『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

55 / 291
本日投稿3話目です


第54話

俺達、東京シニア選抜チームと台湾の中学生選抜チームの試合は、両チーム無得点の

引き分けという結果に終わった。

 

ちなみに、俺は参考記録だけど完全試合を達成したぜ!

 

ひゃっほい♪

 

試合が終わって両チームが帰り仕度をしていると、台湾の中学生選抜チームの投手が

俺に話し掛けてきた。

 

「ちょっと、いいだろうか?」

「ん?」

 

え~っと…誰だっけ?

 

「えっと…?」

「俺の名前は楊 舜臣だ。」

「そっか、俺は葉輪 風路!パワプロって呼んでくれ!」

 

楊の自己紹介に俺はサムズアップしながら応えた。

 

しかし、綺麗な日本語で喋るなぁ。

 

「パワプロ、1つ質問があるのだが、いいか?」

「おう!」

「パワプロ、ピッチャーにとって一番大事なモノは何だと考えている?」

 

ピッチャーにとって一番大事なモノ?

 

「あくまで俺の考えだけど、それでいいか?」

 

俺の言葉に楊が頷く。

 

「俺はコントロールが一番大事かなぁ。」

「理由は?」

 

楊にそう言われたので、俺は少し考えながら答えていく。

 

「う~ん…俺の経験なんだけど、失投を打たれるのって、すっげぇ悔しいんだよね。」

 

楊は俺の言葉に理解を示す様に頷く。

 

「リトル時代の話なんだけど、失投をホームランにされた時、試合が終わっても

 なんか胸にモヤモヤしたものが残っちゃっていたんだよね。」

 

俺はあの時の感覚を思い出しながら話していく。

 

「でもさ、しっかり投げたボールを打たれた時は、失投を打たれた時に比べて自分を

 納得させやすいと思うんだ。」

「納得させやすい?」

 

静かに俺の話を聞いていた楊が、疑問の声を上げた。

 

「もちろん、いいボールを投げて打たれた時も悔しいけど、なんというか…相手を

 認めやすいと言えばいいのかな?」

 

う~ん、自分の感覚を言葉にするのって難しいなぁ…。

 

「なるほど、何となくだが理解した。」

「お?」

「先程の試合、七回の表の先頭打者の内野安打は彼にうまく運ばれてしまったものだが、

 四番に打たれたセンター前ヒットは、ツーシームをインローの低めにボール球にする

 筈だったものが、ストライクゾーン内に入ってしまったのを打たれてしまったんだ。」

 

腕を組んで、思い出すように目を瞑りながら、楊が話していく。

 

「結果的に無失点で切り抜ける事が出来たが、あの四番との勝負はまだ胸に残っている。」

 

そこまで話すと、楊がふと笑みを見せた。

 

「パワプロ、君との投げ合いはとても楽しかった。」

「おう!俺も楽しかったぜ、楊!」

 

俺と楊は笑顔で握手をしたのだった。

 

 

 

 

時は少し戻り、パワプロと楊が話を始めた頃、御幸は話をしているパワプロと楊の姿を

見つけて、自分も会話に入ろうと近付いていった。

 

だが、そんな御幸に声を掛けた者がいたのだった。

 

「一也!」

 

御幸が振り向くと、そこには成宮がいた。

 

「どうした、鳴?」

「一也、高校はどこに行くのか決めたのか?」

 

御幸は成宮の言葉に首を傾げながらも答える。

 

「青道から話をもらってるな。」

「一也、俺と稲実に行こうぜ!」

 

御幸は成宮の誘いに目を見開く。

 

「一也、俺は俺達の世代で最強のチームを作るつもりだ。」

「鳴の後ろにいるカルロスと白河はそういう事か…。」

 

御幸が成宮の後ろにいる2人を見てそう言うと、成宮は肯定する様に頷いた。

 

「2人だけじゃないぞ、他の奴にも声を掛けた。パワプロに勝つ為にな!」

 

御幸は成宮の言葉にまた目を見開いた。

 

「そうか。」

「一也、お前は俺が見た同い年の連中の中で一番のキャッチャーだ。だから、俺と一緒に

 パワプロに勝って甲子園に行こうぜ!」

 

御幸は成宮の言葉に悩まずに、直ぐに答えを返した。

 

「悪いな、鳴。俺は青道に行く。」

「なんでだよ、一也!」

「鳴、キャッチャーなんて誰でもいいよ。」

 

御幸の返事に噛みついた成宮に、白河がそう言う。

 

白河の言葉に、御幸はにこやかに微笑みながらもコメカミに青筋を浮かべた。

 

「おいおい、白河。俺のおかげで今日の試合、パワプロは完全試合をやったんだぜ?」

「それを言うなら、昨日のアメリカとの試合で、鳴が打たれたのは御幸のせいじゃん。」

 

売り言葉に買い言葉とでも言うのか、御幸と白河は笑顔でお互いに毒を吐いていく。

 

御幸は1つ息を吐いて気持ちを落ち着けてから、成宮に言葉を掛けた。

 

「鳴、俺は青道に行く。」

「後悔するぞ、一也!」

 

成宮はそう言うと、肩を怒らせながらベンチに荷物を取りにいった。

 

「後悔なんてしねぇよ、鳴。」

 

御幸はそう言うと、楊と話をしているパワプロに目を向ける。

 

「俺はあいつと野球がしたいんだ。」

 

御幸がそう呟くと、パワプロは話が終わったのか、楊と握手をしていた。

 

「それに、クリスさんに負けたままで終われないからな。」

 

そう言うと、御幸はとびっきりの笑顔になる。

 

「首を洗って待っていてくださいよ、クリスさん!」

 

パワプロと合流した御幸は、楊と何を話していたのか聞き出そうとパワプロと肩を組む。

 

そして、パワプロと御幸は今日の試合の事を楽しそうに話しながら、家に帰っていくのだった。




次の投稿は午後13:00の予定です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。