『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿4話目です


第75話

「フーくん、今日の試合もカッコ良かったよ。」

「ありがとう、貴子ちゃん。」

 

関東大会の第2回戦が終わり、青道高校に戻った後にミーティングをしたんだけど、

それも終わった今は、貴子ちゃんと一緒に家に帰っていた。

 

寮で生活しているメンバーは、まだ寮に帰らずにグランドで練習をしている。

 

俺も残って練習したかったんだけど、今日の試合は1人で投げ抜いたから休めと、

片岡さんに言われてしまったので大人しく家に帰っているのだ。

 

そういえば、貴子ちゃんと一緒に帰る前に、礼ちゃんが貴子ちゃんに何かを

耳打ちしていたんだけど、何を言ってたんだろうな?

 

「家に帰ったら、マッサージをしてあげるからね♪」

 

そう言って貴子ちゃんは、繋いでいた手を離して、腕を組んできた。

 

おうふ…右腕に幸せな感触が…。

 

非常に嬉しいんだけど、いいのかな、これ?

 

貴子ちゃんを見ると、なんか嬉しそうに笑っている。

 

うん、貴子ちゃんがよければ、このままでいいか!

 

その後は今日の試合の事とかを、貴子ちゃんと楽しく話しながら家に帰ったのだった。

 

 

 

 

パワプロが家に帰っている一方で、青道高校の野球部グランドでは多くの者が汗を流していた。

 

今日の試合で見せた、パワプロの圧倒的なパフォーマンスが、青道高校野球部に所属する、

多くの部員の心に火をつけたのだ。

 

パワプロと同じ1年生の投手の中には、監督の片岡に守備位置のコンバートを相談する者も

いるが、多くの者は夏の大会のレギュラーの座を勝ち取るべく、汗を流している。

 

そんな青道高校野球部部員の中で、部室でスコアブックを見ながら、

厳しい表情をしている者がいた。

 

「今日の試合で葉輪に首を横に振られたのは、およそ5割か…。」

 

スコアブックを見ながら、そう言うのはクリスだった。

 

「今日の試合の葉輪のボールがキレていたのは、あいつが投げたいボールを投げたからという

 可能性が高い…。もし、今まで通りに俺のリードで投げさせていたら、

 半分はボールのキレを活かせなかったかもしれないのか…。」

 

そうクリスが言うと、部室に誰かが入ってきた。

 

「あれ?クリスさん、それって今日のスコアブックですか?」

 

その言葉にクリスが顔を上げると、そこには御幸がタオルで汗を拭きながら立っていた。

 

「それで、クリスさんは何を悩んでたんですか?」

 

御幸の言葉に、クリスは無言でスコアブックを渡した。

 

「相変わらず、藤原先輩の書いたスコアブックは見やすいですね。」

 

そう言いながら、御幸はスコアブックに目を通していく。

 

「御幸、もし今日の試合でお前がリードしていた場合、葉輪はどれだけ首を横に振った?」

「ちょっと待ってくださいね。え~と…?」

 

クリスの質問に、御幸はスコアブックを見ながら考えていく。

 

「ざっと2割ってとこですね」

「2割か…」

「はい。もっとも、フォーシームとカーブの2球種だけの話ですから、球種が増えたらもっと

 増えるかもしれないですけどね。」

 

御幸はそう言うが、内心では然程変わらないと思っている。

 

対してクリスは、パワプロが首を横に振る回数が増えると思っていた。

 

これは、クリスの試合勘の欠如が、リードの際の情報処理能力を下げているのが原因なのだ。

 

「…かなり苦戦しているみたいですね。」

「あぁ。だが、手応えはある。」

 

御幸はスコアブックを見て、クリスのサインとパワプロの投げたいボールの

ズレを認識しながらそう言うが、クリスは意外にもこの状況を前向きに捉えていた。

 

そんなクリスの様子に、御幸は面白そうに笑みを浮かべる。

 

「どうやら、大丈夫そうですね。」

「なんだ?心配していたのか?」

「1時間も1人で部室に籠っていたら、心配の1つもしますって。」

 

御幸が苦笑いしながらそう言うと、クリスも苦笑いを返した。

 

「それはすまなかったな、御幸。」

「いえいえ、出来た後輩でしょう?」

「自分で言うな。」

 

クリスがそう言うと、御幸は大きな声で笑った。

 

「さて、御幸。少し話に付き合ってもらうぞ。俺の認識と動きが、

 どれだけズレているのか知りたいからな。」

「いや~、練習してきたんで喉が渇いたなぁ?」

 

御幸の要求に、クリスはプッと吹き出してしまう。

 

「性格が悪いぞ、御幸。」

「キャッチャーにとっては誉め言葉ですね。」

 

その後、クリスと御幸はスコアブックを見ながら、日が暮れるまで話し合いを続けたのだった。




次の投稿は午後3:34の予定です

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