『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です。


第232話

高校野球で初めての公式戦でありながら、降谷は緊張を見せずに1回の表を三者凡退で抑えた。

 

続く1回の裏の青道高校の攻撃、1番バッターの小湊 春市が右打席に入る。

 

(左のサイドスロー…どんな球筋なのかな?)

 

夏の大会でベンチ入りを果たし、代打で公式戦に出場した経験を持っているからか、春市は打席でも自然体でバットを構えていた。

 

そんな春市に対して向井は初球にアウトローのスライダーを投げ込んだ。

 

(遠い…ボール球?)

 

春市は初球をボール球と判断して見送った。

 

しかし…。

 

「…ストライク!」

 

一瞬の間があったが主審はストライクをコールした。

 

この判定に春市は前髪に隠れている目を見開いて驚いた。

 

(ベースの前じゃなくて奥を通った?俺の見間違い?)

 

春市はバットを構え直して次のボールを待つ。

 

2球目、向井はインコースへとボールを投げ込んだ。

 

春市はボールが身体に当たると判断し身構える。

 

だが…。

 

「ストライクツー!」

 

春市は振り返ってミットの位置を確認した。

 

(…今のはスクリュー?)

 

向井の決め球であるスクリューに春市は冷や汗を流す。

 

(身体に当たると判断して身構えたのにインコース一杯に入るとはね…。)

 

兄の亮介が認める程の才能を持つ春市だが、まだ1年生の春市には体験した事の無い角度からくるボールに1打席で対応する事は出来なかった。

 

「ストライクスリー!バッターアウト!」

 

三振に倒れてしまった春市だが、次のバッターである白州とネクストバッターサークルに入ったパワプロに、向井の球筋を伝えてからベンチに戻ったのだった。

 

 

 

 

亮さんの弟くんが三振に打ち取られると、次のバッターの白州はサードゴロに打ち取られた。

 

そしてツーアウト、ランナー無しの場面で俺に打順が回ってくる。

 

左打席に入った俺は、なんか睨んできている様に見える帝東のピッチャーに目を向ける。

 

(万が一にも当てられない様に気をつけろかぁ…。)

 

ネクストバッターサークルに向かう前に一也にそう言われたんだよね。

 

一也は国際大会の決勝でアメリカ代表のエースのコンラッドと対決している。

 

一也が言うには左のサイドスローの球筋は、左バッターの俺達からすると背中からボールが出てくる様に感じて、ストライクかボールかの判断がしにくいらしい。

 

(コントロールは良さそうだけど、やっぱり気をつけないとな。)

 

俺のバッティングの基本はリトル時代から変わっていない。

 

先ずはボールをぶつけられない様に気をつける。

 

ケガをして投げられなくなるのが一番嫌だからな。

 

そんな風に考えながらバットを構えると、帝東のピッチャーが投球モーションに入った。

 

初球は…アウトコースへのスライダー?がストライクになる。

 

(思った以上にボールが見にくいなぁ。)

 

一也の言った通りにボールが背中から出てくる様に感じて、身体に当たるかどうかの判断が他の投手に比べて遅れてしまう。

 

(インコースを1球見ておきたいな。)

 

インコースしか待たない俺がこのボールを打つには、早くインコースの球筋を見ておきたい。

 

2球目、帝東のピッチャーはアウトコースへのスクリュー?を投げてきた。

 

これもストライクでツーストライクと追い込まれた。

 

(外れると思ったボールがストライクゾーンに入り込んできた。面白いボールだなぁ。)

 

成宮のボール以上に横の角度が凄い帝東のピッチャーのボールに、俺は自然に笑みが浮かぶ。

 

(ピッチャーの数だけ色んなピッチングがある…やっぱり、野球って面白いぜ!)

 

3球目、アウトコース一杯に投げられたフォーシームにバットを振る。

 

ガキッ!

 

バットの先っぽに当たった打球は、3塁線を切れてファール。

 

俺が笑顔でマウンドに目を向けると、そこには帝東のピッチャーの不満そうな顔があった。

 

(アウトコースに3つ続けたし、次はインコースに来るかな?)

 

4球目、俺の予想通りにインコースにボールが来た。

 

けど、俺はボールが身体に当たると判断してバットを振らずに避ける。

 

すると…。

 

バシッ!

 

「ストライクスリー!バッターアウト!チェンジ!」

 

俺が身体に当たると判断したボールはそこから横の変化をして、インコースのストライクゾーン奥一杯に入り込んだ。

 

(こんなピッチングもあるんだな!試合が終わったら一也と相談しよう!)

 

打ち取られても笑顔でベンチに戻る俺とは対称的に、帝東のピッチャーは不満そうな表情でマウンドを下りていったのだった。




次の投稿は11:00の予定です

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