『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿4話目です。


第254話☆

「パワプロ、わかってると思うけど急に強く投げるなよ。」

「おう!」

 

待ちに待った投球解禁日、俺は早速一也とキャッチボールを始めた。

 

うん、やっぱり成長させたから少し感覚が違うな。

 

俺はステータス画面を開いて今の能力を確認する。

 

 

基礎能力

 

最高球速:156km(※160km)

 

制球:S

 

スタミナ:S

 

変化球:カーブ7(※7)

 

変化球2:チェンジアップ7(※7)

 

変化球3:高速スライダー7(※7)

 

変化球4:高速縦スライダー3(※7)

 

 

球速を1km、高速縦スライダーを1ランク成長させた。

 

秋季神宮大会まで時間が無いので野手能力と特殊能力に変化はない。

 

でもポイントはまだ残っているから、オフシーズンの間にじっくりとどの能力を成長させるか吟味していこうと思う。

 

さて、肩も温まったし1ヵ月振りの投げ込みを楽しむぜ!

 

 

 

 

秋の選抜地区大会以来のパワプロの投げ込みとあって、ブルペンには落合だけでなく片岡や高島も足を運んでいた。

 

連投によりパワプロの肩や肘に異常が出ていないかを確認する為だ。

 

だがそんな指導者達の心配を他所に、パワプロは御幸を相手に笑顔で投げ込みをしている。

 

「一也、もう一回フォーシーム!」

 

御幸がミットを手で叩いてから構えると、パワプロは独特の投球モーションからフォーシームを投げ込む。

 

パァン!

 

御幸のミットが快音を鳴らすと、スピードガンを持っていた高島は驚きの表情を浮かべた。

 

「156km…です。」

 

パワプロが叩き出した最高球速に高島は言葉が詰まってしまう。

 

「…また速くなった様ですな。確か、左の高校野球最速は157kmでしたかな?」

「…。」

 

落合の言葉に片岡は頷いて肯定するが、その目はパワプロの姿を捉え続けている。

 

僅かな異変も見逃さないと、クリスの様にはさせないと真剣なのだ。

 

風を切る音と共にボールがミットに入り込むと、御幸はマスクの奥で自然と笑みを浮かべる。

 

(たはっ!パワプロ、お前の成長は天井知らずかよ。)

 

歩みを止めぬパワプロの成長に、御幸は置いていかれてたまるかと気合いを入れる。

 

10球程フォーシームを投げ込むとパワプロはだいたいの感覚を掴んだのか、別の球種を選択する。

 

「一也!次は縦のスライダーいくぞ!」

「おう!」

 

御幸は縦のスライダーを捕球する為に集中を高める。

 

(これまでの経験上、縦のスライダーも進化している筈だ!)

 

絶対に後ろには逸らさないと細く息を吐いて更に集中を高めると、御幸の視界にある景色から色が抜けていった。

 

御幸は所謂ゾーンと呼ばれる状態に入ったのだ。

 

パワプロのみが極彩色で見える世界の中でボールが投じられると、御幸にはボールの縫い目がハッキリと見えている様に感じた。

 

パワプロの高速縦スライダーは、ゾーンに入った御幸でも消えた様に錯覚させる程のキレで変化する。

 

しかし、それでもゾーンに入った御幸は反応してみせた。

 

パシッ!

 

僅かにミットの芯を外してしまったが、それでも御幸は成長したパワプロの高速縦スライダーを初見で捕球する事に成功した。

 

だが、マスクの奥の御幸の表情は悔しそうに眉を寄せていた。

 

「一也、ゴメン!狙いがズレた!」

「パワプロ、もう1球!」

 

そんな二人のやり取りに、落合はため息を吐く。

 

「はぁ…この意識の高さは高校生とは思えませんな。」

「ですがその意識の高さに、皆が引っ張られているのは確かですよ。」

 

落合のぼやきに高島が言葉を返す。

 

高島の言葉通りに、他の投手陣の投げ込みにも熱が入っていた。

 

「本格的に寒くなってきたというのにあいつらは…。」

「ふふ、やる気があっていいではないですか。」

 

気炎を上げる投手陣に、片岡の声が飛ぶ。

 

「沢村!肩の開きが早い!」

「イエッサー!」

 

「降谷!力み過ぎだ!ボールが浮いているぞ!」

「はい。」

 

「東条!川上!変化球を投げる際に腕の振りが緩んでいるぞ!」

「「はい!」」

 

次々と飛ぶ片岡の指導に、パワプロが片岡に期待した視線を送る。

 

「葉輪、お前はもう少し抑えろ。久し振りの投球で気持ちが高まるのは理解するがな。」

 

強面の顔に笑みを浮かべる片岡に、パワプロは笑顔で返事をしたのだった。




次の投稿は午後3:34の予定です。

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