春の選抜大会の全国決勝トーナメント。
俺達、丸亀リトルは準優勝の結果に終わった。
俺は決勝戦で被安打3の11奪三振で六回を完封したのだが、うちの打線も相手から
得点を奪う事が出来なかった。
そして、俺が交代した延長ではタイブレークルールである事もあって点の取り合いになった。
だが、八回に追い上げきれずに3ー5で負けてしまった。
正直に言って悔しい。
夏にリベンジしてやるぜ!
それはそれとして、俺はMVPに選ばれた。
めっちゃビックリしたけど素直に嬉しい。
ひゃっほい♪
◆
丸亀リトルの遊撃手である白河 勝之はMVPとして表彰されている葉輪の背中を見ながら
今大会の事を思い返している。
前評判では、1年先輩であるクリスがいなくなって厳しいというのが
丸亀リトルに対する評価だった。
だが、いざ大会が始まって見れば丸亀リトルのエースは大車輪の活躍をした。
春の選抜大会の全国決勝トーナメントを通じて僅か1失点。
そしてMVP。
「キャッチャー関係ないじゃん…。」
そんな白河の呟きは、葉輪の表彰に向けられる拍手で消えていくのであった。
◆
春の大会が終わって俺は6年生、貴子ちゃんは中学1年生になった。
貴子ちゃんの制服お披露目は葉輪、藤原両家で行われた。
貴子ちゃんの制服姿はめっちゃ可愛かった。
なので素直にそう伝えたら、貴子ちゃんに顔を赤くしながら俺は両頬を横に引っ張られた。
解せぬ…。
貴子ちゃんは中学生になった事で丸亀リトルから卒業した。
俺は、貴子ちゃんは丸亀シニアにマネージャーとして入ると思ったのだが、
どうやら違うようだ。
なんでも、1年は勉強に専念するらしい。
というのも、俺と貴子ちゃんは青道高校に入る事を決めているのだが、貴子ちゃんは
一般入試で青道高校に入るつもりらしい。
貴子ちゃんぐらい頭が良ければ推薦でもいけそうな気がするけどな。
ただ、この貴子ちゃんの考えは両家の両親は同意なのだそうだ。
みんな曰く、貴子ちゃんが丸亀シニアのマネージャーになると、部活等の実績がないので
内申書で不利になる可能性がある。
なので、確実に入るなら推薦に頼らずに勉強しておくのが一番らしい。
だから俺も一緒に勉強しなさいと言われた。
そういう訳で丸亀リトルの練習が無い時は、走り込み等の自主練をしたら
貴子ちゃんと一緒に勉強をしている。
貴子ちゃん、俺が教えるのは構わないけど…くっつき過ぎじゃないかな?
いや、めっちゃ嬉しいです。
ちょっと、奥様方?これは違いますよ?
だから、そんな暖かい目で見守らないであげてくれませんか?
◆
一緒に勉強をしているフーくんと私の肩が触れ合ってる。
少し恥ずかしいけど…それ以上に嬉しい。
最近のフーくんは女子に人気が出てきた。
野球が出来てカッコ良くて、勉強も出来るし、性格も明るくて楽しい男の子。
幼馴染みとしての贔屓目無しでもフーくんはカッコいいと思うわ。
今年の2月にフーくんは私以外の女の子からもチョコを貰ってた。
その時に私は、ちょっと嫌だなと思った。
だけど、フーくんは私のチョコが一番嬉しいって言ってくれた。
ちょっと優越感。
その事をお母さんに話すと、フーくんにもっとアピールしないとダメと言われた。
お母さん曰く、恋は戦争だって…。
そう言う訳で、私はフーくんの隣で一緒に勉強をしている。
お母さんとおばさま…なんで私がフーくんを好きってわかったのかしら?
そう、私はフーくんが好き。
幼稚園でフーくんに助けて貰ったあの時からずっと好き。
フーくんは…気づいてないよね?
でも、フーくんは私と一緒にいるのを喜んでくれる。
それが何よりも嬉しい。
私が小学3年生の頃、いつもフーくんと一緒にいるのをからかわれた事があるけど、
その時にフーくんは『はっはっはっ!羨ましいだろう!』って言いきった。
カッコ良かったな…フーくん。
それ以来、私は周りの目を気にしなくなった。
今でも時折からかわれるけど、そのほとんどは好意的な感じのものだ。
それでも、フーくんの事が気になってる女の子は一杯いる。
お母さんの言う通りに油断しちゃダメだよね!
私はフーくんの顔を見る。
野球が本当に好きで、いつも笑顔で楽しんでいる…私のヒーロー。
私はこれからもずっとフーくんの隣にいたいな。
…ところで、お母さんとおばさま?
いつまで見ているつもりなの?
本日は5話投稿します
次の投稿は9:00の予定です