関東大会の第3回戦、先発は丹波さんなのだが、この試合の丹波さんのカーブは、
いつもよりもキレていた。
決め球、カウント球にも使える事で、初回は三者三振で抑えた。
勢いに乗った丹波さんは、6回を8三振、2失点で降板。
今日の丹波さんの調子なら、完投もいけるんじゃないかなと思ったんだけど、
6回終了時点での球数が100球に達していた事もあり、ここで降板した。
7回のマウンドには6ー2と4点差があったのでノリが登板した。
ランナーが1人いる状況で、真ん中に抜けたシンカーをホームランにされてしまい、
2点差に詰め寄られたが、今日のノリは1イニングをしっかりと投げ抜いた。
8回は3年生の投手の人が0で抑えて、純さんが抑えで登板。
純さんはカットボールを、フェンス直撃のツーベースヒットにされてしまったものの、
失点はせずに9回を抑えて、青道高校は3回戦を勝ち進んだ。
続く4回戦、先発した俺は8回を2失点、7三振、被安打7で降板した。
この試合はいつも通りにクリスさんのサインに頷いて投げたんだけど、
試合前にクリスさんに、俺の考えで首を横に振ってもいいって言われたんだよね。
正直な話、投げたいボールを投げようか、クリスさんのサイン通りに投げようか、
マウンドで凄い迷った。
迷ったせいなのか、4回戦では2回戦の様にビシッと嵌まる感覚が無く、
初回にいきなり2失点してしまったのだ。
その後もヒットは許したものの、追加点は許さず、しっかりと抑えられたのは良かったと思う。
精神的に疲れた様に感じた試合だけど、これはこれで面白い試合だったな。
そんな感じで4回戦は7ー2の結果で青道高校の勝ちだ。
そして、迎えた準決勝となる第5回戦。
相手は何度も春、夏の甲子園に出場している茨城県の強豪高校だ。
この関東大会でも優勝候補として注目されているらしい。
そんな相手との試合、青道打線は1回の表を無得点で終えてしまう。
そして、先発の丹波さんは初回から失点してしまったものの、
粘り強く投げていった。
だけど、流石は優勝候補といったところなのか、丹波さんは4回で6失点してしまう。
球数は70球程なので、まだ体力的に余裕があっても良さそうなのだが、
4回を終えてベンチに戻ってきた丹波さんは、多くの汗を流しながら肩で息をしている。
ここで片岡さんが丹波さんに問い掛けた。
「丹波、まだ行けるか?」
丹波さんは汗を拭いてから立ち上がると、大きな声で「はい!」と返事をした。
「あと1回、全力で行け!」
「はい!」
5回裏のマウンドに上がった丹波さんは、ランナーを背負ったものの、
この回を無失点で切り抜けた。
5回終了時点で5ー6。
1点を追い掛ける状況の6回裏、マウンドに上がったのは3年生の投手だ。
6回、7回と1失点ずつ相手に奪われてしまうが、青道打線も得点を重ねて
相手に食らいついていく。
7回終了時点で7ー8。
1点差が遠く感じる様な状況の8回裏、マウンドには純さんが上がる。
純さんが8回の裏を3人で抑えると、9回の表の打席に立った東さんが、
値千金の同点ホームランを打った。
青道ベンチは大盛り上がりだが、相手チームの継投策の前に、東さんのホームランによる
1点だけに抑えられてしまった。
そして、9回の裏。
マウンドの純さんは、悔しさのあまりに大きな声で吠えたのだった。
◆
「うおぉぉぉぉおおお!」
純さんの声がグランドに響き渡る。
純さんからホームランを打った相手バッターは、拳を突き上げながらベースを回っていた。
グランドの皆だけじゃなく、ベンチの皆も俯いている。
「お前達、顔を上げろ。」
片岡さんの声で、ベンチの皆が顔を上げる。
「夏に、甲子園でリベンジするぞ。」
片岡さんの言葉に、皆が歯を食い縛る。
そして…。
「「「はい!」」」
青道高校の皆の誓いの声と共に、俺達の春季大会は終わりを迎えたのだった。
これで本日の投稿は終わりです
また来週お会いしましょう