丸亀シニアと城南シニアの試合は成宮の三者連続三振から始まった。
成宮、凄いな!
俺も負けないぜ!
そう意気込んで俺はマウンドに向かう。
そして1回の裏。
一番のカルロスをショートゴロ、二番を三振に抑える。
そして迎える三番バッターはピッチャーの成宮。
ピッチャーなのに三番バッターとか、成宮は本当に凄いな!
そんな成宮と投げ合えるのは本当に楽しい。
マウンドでの笑顔が止まらない。
クリスさんのサインに頷いて投球モーションに入る。
2球で成宮を追い込むと、俺は成宮をチェンジアップで三振に抑えたのだった。
◆
「くっそ―!」
パワプロに三振に抑えられた成宮が悔しそうにしながらベンチに戻っていく。
「なんだよ、あのチェンジアップ!ゆるいボールだから楽勝だと思ったのに、ボールが
ぜんぜん来ねぇじゃん!」
成宮は文句を言いながらもグローブを手に取る。
「チェンジアップか…あのゆるい変化球を覚えたら、俺って無敵じゃね?」
成宮は何かイタズラを思い付いた子供の様な笑みを浮かべる。
「大会が終わったらサクッと覚えてみっかな!」
そう言ながら成宮は走ってマウンドに向かうのだった。
◆
丸亀シニアと城南シニアの試合が行われている球場に観戦に訪れた人達は、成宮とパワプロの
1回の投球内容から投手戦となる事を予想した。
だが、その予想は裏切られる事になった。
その原因は丸亀シニアの四番バッターであるクリスのせいである。
2回の表、クリスは成宮が投じたインローのフォークをレフトスタンドに叩き込んだ。
これで1ー0。
投手戦となると予想した試合の均衡が早くも崩れる。
だが、成宮は後続のバッターにはヒットを許さずに抑えていく。
そして迎えた4回の表ツーアウトの場面で丸亀シニアのバッターはクリス。
この試合、2度目の対戦。
クリスは成宮のバックドアのスライダーを、右中間に運ぶツーベースヒット。
この結果に成宮のコントロールが乱れ始める。
だが成宮は踏ん張り、クリス以外のバッターにヒットを許さない。
回は進み、最終回となる7回の表ワンアウトの場面。
丸亀シニアのバッターはクリス。
この試合、3度目となる成宮とクリスの対戦。
成宮はアウトローへフォーシームを投げ込む。
軍配は…三度クリスへと上がった。
◆
クリスさんが右手を突き上げながらベースを回っていく。
クリスさんはこの試合、2本目のホームランを打ったのだ。
丸亀シニアのベンチは凄い盛り上がりだ。
俺も一緒に盛り上がるぜ!
ウォ―――!
ふとマウンドに目を向けると、成宮がガックリと項垂れている。
成宮の調子は悪くなかった。
でも、今日の試合はクリスさんが凄過ぎるんだよな。
そんな事を考えているとクリスさんがベンチに戻ってきた。
俺は出迎えのハイタッチをする。
イエーイ♪
「葉輪、これで2点差だが、最後まで気を引き締めていくぞ。」
「はい!最後まで楽しんで行きましょう!」
俺の答えにクリスさんは微笑みながら胸を軽く小突いてきた。
その後、7回の裏を三人で抑えて、俺達丸亀シニアが城南シニアに2ー0で勝った。
俺の投球内容は被安打2、奪三振12の完封だった。
◆
夏のシニアリーグ選手権大会の全国決勝トーナメント。
俺達、丸亀シニアは勝ち抜いて全国優勝をした。
大会終了後の表彰式でクリスさんがMVPに選ばれた。
流石クリスさんだぜ!
そしてクリスさんはシニアMVPの肩書きと共に、丸亀シニアを卒業していったのだった。
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