春季大会が終わると、青道高校野球部の皆は、夏の高校野球選手権大会の
レギュラーの座を勝ち取ろうと練習に励んでいる。
俺はブルペンで投げ込みをしているメンバーに目を向けた。
3年生が3人に、2年生の丹波さんと純さん、そして俺が現在の1軍投手陣だ。
そう、残念ながらノリは春季大会終了と共に2軍に落ちてしまった。
ノリ自身、色々と足りないと自覚していたようで、俺に必ず1軍に戻ってくると約束して、
2軍の練習に合流していった。
野手の方で1軍に残った1年生は一也だけだ。
一也は春季大会において、チャンスの場面でしっかりと結果を残したのが評価されたみたい。
そんな一也は、ブルペンで俺のボールを受けている。
「パワプロ!スライダーを頼む!」
おっと、一也からリクエストが来たので、スライダーを投げるか。
俺はツーシームの握りから、スライダーを投げる。
ボスッ!
俺のスライダーを捕った一也のミットの音は、鈍い音がした。
「ナイスボール!もう1球頼む!」
俺は一也の返球を受けながら、今の自分の能力を確認した。
基礎能力
最高球速:145km(※160km)
制球:S
スタミナ:C
変化球:カーブ6(※7)
変化球2:チェンジアップ6(※7)
変化球3:高速スライダー2(※7)
春季大会終了後に、スタミナと高速スライダーのランクを1つ上げた。
次に野手能力を確認する。
基礎能力2
弾道:3
ミート:E
パワー:D
走力:D
肩力:B
守備:D
捕球:C
野手能力は弾道とミート、そしてパワー等の打撃能力を1ランク上げた。
春季大会の関東大会準決勝での東さんのホームランがカッコ良くて、
俺も打ちたいと思ったんだよね。
まぁ、今のパワーだとインコースを思いっきり引っ張らないと、
ホームランを打てないけどな!
さて、最後に特殊能力を確認だ。
特殊能力
『鉄腕』
『鉄人』
『身長高い』
『リリース○』
『ノビ5』
『キレ◎』
『牽制○』
『バント○』
特殊能力は新しく『牽制○』と『バント○』を取得した。
『牽制○』を選んだ理由は、シートバッティングの時に、ランナーをしていた倉持に
走られまくったからだ。
本当は『クイック○』と『牽制○』で悩んだんだけど、クリスさんと一也に相談したら、
「倉持の足でも、後半歩リードを狭く出来れば刺せる」って言ったんだよね。
他にもクイックを速くする過程でフォームを崩すのが怖いとかなんとか…。
だから、クイックに関しては及第点レベルで出来ているから、焦らずにじっくりと
やっていこうと、2人との話し合いで決めたのだ。
『バント○』は現在バッティングがあまり上手くない俺が、攻撃面で少しでも貢献する為だな。
「パワプロ、どうした?」
おっと、能力画面を見ていたらボーッとしていると思われたのか、
一也に声を掛けられてしまった。
「何でもない!」
俺はそう言ってから、投球フォームに入る。
ボスッ!
う~ん、高速スライダーもかなり狙った所に投げられる様になったんだけど、
一也のミットはいい音が鳴らないなぁ…。
近々、1軍と2軍、そして3軍で紅白戦をするって片岡さんが言っていたから、
それまでに高速スライダーを仕上げておきたいぜ!
その後、俺は気合いを入れて投げ込みをしていった。
でも、今日の投げ込みではスライダーで一度もいい音をさせる事が出来なかった…。
う~ん、残念!
◆
「いってぇ~…。」
パワプロが投げ込みを終えた後、御幸は赤く腫れてしまった左手を氷で冷やしていた。
そんな御幸の所に、片岡がやって来た。
「御幸、クリスから報告を受けているが、葉輪のスライダーはどうだ?」
「捕球しきれなくて、ご覧の有り様ですね。」
御幸は冷やしていた左手を、片岡に見せながら苦笑いする。
「夏には使えそうか?」
「キャッチャーが捕れるかを別にすれば、間違いなく使えます。」
御幸の言葉に、片岡は頷く。
「そうか。最悪、カーブとチェンジアップで行くことを想定しておけ。」
「はい!」
御幸の返事を聞くと、片岡はその場を後にした。
だが、残っている御幸は真剣な目で、自身の左手を見詰めていた。
「監督にはああ言ったけど…俺にも捕手としての意地があるんだよな。」
御幸はニッと笑うと、宣言をする様に思いを言葉にする。
「絶対にパワプロのスライダーを捕れる様になってやる!」
そう言うと御幸は、まだ赤いままの左手を握り締めたのだった。
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