春季大会の東京地区予選の第3回戦。
青道と稲実の試合が始まった。
1回の表、青道の攻撃。
1番バッターの亮さんが粘って、相手投手の球種や球筋を後続に見せていくが、
7球目を引っ掛けてしまい、内野ゴロに打ち取られた。
続く2番バッターも凡退し、3番バッターのクリスさんが打席に入る。
カキンッ!
金属バットの快音が響き、打球は左中間へと飛んでいき、ツーベースヒット。
これでツーアウトながら2塁のチャンス。
次のバッターは4番の東さんだ。
カウントは進んでツーストライクと追い込まれたが、打席の東さんに焦りの様子は見えない。
そして、稲実の投手が投げた3球目に東さんのバットが反応した。
キンッ!
打球は右中間方向に高く上がると、そのまま飛んでいく。
打球を追っていた、稲実のセンターとライトが足を止めた。
東さんは2回戦に続いて、3回戦でもホームランを打った!
東さんスゲェ!
5番バッターの哲さんはライトフライに倒れて、1回の表が終わった。
さぁ!いよいよ俺の出番だぜ!
俺は意気揚々とマウンドに向かう。
俺がマウンドに立つと、スタンドが少しざわざわとなり始めた。
そのざわつきに目を向けると、スタンドに特徴的な白髪を発見。
あ、成宮だ。
成宮の近くにカルロスと白河もいるな。
そんな事を考えながら、ロージンバッグを手につけて、投球練習を始める。
カーブ以外の変化球禁止かぁ~…クリスさんはどういうリードをするんだろ?
リトル以来の球種で試合に挑むので、俺は少しドキドキしている。
投球練習が終わり、主審のコールで1回の裏が始まったのだった。
◆
「パワプロの球速、速くなってないか?」
スタンドで見学をしているカルロスがそう言うと、成宮と白河が頷く。
「問題ねぇよ。俺だって140km投げられる様になったし。」
「練習中の新変化球も夏までに完成したらいいんだけどね。」
成宮の言葉に、白河が言葉を続けると、成宮はキッと目を白河に向けた。
「あれが無くても、俺はパワプロに投げ勝つ!」
「でも、あれがあった方が球数を抑えられるからって、原田さんに言われて納得したじゃん。」
白河にそう言われると、成宮は言葉を続けられなかった。
原田 雅功。
原田は成宮達の1つ上の先輩で、2年生ながら稲実の正捕手の座を掴んだ実力者だ。
その原田とバッテリーを組んだ成宮は、普段の投げ込みから、アレコレと
原田と意見を交換するようになったのだ。
「パワプロ、カーブの変化量も上がってないか?」
カルロスの指摘に、成宮と白河は目をグランドに戻した。
「カルロスの言う通りかもね。スタンドじゃなくて、ベンチから見たかったなぁ。」
白河の言葉にカルロスが頷く。
その後、成宮達は静かに試合を見守ったが、1回の裏の稲実の攻撃は、
3者凡退に終わったのだった。
◆
1回の裏を3者凡退で抑えると、青道は流れを掴んだのか、順調に得点を重ねていく。
6回の表の攻撃が終わると、青道打線は稲実投手陣から7点を奪っていた。
対して俺は、稲実打線にヒットは打たれているものの、
得点は許さずに0点に抑えてきた。
しかし、6回の裏。
ランナーが2人いる状況で、稲実のキャッチャーの人にホームランを打たれてしまった。
これでスコアは7ー3。
右手を上げてベースを回っているキャッチャーの人に、稲実ベンチは
大きな声で称賛を送っている。
稲実のキャッチャーの人がホームインすると、クリスさんがタイムを取って、
マウンドにやって来た。
「葉輪、すまん。今のホームランは俺のミスだ。」
うぇい?クリスさん、ホームランを打たれたのは俺ですよ?
そんな事を思いながら首を傾げると、クリスさんは苦笑いした。
「さっきのは俺のリードが読まれた結果、打たれたホームランなんだ。」
へ~、相変わらずキャッチャーは、俺にはわからない駆け引きをしているんだなぁ。
「同じ失敗を繰り返すつもりはない。だから、頼んだぞ。」
「はい!」
俺が返事をすると、クリスさんはミットで軽く俺の胸を叩いてから戻っていったのだった。
その後、俺は7回まで投げて降板した。
俺の投球結果は、8三振、被安打7、3失点だ。
試合は8ー5で俺達の勝利だ!
高校野球デビューを勝利で飾ったぜ!
ひゃっほい♪
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