ブルペンで一也相手に投げ込みをしていると、あの美人なお姉さんが見学にやってきた。
「私の事は気にしないで練習を続けて。」
そう言われたので気にせず練習を続けていく。
夏の大会で得たポイントで成長させた能力に秋の大会までには慣れないといけないからな。
ちなみに今はこんな感じの能力だ。
基礎能力
最高球速:115km(※145km)
制球:A
スタミナ:D
変化球:カーブ4(※5)
変化球2:チェンジアップ1(※5)
新しい変化球としてチェンジアップを習得した。
このチェンジアップを習得する前に、スライダーとどっちがいいか
クリスさんと一也に相談したらそこで一悶着あったんだよね。
チェンジアップを推すクリスさんと、スライダーを推す一也の舌戦が起こった。
クリスさん曰く、同じボールを抜く系統の変化球であるチェンジアップを覚えれば
俺のカーブの成長につながる可能性がある。
そしてボールを抜く感覚を養う事で、逆にボールが指にかかる感覚が
増す可能性があり、フォーシームが成長するかもしれないとの事だ。
対して一也曰く、縦変化の強い俺のカーブを活かす為に横変化のスライダーを
覚えた方が三振を取ったり、打者を打ち取りやすくなると主張した。
どちらの主張も一理あるなぁと思ったんだけど、俺はチェンジアップを選んだ。
選んだ理由はクリスさんが言ったフォーシームの成長の可能性に惹かれたからだ。
ちなみに、野手能力はそのままである。
野手能力の成長は新変化球に慣れる時間の為に犠牲になったのだ…。
「パワプロ!そろそろアレ投げてくれ!」
おっと、一也から催促が来たから投げないとな。
俺は要求通りにチェンジアップを投げる。
だけど、ボールは狙った場所からかなりずれてワンバウンドしてしまった。
う~ん、チェンジアップはまだちゃんとコントロール出来ないなぁ…。
「一也!もう一球同じの行くぞ!」
俺の声に応える様に一也がミットを叩き鳴らしてから構える。
その仕草だけで俺は笑顔になってしまう。
俺は新たな変化球による新鮮な感覚を楽しみながら投げ込みを続けていった。
◆
「御幸君もクリス君に負けない見事なブロッキングね。」
高島はパワプロが投じたワンバウンドのボールを、後逸せずに受け止めた御幸を称賛する。
「それにしても…今、葉輪君が投げているのはチェンジアップ?」
フォーシームと変わらぬ腕の振りで投げられるボールは、僅かに利き腕方向に
変化しながら沈んでいく。
「葉輪君のチェンジアップはまだ大きな変化をしないけど、この緩急は
十分に武器になるわね。」
だが上手く制球出来ないのか、パワプロは何度も御幸に「ごめん!」と謝っている。
「ふふ、この子達はこれからも要チェックね。」
そう言って高島は何かを手帳へと書き記すと、パワプロが投げ込みを終えるまで
ブルペンを見学するのだった。
◆
投げ込みが終わると、美人なお姉さんに一也と一緒に声を掛けられた。
お姉さんは高島 礼というらしい。
俺と一也は礼ちゃんと呼ぶ事にした。
礼ちゃんはなんと青道高校のスカウトだった。
それを知った時はめっちゃテンションが上がってしまった。
礼ちゃんと話をすると、俺と一也はまだ中学1年生だから顔合わせ程度で
主目的はクリスさんみたいだ。
でも礼ちゃんはこれからも俺と一也に顔を見せにくるらしい。
これからも礼ちゃんが来ると知った監督がグッと拳を握ったのは見逃さない。
後で一也と一緒にイジッてあげよう。
礼ちゃんが帰ると監督は黄昏ていた。
監督?皆待ってるよ?
そんな事があったが、今日の丸亀シニアの練習が終わって貴子ちゃんと一緒の帰り道での事。
何故か貴子ちゃんがむくれていた。
俺は膨らんでいる貴子ちゃんの頬をつつく。
だが、貴子ちゃんに両頬を引っ張られてしまった。
解せぬ…。
その後、貴子ちゃんが礼ちゃんの事を聞いてきたので青道高校のスカウトだと説明した。
そうしたら貴子ちゃんにいつもの可愛い笑顔が戻った。
うんうん、貴子ちゃんは笑顔でいる方がいいね。
もちろん、むくれている顔も可愛いけどな!
その事を素直に伝えたら、また両頬を横に引っ張られた。
解せぬ…。
こうして俺の中学1年生の夏は過ぎていった。
そして季節が秋へと移り変わると、シニアリーグの秋の公式戦が始まるのだった。
これで本日の投稿は終わりです
また来週お会いしましょう
※本日投稿の4話目において、冒頭の一文が抜けていたので修正しました