『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿4話目です


第60話

「葉輪くん、そろそろ切り上げましょうか。」

 

東さんのバッティングピッチャーをしていると、礼ちゃんからそう声を掛けられた。

 

「忘れてるかもしれないけど、今日は学校見学なのよ?」

 

あ…完全に忘れてた。

 

「高島先生!ちょっと待ってもろうてええですか!?」

 

東さんの申し入れに礼ちゃんが頷く。

 

すると、東さんはバットで俺を指し示しながら声を上げた。

 

「葉輪!最後に1打席勝負や!」

 

東さんの言葉に、俺は笑顔になる。

 

「東さん!3打席勝負にしましょう!」

「試合での打席数と同じ条件でっちゅうことやな?」

「はい!」

 

俺の申し入れに、東さんが笑みを浮かべる。

 

「よっしゃ!俺はそれで構へんで!」

 

そう言うと、東さんはバットを振り始めた。

 

礼ちゃんは額に片手を当てて、ため息を吐いている。

 

そして、俺は東さんとの3打席勝負を楽しんだのだった。

 

3打席勝負の結果は、3三振で東さんを抑えたぜ!

 

俺は一也とハイタッチした。

 

イエーイ♪

 

 

 

 

「すげぇな…。」

 

パワプロの投球を見ていた伊佐敷が、呟く様に話す。

 

「あぁ、やっぱりアイツは凄い。」

 

そして、丹波が伊佐敷に相づちを打つのだが、その顔はどこか晴れやかだった。

 

そんな丹波の顔を見た伊佐敷は、目を見開いた。

 

「丹波、お前…変わったな。」

「そうか?」

「おう、少し前はいつも切羽詰まってる感じだったからな。」

 

伊佐敷の言葉に、丹波は苦笑いする。

 

「まぁ、今のお前なら、俺もエース争いのしがいあるってもんだ!」

 

伊佐敷はそう言うと、笑顔になる。

 

対して、丹波も伊佐敷に笑みを返す。

 

「負けねぇぞ、丹波!」

「あぁ、俺も負けるつもりは無い…伊佐敷!」

 

そう言うと、2人は拳を合わせてから練習に戻るのだった。

 

 

 

 

パワプロと御幸が青道高校の学校見学を終えて帰った後も、青道高校野球部の練習は続いた。

 

そして練習が終わった後も、1人バットを振り続けている男がいた。

 

「全然足りんやないか!こんなんで俺はプロに行くつもりやったんかい!」

 

そのバットを振っている男は、東 清国だった。

 

「もっと走るんや、もっとバットを振るんや!」

 

東はパワプロとの3打席勝負で完敗した事で、ドラフト候補として持ち上げられて、

浮かれていた自分に気づいたのだ。

 

「浮かれてる場合やないぞ…東 清国!」

 

その後も東は、真剣な表情でバットを振り、多くの汗を流していく。

 

そんな東に影響されたのか、多くの青道高校野球部の者達が、

練習後にも汗を流していくのだった。

 

 

 

 

青道高校の学校見学を終えてから数日経った頃、礼ちゃんが家に来て話し合いをした。

 

俺を特待生として青道高校に迎える事、そして入寮するかどうかを

両親を交えて話し合ったのだ。

 

特待生の件に関しては直ぐに終わった。

 

これで来年からは青道高校の一員だぜ!

 

しかし、入寮に関してはかなりの時間、話し合いが続いたのだった。

 

問題の1つは、青道高校が歩いて通える範囲にある事。

 

そして、もう1つが食事に関する事だった。

 

身体作りに食事は欠かせない。

 

なので野球選手を志したあの時から、母さんの協力の元、食事には気をつけている。

 

まぁ、大会で優勝したご褒美等で、美味しいものを食べたりするのはご愛嬌だ。

 

ちなみにシニアに上がってから、大会の時に食べる弁当は貴子ちゃんが作ってくれていた。

 

葉輪、藤原両家の母親監修の元、貴子ちゃんは日々、料理の練習をしているみたいだ。

 

どうやら将来の為の練習らしい。

 

俺としては、これからも貴子ちゃんの手料理を食べたい。

 

その事を素直に伝えたら、貴子ちゃんは顔を真っ赤にしながら頷いてくれた。

 

やったぜ!ひゃっほい♪

 

その事を聞いていた両家の母親が、何やら微笑ましそうに見ていたので首を傾げたら、

何故か貴子ちゃんに両頬を引っ張られてしまったんだよな。

 

解せぬ…。

 

おっと、いかん。

 

今は寮に入るかどうかの話し合い中だった。

 

「なるほど…確かに、この食事内容でしたら問題ありませんね。」

 

礼ちゃんは母さんが書いた、俺の日々の食事内容を見て頷いていた。

 

「では、風路は家から通わせるという事でよろしいですか?」

「はい、それで結構です。」

 

お?どうやら話が纏まった様だ。

 

「それと、私の方からも藤原さんに協力をお願いしておきますね。」

「あらあら、いいのかしら?」

「教師としては問題なのかもしれませんが、1人の女としては応援していますから。」

 

礼ちゃんがそう言うと、何故か母さんと礼ちゃんは笑うのだった。

 

まぁ、こんな感じで俺は、来年から青道高校に通う事になった。

 

そして、秋が終わり、冬が過ぎて、待ちかねた春が来る。

 

いよいよ、俺が青道高校野球部の一員になる日がやって来たのだった。




次の投稿は午後3:34の予定です

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