夏の大会前の合宿も遂に終盤に突入して、練習試合の日がやって来た。
今年の練習試合は2日間で3試合行われるらしい。
1日目は2試合のダブルヘッダー。
2日目が1試合という形で練習試合をしていくそうだ。
さて、1日目の1試合目の先発は純さんが選ばれた。
ここまで、中々先発の機会に恵まれなかった純さんは、疲労なんて吹っ飛んだ様に
気合い十分な様子でマウンドに上がった。
そんな純さんのボールを受けるのはクリスさんだ。
ただ、身体は正直な様でボールにはいつものキレが無い。
純さんは、ツーシームを中心に打たせてとるピッチングをしていった。
時折、打球が守備の間を抜けていってしまうが、抑えをしてきた経験からなのか、
マウンドの純さんは慌てる事なく、しっかりバッターと向き合ってピッチングをしていく。
そして純さんは、6回を被安打9、奪三振1、失点3の結果でマウンドを降りた。
純さんの後は、3年生の先輩方が登板、継投していって、相手打線を抑えていった。
青道打線は疲労がある中でも、東さんを中心に打点を重ねていき、5ー4で勝利した。
ダブルヘッダーとなる2試合目は、丹波さんが先発のマウンドに上がる。
丹波さんのボールを受けるのは、3年生の捕手の人だな。
相手チームは、春季大会でも戦った東東京地区の黒士舘高校だ。
その黒士舘高校との練習試合の前、財前さんが俺とクリスさんの所にやって来たのだった。
◆
「よう!クリス、葉輪!」
呼ばれた声に振り向くと、そこには黒士舘高校の財前さんがいた。
「春季大会以来だな、財前。」
「お久し振りです、財前さん。」
「おう!今日はよろしくな!」
財前さんはニッと笑顔で手を差し出して来たので、俺とクリスさんは握手した。
「今日は試合に出るのか、財前?」
「あぁ、夏の大会には出られねぇが、2、3イニング投げる予定だ。」
おぉ!?財前さん、復活の予兆か!?
「そうか。良かったな、財前。」
「まぁ、膝の調子を見ながらだから、全力で投げられねぇけどな。」
そう言いながら、財前さんは苦笑いするけど、その様子は嬉しそうだ。
「それで、今日は葉輪が投げるのか?」
「いや、今日の先発は丹波だ。」
「そうか。まぁ、丹波のカーブはやっかいだし、うちのチームのいい経験になるか。」
財前さんは1人納得した様に何度も頷いている。
「そんじゃ、俺もアップしなきゃいけねぇから、もう行くぜ!」
「あぁ。」
クリスさんの返事に、財前さんは軽く手を上げて去っていった。
◆
青道高校と黒士舘高校の練習試合、先発の丹波さんはカーブと新変化球のフォークを使って、
黒士舘打線と勝負していった。
だけど疲労からか、丹波さんのフォーシームは甘いコースに行ってしまい、
痛打されて何度もピンチの場面を背負ってしまっていた。
それでも、丹波さんは大崩れする事なく、黒士舘高校と堂々と渡り合っていく。
丹波さんは6回を、被安打11、奪三振6、失点3の結果だった。
対する黒士舘高校は、6回の裏で逆転を狙う青道打線に財前さんをぶつけてきた。
6回裏のマウンドに上がった財前さんは、ツーシームやカットボールといった、
ムービング系のボールを使って、球数を抑えながらピッチングをしていく。
そんな財前さんのピッチングに、青道打線はゴロの打球を量産してしまい、
6、7、8回の攻撃を0点に抑えられてしまった。
財前さんが降板して迎えた9回の裏の青道高校の攻撃。
2ー6で青道は4点差を追いかける状況だ。
合宿による疲労と、ダブルヘッダーによる体力の消耗で、青道の皆の動きにはキレが無い。
それでも青道の皆は、誰1人として逆転を諦めていなかった。
その執念が実ったのか、9回の裏の攻撃で、6ー6の同点に追い付いた。
だけど、青道の追撃もここまでだった。
黒士舘高校との練習試合は6ー6の引き分けで終わった。
これで1日目の練習試合は終了!
明日は俺が先発予定で、相手は大阪桐生高校という、去年の夏に甲子園に出場した
強豪高校との事だ。
よっしゃ!やってやるぜ!
次の投稿は午後3:34の予定です