いよいよ春季大会の東京地区予選が始まった。
青道高校はシードだったので2回戦からだ。
青道高校の初戦となる東京地区予選の2回戦、先発は丹波さんだ。
丹波さんが1回の表を3人で抑えると、1回の裏の青道打線が先制点を取った。
試合は進んでいき、4回の裏が終わると、5ー0で青道高校が勝ち越している。
だけど、5回の表。
相手打線の先頭打者が、センター前のヒットで出塁すると、丹波さんは相手打線に
連打を浴びたのだった。
◆
カキンッ!
金属バットの音が球場に響いて、打球が外野へと飛んでいく。
打球は左中間を抜けて、ツーベースヒット。
2塁ランナーがホームに帰って1失点。
このヒットで、丹波は相手打線に3連打されていた。
現在の状況は5回の表、ノーアウト、ランナー2、3塁。
丹波の心臓は早鐘の様に鳴り響いていた。
汗を冷たく感じている丹波は、マウンドで大きく息を吐きながら、帽子を被り直す。
帽子を被り直す際に、丹波は帽子の鍔に目を向ける。
そこには『ピンチはチャンス』と書かれていた。
去年、パワプロが学校見学の時に言った『ピンチはヒーローになるチャンス』を聞いて、
丹波が帽子に書いた言葉だ。
この言葉を聞いてから、丹波は1つ個人的な欲を持つようになった。
ヒーローになりたい。
単純な思いだが、これが丹波に開き直りに近い心境を与える様になった。
もっとも、元々はノミの心臓の丹波である。
そう簡単に気持ちを切り替える事は出来ない。
だが、丹波は少しずつだが、ピンチの状況で自身をコントロールする経験を
積み上げていっているのだ。
帽子を被り直した丹波が、キャッチャーのサインを見る。
サインに頷き、丹波は投球モーションに入った。
丹波が投じたのはフォーシーム。
コースはインハイ。
やや甘めのコースのフォーシームを、右打席に立つ相手打者が弾き返す。
打球はレフト方向へ。
レフトが打球の落下点に入って構える。
レフトは打球を捕ると、素早く中継のショートへボールを投げる。
3塁ランナーはタッチアップして、相手チームが1点追加。
これで5ー2。
だが、連打を浴びていた丹波が取ったワンアウトに、ナインが声を上げて盛り上げていく。
そのナインの声に、丹波は冷たく感じていた汗を感じなくなるぐらいに、
身体が熱くなるのだった。
◆
5回の表に相手チームに連打を浴びた丹波さんだったが、3失点で切り抜けると、
雄叫びを上げながらベンチに戻ってきた。
そして5回の裏。
丹波さんの雄叫びに答える様に、東さんがホームランを打った。
亮さんが塁に出ていたので2点追加だ。
あ、亮さんというのは小湊さんの事だ。
シートバッティングをした日の練習後に、少し話をして仲良くなったんだよね。
ちなみに、その時に結城さんとも話をして、哲さんと呼ぶようになった。
2人は俺の事をパワプロって呼んでくれるぞ!
さて、東さんがホームランを打った後に、哲さんもツーベースヒットを打ったりして、
青道は3点を追加した。
これで8ー3だ。
6回の表に、また丹波さんが連打を浴びたが、6回の表は2失点で切り抜けた。
8ー5と相手チームに詰め寄られたが、東さんが笑顔で丹波さんの背中を叩いたりして、
青道ベンチの雰囲気は明るい。
「よっしゃあ!後は任せろ、丹波!」
そう言った純さんが、7回の表から登板。
純さんは、7回、8回を1失点で抑えて降板。
最終回は3年生の人が登板して、無失点で抑えた。
2回戦は10ー6で青道高校の勝利だ!
続く3回戦は俺が先発する事になっている。
3回戦の相手は稲城実業…白河やカルロス、そして成宮が行った高校だ。
試合をするのが楽しみだぜ!
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