青道高校野球部の1軍、2軍、3軍による紅白戦が始まった。
まずは、今年入部した1年生と3軍の先輩方による紅白戦だ。
この紅白戦で実力を見て、1年と3軍のメンバーから選抜したメンバーと、
2軍の人達で紅白戦をやるらしい。
さて、1年生と3軍の人達の紅白戦は、3軍の先輩方の圧勝だった。
俺は同じ1年生として残念だと思ったが、先輩方も這い上がろうと必死なんだから、
この結果も仕方ないんだろうな。
3軍選抜メンバーと2軍の紅白戦は、これまた順当な結果というべきなのか、
2軍メンバーの勝利だった。
だけど、数人の人が3軍から2軍へと昇格したので喜んでいたな。
そして、いよいよ俺の出番となる暫定1軍チームと、2軍選抜チームの紅白戦が始まった。
ちなみにこの紅白戦、レギュラー当確である東さんと他数名の3年生は参加しない。
暫定1軍チームの先発投手は丹波さんだ。
丹波さんは先発のマウンドに上がると、2軍選抜チームの打線を抑えていった。
3回を投げて、被安打3、奪三振4、失点0という結果だった。
マウンドを降りてきた丹波さんは、俺と純さんとハイタッチをした。
イエーイ♪
4回からは純さんがマウンドに上がった。
これに伴い、丹波さんのボールを受けていたクリスさんから、3年生の捕手に交代。
純さんはマウンドの上で「行くぞオラァ!」と威勢の良い声を上げている。
そんな純さんは3回を被安打1、奪三振2、失点0で抑えた。
被安打1という結果だったけど、2本程ヒット性の当たりを、
亮さんがファインプレーでアウトにしたんだよね。
亮さんは純さんに「アピールの機会をくれてありがとう」って言ったらしい。
純さんはマウンドからベンチに戻ってくる間、そんな亮さんを威嚇していた。
でもベンチに戻ってくると、俺と丹波さんとハイタッチをしたぜ!
イエーイ♪
さぁ、7回からは俺の出番だ!
やってやるぜ!
◆
「葉輪、今日の紅白戦、チェンジアップ以外の変化球は禁止だ。」
7回のマウンドに上がる前、主審をしている片岡さんにそう指示された。
う~ん、スライダーの感覚を確かめたかったんだけどなぁ…。
「この紅白戦、葉輪の力を見るだけじゃない。お前のボールを受ける御幸のリードも見る。」
そう言いながら、片岡さんは俺と一也の顔を交互に見る。
「相手が先輩だからと遠慮をするな!1軍の座を勝ち取れ!」
「「はい!」」
片岡さんは俺達の言葉に頷くと、2軍チームのベンチへと向かった。
選手交代でもするのかな?
「パワプロ、今日は投げたいボールのサインに頷いて、他は首を横に振っていいぞ。」
マウンドで投球練習をしようと思ったら、一也がマウンドまでやって来て、そう言った。
「いいのか?片岡さんが言ってたけど、お前のリードも見られるんだぞ?」
「投手のワガママに応えるのもキャッチャーの仕事だからな。俺の事は気にせずに、
お前は気持ち良くボールを投げてくれ。」
そう言うと、一也は俺の胸をミットで軽く叩いてから、キャッチャーボックスに戻った。
『お前は気持ち良くボールを投げてくれ』か…。
俺はいつだって楽しんで投げてるぞ、一也。
でも、ああ言われると、いいボールを投げたくなるよな。
投球練習が終わり、2軍チームのバッターが打席に入る。
「行くぞ、一也!」
この日の俺の調子はバッチリだったぜ!
紅白戦は被安打0、奪三振7、失点0の結果だった。
そして、試合後に片岡さんから、俺と一也は1軍残留を言い渡されたのだった。
夏の大会前の暫定的なものだけど、俺は素直に喜んだぜ!
俺は一也とハイタッチをした。
イエーイ♪
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