『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です


第58話

一也の一言でクリスさんを見ていると、確かに違和感を感じた。

 

「ほんとだ。何か変だな。」

「だろ?」

 

う~ん、何が変なんだろ?

 

「どうしたのかしら?」

「礼ちゃん、クリスさんが何か変なんだ。」

「クリスくんが?」

 

礼ちゃんの言葉に答えながら、俺と一也はクリスさんを見ていく。

 

クリスさんは純さんのボールを受けると、『横から投げて』返球した。

 

ん?横から?

 

「一也?」

「わかったか、パワプロ?」

「多分だけど、クリスさんが横から投げてる。」

 

俺の言葉を確かめる様に、一也はクリスさんを見ていく。

 

そして、クリスさんの返球の仕方を見た一也は、目を見開いた。

 

「パワプロ、クリスさんって上から投げてたよな?」

「うん。」

 

俺と一也は顔を見合わせると1つ頷いた。

 

「クリスさん!」

 

俺が上げた声に、ブルペンにいる人達の注目が集まる。

 

「どうした、葉輪?」

 

クリスさんがマスクを外しながらそう言う。

 

「クリスさん、シニアでは上から投げてましたけど、返球の仕方を変えたんですか?」

 

俺の言葉にブルペンにいる皆の注目が、クリスさんに集まる。

 

「クリス。」

 

片岡さんが厳しい視線をクリスさんに送る。

 

「すいません…少し前から肩に違和感があります。」

「クリス!何で言わんのや!ボール受けてる場合ちゃうやろう!」

 

クリスさんの言葉に東さんが怒る。

 

「すいません…。」

 

クリスさんが俯きながらそう呟く。

 

「高島先生、太田部長に連絡してクリスを病院に連れていってください。」

「はい。」

 

片岡さんの指示で礼ちゃんが動き出した。

 

「クリス、大会前の大事な時期でも、これからは怪我を隠す様な事をするな。」

「はい、すいませんでした。片岡監督。」

 

そう言ってクリスさんは片岡さんに頭を下げた。

 

その後、クリスさんは太田部長(?)という人と一緒に病院に向かった。

 

ブルペンに残された俺達の間には、気まずい雰囲気が流れていた。

 

このままじゃ練習に身が入らないだろうなぁ…。

 

よし!

 

「片岡さん、キャッチャー用の防具って借りられますか?」

「どういう事だ、葉輪?」

 

俺と片岡さんのやり取りに注目が集まる。

 

「クリスさんの代わりに、一也にボールを受けてもらおうかなって思いまして。」

 

俺の言葉に片岡さんは一也に目を向けた。

 

「葉輪はこう言っているが、御幸、お前はどうする?」

 

急に話しを振られた一也は吃驚している。

 

「おい、パワプロ?」

「クリスさんの事は残念だけどさ、それで練習に身が入らなかったって聞いたら、

 クリスさんは責任を感じると思うんだよね。」

 

俺の言葉に納得したのか、一也が頷く。

 

「というわけで、ここはクリスさんの後輩である俺達が一肌脱ごうというわけだ。」

「いや、一肌脱ぐ事になるのは俺だけじゃん。」

 

一也が苦笑いしながらそう言うが、どうやらボールを受ける気になったようだ。

 

「いやいや、要望があれば俺もバッティングピッチャーをやるぞ?」

「という事らしいですよ、先輩方!」

「おぉ!?嵌めやがったな、一也!性格悪いぞ!」

「キャッチャーにとっては誉め言葉だな。」

 

俺達のやり取りに、東さんが大笑いする。

 

「はっはっはっ!クリスはええ後輩を持っとるやないか!」

 

東さんの言葉で、ブルペンにいる皆の雰囲気が和らいだ。

 

「丹波、伊佐敷。葉輪は年下だが得られるものがある筈だ。しっかりと学べ。」

「「はい!」」

 

こうして俺と一也は急遽、青道の練習に参加する事になった。

 

クリスさんがどの程度の怪我をしているのかはわからないけど、クリスさんなら

戻ってくると信じている。

 

だから…頑張ってください、クリスさん!




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