『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

278 / 291
本日投稿1話目です。


第275話

春季東京大会の決勝戦である青道高校と稲城実業の試合の7回の表、稲城実業はついにランナーを出すことに成功した。

 

しかも出塁したランナーは稲城実業で一番の快速を誇るカルロスとあって、球場に駆け付けた稲城実業を応援する者達のボルテージは最高潮だ。

 

現在は7回の表、ノーアウト、ランナー1塁で1ー0で青道高校がリードという状況。

 

もしかしたら稲城実業が同点に追い付くかもしれない。

 

稲城実業を応援する者達は力を送ろうと必死に声を張り上げた。

 

カルロスも2塁を盗もうと集中力を高める。

 

しかし高校野球界でもトップクラスの牽制技術とクイックモーションの技術を持つパワプロに、カルロスはスタートのタイミングを掴めない。

 

御幸がカルロスの盗塁を警戒したのもあってカウントはワンボール、ワンストライク。

 

ここで国友はカルロスの盗塁を諦め、白河に送りバントのサインを出した。

 

塁上のカルロスは一瞬不満そうな表情をしたが、直ぐに気持ちをきりかえる。

 

パワプロ相手に連打は望めない。

 

故にワンヒットで得点が望める得点圏にランナーを進めるのは最優先事項なのだ。

 

稲城実業で最も小技が上手い白河がバントの構えを見せる。

 

御幸はチラリと白河に目を向けた。

 

(バスターは…ないな。じゃあ、ワンアウト貰っとくか。)

 

サインに頷いたパワプロがクイックモーションに入る。

 

ハッキリと聞こえる回転音と共にパワプロのフォーシームが投げ込まれると、白河は辛うじてボールを転がした。

 

反応よくパワプロがボールに詰め寄る。

 

「1つ!」

 

御幸のコーチングでパワプロは一塁に送球する。

 

これで状況はワンアウト、ランナー2塁。

 

ワンヒットで得点が望める状況だ。

 

稲城実業を応援する者達がこの日一番の声を張り上げて応援する。

 

パワプロが公式戦でランナーを出したのは久しぶりだ。

 

だから稲城実業を応援している者達は忘れているのだろう。

 

パワプロはピンチの場面を笑顔で楽しむ男だという事を…。

 

 

 

 

カルロスが送りバントで2塁に進むと、御幸は主審にタイムを要求してマウンドに内野陣を集めた。

 

「パワプロ、すまん。」

「シュー…。」

 

前園と樋笠が謝罪するが、パワプロは特に気にした様子はなかった。

 

「一也、これはどっちの奢りになるのかな?」

「二人でいいんじゃね?」

 

お小遣いが少ない高校生にとって不穏な会話が行われると、前園と樋笠に焦りの色が浮かぶ。

 

「ヒャハッ!俺はハーゲ○ダッツな!」

「先輩方、ご馳走様です。」

 

倉持の要求に春市がちゃっかり便乗すると、前園と樋笠はついに慌てだした。

 

「そこはせめてガリ○リ君にせぇへんか?今月ちょっとピンチやねん!」

「シュシュシュー!」

 

前園と樋笠の異議申し立てに、パワプロ達は耳を貸さない。

 

「それじゃ、このピンチの場面を楽しんでいこう!」

「「「おう!」」」

「俺の財布もピンチやねんて!」

「シュー!」

 

前園と樋笠が悲哀を背負いながら守備位置に戻ると、パワプロはマウンドで笑みを深めたのだった。

 

 

 

 

7回の表、稲城実業はワンアウト、ランナー2塁のチャンスをパワプロに連続三振で抑えられてしまう。

 

千載一遇のチャンスを逃してしまった稲城実業にパワプロを攻略する力は残されておらず、稲城実業は0ー1で敗れてしまったのだった。




本日は5話投稿します。

次の投稿は9:00の予定です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。