『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿4話目です


第55話

台湾の中学生選抜チームとの練習試合を終えた翌週、俺と一也は礼ちゃんとの約束通りに

青道高校の見学に行くのだった。

 

「あら、2人共早いわね。」

 

青道高校の校門前で一也と2人で待っていると、礼ちゃんがやって来た。

 

「俺は今日の学校見学を楽しみにしてたよ、礼ちゃん!」

「葉輪くん、学校内では先生って呼んでね。」

「まぁまぁ、礼ちゃん。そう言わずにさぁ。」

 

俺の言葉に、礼ちゃんがやんわりと釘を刺すのだが、一也が茶化す様に言葉を続けた。

 

そんな俺達に礼ちゃんは軽くため息を吐く。

 

でも、礼ちゃんは顔を上げると、笑顔で俺達にこう言ったのだった。

 

「葉輪くん、御幸くん、ようこそ青道高校へ。」

 

礼ちゃんの笑顔につられて、俺と一也も笑顔になる。

 

うんうん、礼ちゃんは笑っても美人だねぇ。

 

貴子ちゃんも負けてないけどな!

 

 

 

 

礼ちゃんの歓迎の言葉の後は、礼ちゃんの案内で野球部を中心に見学をしていった。

 

「ここが、屋内練習場よ。」

「「へ~。」」

 

流石は強豪と言われる青道高校。

 

施設の充実っぷりに、俺と一也は驚きの言葉しか出てこない。

 

「どうかしら、2人共?」

「例え一般入試でも!俺は青道高校に入るよ、礼ちゃん!」

「高島先生よ、葉輪くん。」

 

俺の意気込みに、礼ちゃんは苦笑いしながら訂正を入れてくる。

 

「ねぇ、礼ちゃん。先輩方の練習を見学したいんだけど。」

「御幸くん、高島先生よ。」

 

一也の申し出に、礼ちゃんはため息を吐きながら訂正を入れる。

 

「今は秋の大会前だから、レギュラー争奪の為に皆、追い込みに入っている所ね。」

 

そう言うと、礼ちゃんが先導として歩き始めた。

 

俺と一也は礼ちゃんの後をついていく。

 

「もう一本!お願いします!」

 

グラウンドの近くに来ると、大きな声が聞こえてきた。

 

「あの子は結城くんね。」

 

礼ちゃんは手にしていた資料を確認しながら話始めた。

 

「結城くんは2人の1つ上の先輩よ。入部当時の結城くんの守備は、同学年でも

 下から数えた方が早いぐらいの実力だったの。」

 

礼ちゃんはそう言うのだが、ノックを受けている姿を見ると、そうは思えない。

 

ちなみに、ノッカーをしているのは俺の憧れの人である、片岡 鉄心さんだった。

 

ウォ―――!片岡さ―――ん!!

 

「結城くんは、クリスくんと同じぐらい練習熱心で、誰よりも早く

 グラウンドに来て走っているの。」

 

礼ちゃんにそう言われて結城先輩の動きを見ていると、基本の動きを黙々と繰り返している。

 

そして、誰よりも率先して声出しをしているのだ。

 

「夏の大会ではベンチにも入れなかったけど、これからに期待出来る選手ね。」

 

礼ちゃんの言葉に、俺と一也は納得した様に頷いた。

 

「来いやオラァ!」

 

結城先輩がノックを終えると、外野の先輩からそんな声が聞こえてきた。

 

「あの子は伊佐敷くんね。結城くんと同じ、貴方達の1つ上の先輩よ。」

 

伊佐敷という先輩は、威勢の良い声を上げているのだが、外野のノックを

受ける姿はどこかぎこちない。

 

「伊佐敷くんは元々投手志望の子なのよ。」

「投手志望?」

 

俺の疑問に礼ちゃんが答えていく。

 

「伊佐敷くんは肩も強くて投手として期待されていたのだけど、

 コントロールがちょっとね…。」

 

礼ちゃんは俺に苦笑いを見せながらそう言う。

 

「夏の大会前の練習試合に伊佐敷くんが登板したのだけど、三連続与四球の後に、

 置きにいったボールをホームランにされてしまったの。」

 

礼ちゃんの話を聞きながら伊佐敷先輩のノックを見ていると、また伊佐敷先輩の

威勢の良い声がグランドに響いた。

 

「その練習試合の後に、伊佐敷くんはコントロールの改善に取り組んだのだけど、

 うまく行かなかったのよ。それで、今は外野へのコンバートを試みている所ね。」

 

伊佐敷先輩は真剣な表情で打球を追っていっている。

 

でも…。

 

「もったいないなぁ…。」

「葉輪くん、どういうことかしら?」

 

俺の言葉に礼ちゃんと一也が顔を向けてくる。

 

「礼ちゃん、知ってる?俺もリトル時代の最初の方はコントロールが良くなかったんだよ?」

「あら、そうなの?シニアの試合を見た限りでは信じられないわね。」

「俺も礼ちゃんに一票。パワプロ、俺とリトルで初めて対戦した時から

 コントロール良かったじゃん。」

 

俺は一也の言葉に笑いながら答える。

 

「あの日はたまたま調子が良かっただけだよ、一也。」

「マジかよ。」

「後でクリスさんに聞いてみたら、わかると思うぞ。」

 

俺の言葉に一也は頭を掻きながらため息を吐いた。

 

「葉輪くん、伊佐敷くんのコントロールは改善出来るかしら?」

「少しぐらいならアドバイス出来るけど、俺にはクリスさん程の知識はないよ、礼ちゃん。」

 

俺の返答に、礼ちゃんは何かを考え始めた。

 

「2人共、ここで少し待っていてくれるかしら?」

「どうしたの、礼ちゃん?」

「片岡監督に許可を貰って、伊佐敷くんを呼んでくるわ。」

 

そう言うと、礼ちゃんはノッカーをしている片岡さんの元に向かったのだった。




次の投稿は午後3:34の予定です

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