はどうする?)

 

アメリカ代表の1番打者がバットを構えるその時まで御幸は思考を続ける。

 

(…押すか。)

 

決断をした御幸が2球目のサインを出す。

 

2球目、パワプロは同じコースにまたフォーシームを投げ込んだ。

 

アメリカ代表の1番打者が迷わずにバットを振り切るが、バットは空を切った。

 

(パワプロのフォーシームに合ってない。続けるか?)

 

一瞬の間をおいて御幸がサインを出す。

 

3球目、パワプロはアウトローにフォーシームを投げ込む。

 

すると…。

 

バシッ!

 

「『ストライクスリー!バッターアウト!』」

 

見逃し三振に倒れたアメリカ代表チームの1番バッターは、悔しそうに天を仰いでからベンチに戻っていったのだった。

 

 

 

 

コンラッドの三者凡退に対してパワプロが三者三振で返すと、Uー18硬式野球国際大会の決勝戦は高校生同士の試合とは思えない程のハイレベルな投手戦となった。

 

コンラッドとパワプロの双方が遊び球を用いず、ストライクゾーンにボールを集めて勝負をしていく様子に、現地のベースボールファンは惜しみ無い拍手を送った。

 

そして4回にコンラッドとパワプロが二桁奪三振を達成すると、ストライクカウントが1つ増える度に観客が歓声を上げ、二人のピッチングに興奮していった。

 

5回の表にファーストで出場している原田がポテンヒットで出塁した事で、コンラッドの完全試合は途切れてしまったが、それでもコンラッドはパワプロと同等のペースで三振を量産していく。

 

そして両チームは無得点で双方のエースがまだ球数に余裕を残したまま、試合は終盤の7回へと突入するのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

また来週お会いしましょう。

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