夏の大会が終わり、クリスさんを含めた中学３年生が丸亀シニアを卒業していった。
貴子ちゃんも青道高校の受験の為に丸亀シニアを卒業していった。
３年生が抜けて新チームのスタメンを決める紅白戦をしていた時、礼ちゃんが
丸亀シニアの紅白戦の見学にやって来た。
どうやら青道高校の見学をしたクリスさんが、青道高校への進学を決めたらしい。
そして、クリスさんは学力でも問題ない為に特待生として青道高校に行くようだ。
流石クリスさんだぜ！
礼ちゃん！俺も青道に行くから！
え？貴子ちゃんから聞いてる？
いつの間に仲良くなったのん？
まぁ、そんな感じで時間が過ぎて行って秋の大会が始まった。
俺はエースとして一回戦と三回戦に投げて完封したぜ！
でも、残念な事に丸亀シニアは四回戦で松方シニアに負けてしまった。
松方シニアの投手は一年生だった。
確か…東条？だったかな？
球速が速い訳でもなく、大きな変化球もない。
それでも、低めに丁寧に投げ続けていって、うちの打線をなんとか抑えていったのだ。
試合が終わってみれば４ー６で負けていた。
監督曰く、成宮以外に注意を払ってなかった油断が敗因との事だ。
四回戦で俺達に勝った松方シニアは決勝戦で城南シニアと戦う事になる。
俺は松方シニアと城南シニアの試合を一也と、そして受験勉強の息抜きに
誘った貴子ちゃんの３人で見に行ったのだった。
◆
カキーン！
金属バットの音と共にボールが左中間へと飛んでいく。
マウンドにいる成宮が目を見開いている。
「また打たれた。」
「うん、今度も真ん中の甘いボールだったわ。」
俺は右隣に座る貴子ちゃんとそう話す。
「一也、なんで打たれたのかわかったか？」
「いや、ハッキリとはわかんねぇ。」
俺は左隣に座る一也に話を振ってみるが、一也も成宮の不調の原因はわからない様だ。
「鳴の奴…なんか新しい変化球でも試してるのか？」
「鳴？」
「あぁ、鳴と俺の家って近くてさ、自主練で走り込みをしている時にバッタリ会ったんだ。
その時に『秋の大会でビックリさせてやる！』って言ってたんだ。」
俺と貴子ちゃんは「「ふ～ん」」と言いながらマウンドの上にいる成宮を見る。
現在試合は四回の松方シニアの攻撃中でスコアは５ー２で松方シニアが勝っている。
球場にいる人達は成宮が打たれる度にざわついている。
カキーン！
また成宮が打たれた。
これで松方シニアに６点目が入る。
あ、城南シニアの監督が出てきた。
「流石に鳴は交代だろうな。」
一也の言葉に俺と貴子ちゃんは頷く。
そして、一也の言葉通りに成宮は交代となった。
「さて、俺はそろそろ行くわ。パワプロと藤原先輩は…そのままデートかな？」
一也が笑いながらそう言うと、貴子ちゃんは顔を真っ赤にした。
「貴子ちゃんとのデートなら俺は大歓迎だ！」
「たはっ！ご馳走さまです…っと。」
一也はそう言いながら立ち上がると、手をヒラヒラと振りながら帰っていった。
◆
「あれで２人は付き合ってないっていうんだから、わかんねぇよなぁ。」
球場からの帰り道、御幸はそう言いながら苦笑いをする。
「さて、帰りにバッティングセンターにでも寄っていくか。」
御幸はそう言いながらショルダーバッグに入っているミットをポンッと叩く。
「来年の夏の大会ではしっかりとアピールして、礼ちゃんから特待生の枠を
貰わないといけないからな。」
そう言うと御幸はショルダーバッグから魔法瓶を取り出して、熱いアップルティーを飲む。
春の大会以来、御幸には欠かせない飲み物となったのだ。
「よし、行くか！」
そう言うと、御幸は笑顔でバッティングセンターに向かって走り出した。
◆
秋のシニアリーグ選抜大会の東京地区予選。
多くの人達の予想を覆して松方シニアが優勝した。
番狂わせと言える勢いを得た松方シニアが春の全国大会でも暴れるのかと思われたが、
残念ながら松方シニアは春の全国大会の二回戦で敗れてしまった。
こうして春が終わり、季節は夏へと移り行く。
そして、葉輪 風路のシニアリーグ最後の大会が始まるのだった。
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